宮崎大学医学部付属病院 卒後臨床研修センター

卒後センター研修医・教員ブログ

2021年06月09日更新

人生虹色

皆さんは『最高の人生の見つけ方(原題:The bucket list)』という映画を見たことがありますか?
バケットリストとは「死ぬまでにしたい100のこと」を書き留めるノートです。皆さんのリストにはどんな項目が並んでいますか?

私のリストの1つは「絵本をつくる」です。絵本を描きたいと思うようになったきっかけはペットのウサギです。彼女は私が大学1年生の時に我が家にやってきました。ペットショップで沢山いたウサギの中から彼女を相棒に選んだ理由は食い意地がはっていたからです。他のウサギ達に踏まれても押しやられても食べ続ける逞しさが可愛らしく彼女に決めました。飼い主と同じで食い意地がはっているのは6年経った今も変わらず、おやつ袋の音が「カシャッ♪」と聞こえると同時に私の足元に爆走してきてスタンバイOKな顔をします。そんな彼女は私の大学6年間を支えてくれた大切な友人です。勉強しているといつも足元に来てゴロンと爆睡し(癒してくれて)、私が床でうたた寝していると顔の上を猛ダッシュで通過(起こしてくれて)…ありがたい存在です。彼女と日本語でおしゃべりすることが出来たらどれほど面白いでしょう。彼女との大学生活中、特に講義中に彼女をモデルにした落書きを沢山描いていました。最近、その落書きを基にしたLINEスタンプを販売し始めました。(どなたか買ってください(笑))いつか絵本も出版できたらいいなと考えています。

ところで、最近彼女はある病気になりました。人間の年齢だともうおばあちゃんなので自然なことかもしれません。彼女との生活に終わりが来ることを考えると切ない気持ちになります。彼女を通してもですが、年齢を重ねるにつれて生命の終わりを身近に感じるようになりました。幼い頃は死というものをどこか遠い存在に感じていましたが、大人になると自分の身体の衰えを感じるようになり、両親や住み慣れた地域の人々の老化する姿を見て生命の終わりがそれほど遠いものではないと思うようになりました。

生と死について考えるといくつかの疑問が浮かびます。何のために生きるのか、どうして生きなければならないのか、そして死んだらどうなるのか。これらは人類の歴史が始まってからずっと人々が持ち続けている永遠のテーマではないでしょうか。生と死については紀元前数千年前の時代から世界各地で多種多様な解釈がなされ、その思想のもとに様々な文化、宗教が生まれてきました。その延長線上に今の私たちは生きているわけですが、時代はガラリと変わり、高度な科学技術を持った時代になりました。何でも科学技術で解明できる便利な時代ですが、この生と死のテーマについては未だに答えが見つかっていません。これから先も解明されることは不可能なテーマなのかもしれません。それ故に皆それぞれが自分なりの人生観を持って生きているのだと思います。

研修をしていると、毎日多くの患者さんとお話します。色々な話題についてお話しますが、そこから患者さんの人生哲学を学ぶことがあります。まだまだ人生経験の浅い私にとって、患者さんは先生であり、毎日の患者さんとの対話は学びの時間です。患者さんの考えをちゃんと理解でき、それに寄り添える医師になれるよう日々学んでいこうと思います。患者さんの中には病状が悪かったり、治療が辛かったり、私の力不足でなかなか会話ができない方もいらっしゃいます。

どうすれば良いか悩んでいた時に恩師にこんな言葉をもらいました。「一番辛いのは患者さんだよ。医者が下を向いていたら患者さんは不安になる。だからどんな時も医者は病院で下を向いたらいけない。顔を上げて歩きなさい。」この言葉を胸に今日も患者さんのところへ向かいます。

(1年次研修医 H.I)

センターひろば

卒後臨床研修センター通信vol.44

2023年11月発行!大学病院ならではの研修医体験記、研修医の学会受賞など、卒後臨床の今をお伝えします!

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