本講座の中村恵理子助教らが、大動脈の粥状動脈硬化に関する原著論文を発表しました。
動脈硬化は、血管の壁に脂質や炎症細胞が蓄積することで進行し、血管の狭窄や血栓症、動脈瘤形成の原因となることが知られています。一方、動脈硬化病変を構成する細胞の代謝が、病変の進行にどのように関与しているかについては、十分に明らかにされていません。
本研究では、糖やアミノ酸の代謝を介してピルビン酸の産生に関わる酵素であるpyruvate kinase M2(PKM2)とserine dehydratase(SDS)に着目しました。血管手術で採取されたヒト大動脈の血管壁検体を用いて、これらの酵素の発現の有無、程度および局在を病理組織学的に検討しました。
その結果、進行した大動脈粥状動脈硬化病変および大動脈瘤病変では、初期病変と比較してPKM2とSDSの発現が増加しており、その多くが病変内のマクロファージに認められることが明らかとなりました。
さらに、ヒト単球由来マクロファージを用いた培養細胞実験では、炎症性サイトカインであるtumor necrosis factor-α(TNF-α)およびinterferon-γ(IFN-γ)の刺激によって、PKM2とSDSの発現が増加しました。PKM2の発現を抑制すると、炎症を促進するmonocyte chemoattractant protein-1(MCP-1)やinterleukin-6(IL-6)の発現が増加し、抗炎症作用を有するtransforming growth factor-β(TGF-β)の発現が低下しました。一方、SDSの発現を抑制すると、細胞内の活性酸素種が減少しました。
これらの結果から、動脈硬化病変の炎症環境によってマクロファージのPKM2およびSDSの発現が誘導されることが示されました。また、PKM2は血管壁の炎症を抑制する方向に働き、SDSは酸化ストレスの調節に関与する可能性が示唆されました。
本研究の成果は、人体病理を基盤として、動脈硬化における炎症と細胞代謝の関係を理解するうえで新たな知見を明らかとしたものです。将来的には動脈硬化や大動脈瘤の病態解明、新たな治療標的の探索につながることが期待されます。
本研究成果は、日本動脈硬化学会の公式誌である Journal of Atherosclerosis and Thrombosis 誌に公開されました。
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Nakamura E, Nishimura M, Maekawa K, Gi T, Oguri N, Aman M, Moriguchi-Goto S, Nakai M, Furukawa K, Yamashita A. Pyruvate kinase M2 and Serine Dehydratase are Upregulated in the Macrophages of Human Aortic Atherosclerotic Lesions via Inflammatory Stimuli. J Atheroscler Thromb. 2026 (Epub ahead of print).
doi: 10.5551/jat.66119.

本研究成果の要約図. Ref) https://doi.org/10.5551/jat.66119