カテゴリー: 研究業績


Nitroglycerin use and adverse clinical outcomes in elderly patients with acute coronary syndrome


研究業績 | 2024.02.02.

ニトログリセリンは急性冠症候群(ACS)の治療薬として、長い間使用されてきたものの、ACSの転帰改善を支持する研究は限られています。また、高齢患者の増加や、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)と至適薬物療法などのACS管理の進歩により、ニトログリセリンの有効性を再評価する必要性が高まってます。今回、宮崎県立延岡病院の単施設後ろ向き研究で検討した結果、特に75歳以上の高齢患者においてPCI実施前のニトログリセリン投与が血圧低下および有害な臨床転帰と関連することが示され、Open Heart誌(2024年1月11日号掲載)に報告しました。

宮崎県立延岡病院は、急性期集中治療の中核を担う地域の基幹病院であり、延岡市で唯一PCI治療が可能な心臓カテーテル検査室を有する施設です。延岡病院から最も近いカテーテル検査室のある施設は約60km離れた他県にあります。したがって、延岡市のACS患者が他施設に救急車で搬送される可能性は低いと考えられます。この地理的な特徴により、延岡市のACS入院患者の正確な臨床転帰を研究することが出来ました。

https://openheart.bmj.com/content/11/1/e002494



Increasing baseline aortic valve peak flow velocity is associated with progression of aortic valve stenosis in osteoporosis patients—a possible link to low vitamin D status


お知らせ・活動報告 | 2023.10.25.

本論文は、ビスホスホネート製剤を服用する10名の骨粗鬆症患者の大動脈弁の形態・機能を2年間にわたり経時的に調べたものです。骨粗鬆症患者にすでに大動脈弁硬化・狭窄症が存在すると進行性で、カルシウム・リン代謝に関与する様々な分子が活性化することを見出しました。特に、ビタミンD不足・欠乏状態は大動脈弁狭窄の重症度と関連していました。少数例での検討でしたが、加齢に関連する疾患を考える上で、「骨-心血管」間のシグナル・クロストークを考える必要性があり、また、診療・研究で他科連携の重要性を学んだ研究となりました。高齢者にどれほどビタミンD不足・欠乏があるか、ビタミンD不足・欠乏が循環器疾患の発症と関連するかはこれからの課題です。

https://doi.org/10.1007/s11657-023-01339-2



バイスタンダーCPRの生命・機能予後に関する横断研究-宮崎市消防局管内で発生した心肺機能停止1,686件の解析-


研究業績 | 2023.10.13.

宮崎市郡医師会会報に掲載されました

  • 宮崎市消防局から提供された1,686件の心肺機能停止例を用いて解析しました。

本論文は、Plos One誌(2022; 17(10) :e0276574. doi: 10.1371/journal.pone.0276574)に掲載された内容を日本語で書き直したものです。一般市民が「予期しない死」に遭遇した場合、救急車が到着するまで適切な胸骨圧迫および電気的除細動器(AED)の使用が重要であることを示しました。一般市民は定期的に救命処置トレーニングを受けることが重要性です。また、消防局-医療機関-行政の課題を議論しています。



宮崎県医師会医学会誌に掲載されました


お知らせ・活動報告 | 2023.04.25.

宮崎県医師会医学会誌(第47号第1巻)に論文が掲載されました。

  • 人々を繋ぎ、宮崎県から世界へ~これからの東九州メディカルバレー構想と宮崎大学の医工連携事業~

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  • 宮崎大学学生の医療機器開発への関心についての調査

※このファイルは、宮崎県医師会の許可を得て掲載しています。著作権は宮崎県医師会に帰属します。



Relationship Between Coronary Artery Calcium Score and Bleeding Events After Percutaneous Coronary Intervention in Chronic Coronary Syndrome


研究業績 | 2023.02.14.

慢性冠症候群患者における冠動脈石灰化と経皮的冠動脈形成術(PCI)後の出血イベントの関連は十分に確立されていません。今回、県立延岡病院で術前の冠動脈CT検査とPCI加療を行った患者を対象とし、石灰化スコアと臨床転機の関連を検討しました。Kaplan-Meier生存解析では、石灰化スコア高値群で出血イベントの発生率が高く、多変量Cox回帰分析により、石灰化スコア高値は、PCI後1年間の出血イベントの独立した規定因子であることが明らかとなりました。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36847811/



Angiotensin II Induces Aortic Rupture and Dissection in Osteoprotegerin‐Deficient Mice


研究業績 | 2022.11.30.

Tsuruda T, Yamashita A, Otsu M, Koide M, Nakamichi Y, Sekita-Hatakeyama Y, Hatakeyama K, Funamoto T, Chosa E, Asada Y, Udagawa N, Kato J, Kitamura K. J Am Heart Assoc. 2022; e025336. doi: 10.1161/JAHA.122.025336.

骨代謝に重要な役割を担うRANKL (Receptor activator of nuclear factor kappaB ligand)とOPG(osteoprotegerin)が血管の構造にも影響することを示した論文です。昇圧ペプチドであるアンジオテンシンIIをOPG遺伝子欠損マウスに投与すると大動脈破裂により死亡する個体が多くみられました。OPGはデコイ受容体としてRANKLの破骨細胞の分化・成熟を抑制しますが、OPG欠損状態ではRANKLの過剰作用により血管壁の細胞外マトリックスが脆弱化して大動脈破裂に至ったと考えています。遺伝的にOPG欠損を示す若年性パジェット病患者に血管の構造異常(両側の巨大海綿静脈洞部の内頚動脈瘤)を示す例が報告されます。「骨」と「血管」を結ぶ研究です。



Aberrant expression of cardiac troponin-T in lung cancer tissues in association with pathological severity.


研究業績 | 2022.11.30.

Tsuruda T, Sato Y, Tomita M, Tanaka H, Hatakeyama K, Otsu M, Kawano A, Nagatomo K, Yoshikawa N, Ikeda R, Asada Y, Kaikita K. Aberrant expression of cardiac troponin-T in lung cancer tissues in association with pathological severity. Front. Cardiovasc. Med., 2022; doi.org/10.3389/fcvm.2022.833649.

心筋特異的トロポニンTの免疫活性が肺がん組織で検出されたとする報告です。血中トロポニンT濃度は心筋梗塞の診断に用いられますが、がん組織でもトロポニンTを産生する可能性があります。本研究では、進行した肺がん組織でのトロポニンT免疫活性の検出率が高くなりました。しかし、本研究ではトロポニンTの血中濃度を測定しておりません。がん細胞で検出されるトロポニンTの病態生理学的意義も不明です。「腫瘍循環器学」と呼ばれる新しい分野の研究のスタートです。



宮崎県、宮崎市における院外心肺停止のプレホスピタル・ケアの現状について、PLoS ONE誌に掲載されました


研究業績 | 2022.10.25.

Tsuruda T, Hamahata T, Endo GJ,Tsuruda Y, Kaikita K (2022) Bystander-witnessed cardiopulmonary resuscitation by nonfamily is associated with neurologically favorable survival after out-of-hospital cardiac arrest in Miyazaki City District. PLoS ONE 17(10): e0276574. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0276574

私は、日本内科学会が主催するJapanese Medical Emergency Care Course (JMECC)【内科救急・Immediate Cardiac Life Support (ICLS)講習会】のインストラクターです。内科病棟で起こり得る急変時の対応や心肺停止時の蘇生法等、後進の指導を行っています。

本研究は、Basic Life Support (BLS)/ICLS講習会の場で知り合った救急救命士の濱畑貴晃氏、救急医の遠藤穣治氏と共に、2015年~2019年の宮崎市およびその近郊における院外心停止例1,686例の解析を行ったものです。救急車が現場へ到着するまでの一般市民の対応(プレホスピタル・ケア)が生命予後に大きく影響することが明らかとなりました。プレホスピタル・ケアを一層推進するためには、1)一般市民へ定期的な蘇生法訓練(BLS)の機会の企画、特に無関心層への教育の機会の作出、2)屋外へAED設置の普及が必要と考えます。また、本研究では九州8県間の院外心肺停止例の救命蘇生率や生存率を比較しています。宮崎県や宮崎市の今後の課題が浮かび上がります。