宮崎大学医学部付属病院 卒後臨床研修センター

卒後センター研修医・教員ブログ

2015年06月30日更新

Listen to the patient.

今日は外来日でした。外来が終わって何か忘れているな・・・と思ったら、今日がこのブログの締め切りでした・・・(^_^;)

先日このブログ(2015年2月10日)で書いた、かっぺいちゃんこと井上勝平先生(宮崎大学名誉教授)に教えていただき、印象に残っている言葉に “ Listen! Listen to the patient. He is telling you the diagnosis.”という言葉があります。カナダの内科医ウイリアム・オスラーのこの言葉をご存じの方も多いと思います。私の記憶が正しければ、かっぺいちゃんは次の様なご自身の経験を話されてこの言葉を教えてくださったと思います。まだ若い医師であったかっぺいちゃんは、ある中年女性の鼻部にできた潰瘍の診断がつかず、途方に暮れていたそうです。女性の夫は梅毒ではないかと妻の不貞を疑い、女性は憔悴しきっていました。暗澹たる心持ちで、何と無しに患者さんの身の上話を聞いていると、女性は幼少の頃ブラジルに住んでいたことがあり、現地で「フェリダブラバ」という病気にかかり「タルタル」という注射を打ってもらって病気が良くなった・・・と語ったそうです。調べてみると「フェリダブラバ」はリューシュマニア症の俗称で「タルタル」はアンチモン製剤のことだと判明し、病変の組織からは原虫が見出され、結局アンチモン製剤を使用し鼻部潰瘍も治癒した・・・という話でした。私ならば「タルタル」という言葉を聞いてチキン南蛮が思い浮かんでそれで終わりだったかもしれません・・・(^_^;)

ここまで劇的なことはそうそうあるものでは無いでしょうが、患者さんの一見病気とはあまり関係なさそうな話しが、診断につながったということは時々あります。患者さんの話をよく聞きなさいとは駆け出しの頃よく言われると思いますが、年数を重ねるうちに忙しさにかまけて、患者さんの話もろくすっぽ聞かなかったり、慢心して患者さんの話を真剣に聞かなくなってしまうものです(特に最近の私は!)。しかし、それにより診断の機会を失っているかもしれません。患者さんの話しをよく聞き教えを請いたいと思います。

(安倍)

センターひろば

卒後臨床研修センター通信vol.44

2023年11月発行!大学病院ならではの研修医体験記、研修医の学会受賞など、卒後臨床の今をお伝えします!

バックナンバー»