宮崎大学医学部付属病院 卒後臨床研修センター

卒後センター研修医・教員ブログ

2016年02月04日更新

新しい!?「電子カルテの使い方」を学んだ日

電車に揺られているとアナウンスが聞こえてきます。
 「携帯電話はマナーモードに設定の上、通話はお控え下さい。」
電車内では話してはならないという決まりはないのに、なぜ通話はダメなのでしょうか。

実際、電車内での通話に関しては不快だと感じている人が多いようで、その理由について真面目な論文を発見しました。Emberson LLらの研究[1]によると、不快に感じる理由として、人は聞こえてくる会話の内容が把握できないと、ストレスを感じるというのです。なるほど、趣味が悪いとお叱りを受けそうですが、確かに電車内で他人の話に聞き耳を立てるのは案外面白いものです。ただ、電話の会話では片方の声しか聞こえませんから、相手の言っていることが理解できず不快に感じるのでしょう。


さて、当院の初期臨床研修プログラムは、県内の様々な病院を選択できるため、電子カルテを導入していない病院に行くこともあります。電子カルテのない病院を経験したからこそ、電子カルテの有り難さ、素晴らしさを身をもって感じました。

その一方で、大学病院で見かける患者さんたちからの投書では「先生、パソコンの画面ばかり見ないで、私を見て・・・」といった趣旨の投稿がよく寄せられています。電子カルテは患者さんとのコミュニケーションを妨げるといって、悪役にされることが多いのもまた事実です。

そのような中、研修先でとある先生が素敵なアドバイスを下さいました。
「電子カルテも、使い方一つでコミュニケーションの道具にもなる。電子カルテの画面をあえて患者さんに見せながら、話している内容を記載すれば、患者さんの理解も深まるし、カルテ記載も進む。」
私は、はっとしました。これまで、カルテは患者さんにはあまり見せないものだという意識が強かったですが、あえて見せるのも選択肢の一つだったのです。もちろん、見せるべきかは時と場合によるでしょうが、説明は聴覚だけでなく視覚も活用したほうが理解は深まりますし、話の聞き間違いや伝え間違いといったミスも減るはずです。

そして、医師がカルテ記載や処方箋の入力などをしている間、どのようなことをしているのかを見せることが、安心と満足にもつながるのではないでしょうか。人間は、相手が何をしているか分からないと不快に感じてしまうようですからね。電車内での通話のように。

[1]Emberson LL1, Lupyan G, Goldstein MH, Spivey MJ.;Overheard cell-phone conversations: when less speech is more distracting.;Psychol Sci. 2010 Oct;21(10):1383-8;2010

(2年目研修医 高石 真那斗)

センターひろば

卒後臨床研修センター通信vol.44

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