ATTR型心アミロイドーシスと微小循環障害に関する原著論文が掲載されました

当講座の魏助教らが共同研究者として参画した、ATTR型心アミロイドーシスと冠微小循環障害について臨床病理学的に検討した研究論文が公開されました。
本研究は、当医学部内科学講座循環器・腎臓内科学分野の水光洋輔先生を筆頭として研究がなされたもので、当講座では主に心筋生検の病理組織学的検討について担当しました。

<研究内容>
トランスサイレチン型心アミロイドーシス(ATTR-CM)では、高感度心筋トロポニンT(hs-cTnT)の持続的上昇や冠微小循環障害がしばしば認められますが、その病態学的関連は十分に明らかではありません。本研究では、左室肥大を有し、冠動脈生理学的評価、右心カテーテル検査、心筋生検を施行した71例を後方視的に解析しました。このうち51例でATTR-CMが組織学的に確認されました。
ATTR-CM症例では、hs-cTnT高値は、肺動脈楔入圧の上昇、冠血流予備能(CFR)の低下、および心筋毛細血管密度の低下と、それぞれ独立して関連していました。一方、微小循環抵抗指数(IMR)や生検組織におけるトランスサイレチン沈着量との明確な関連は認められませんでした。
以上から、ATTR-CMにおける持続的な心筋傷害には、心筋毛細血管の減少と灌流予備能低下からなる微小循環障害に加え、心内圧上昇を伴う血行動態異常が複合的に関与している可能性が示唆されました。

本研究の成果は、人体病理と冠循環生理学的評価を組み合わせることで、ATTR-CMにおける持続的な心筋傷害と冠微小循環障害との関係について、新たな知見を明らかにしたものです。将来的にはATTR-CMにおける心筋傷害の病態解明や、病態評価・治療標的の探索につながることが期待されます。

本研究成果は、欧州心臓病学会の公式open access 誌である ESC Heart Failure に公開されました。

リンクは以下からです。open access であり、どなたでもご覧いただけます。
(太字が当講座所属)
Suiko Y, Matsuura Y, Gi T, Ogata M, Tanaka H, Komaki S, Moribayashi K, Ideguchi T, Yamashita A, Tsuruda T, Kaikita K. Linking Coronary Microvascular Dysfunction to Cardiac Troponin Elevation in Transthyretin Amyloid Cardiomyopathy. ESC Heart Failure. 2026; xvag238, https://doi.org/10.1093/eschf/xvag238

大栗研究員の総説が日本血栓学会に掲載されました

2026年度日本血栓止血学会 学術奨励賞を当講座大栗研究員が受賞し、その受賞研究内容をまとめた総説が、日本血栓止血学会誌に掲載されました。

大栗伸行. 凝固第XI因子のヒト深部静脈血栓における局在と静脈血栓形成および止血における作用. 日本血栓止血学会誌. 2026;37:439-448.
https://doi.org/10.2491/jjsth.37.439

(J-STAGE によるopen access 誌であり、どなたでも閲覧可能です)

Case report: Sepsis-Related Coronary Endarteritis With Multiple Coronary Artery Thrombi and Acute Myocardial Infarction

当講座の魏助教らが、敗血症によって冠動脈びまん性に内膜炎・血栓形成が惹起され、ステント内の閉塞性血栓によって急性心筋梗塞を発症した剖検例を報告しました。これまでに、敗血症に伴う高炎症反応状態が直接的に冠動脈内皮・血栓形成に寄与したとする報告は無く、病態示唆に富む貴重な報告と考えられます。
本報告は、Pathology International に掲載されました。Pathology internationalは、日本病理学会発刊の国際英文誌です。

Gi T, Tanaka H, Moriguchi-Goto S, Nishihira K, Asada Y, Kaikita K, Yamashita A. Sepsis-related coronary endarteritis with multiple coronary artery thrombi and acute myocardial infarction. Pathol Int. 2026;76:e70159. doi:10.1111/pin.70159.

https://doi.org/10.1111/pin.70159




大動脈粥状動脈硬化に関する原著論文が公開されました

本講座の中村恵理子助教らが、大動脈の粥状動脈硬化に関する原著論文を発表しました。

動脈硬化は、血管の壁に脂質や炎症細胞が蓄積することで進行し、血管の狭窄や血栓症、動脈瘤形成の原因となることが知られています。一方、動脈硬化病変を構成する細胞の代謝が、病変の進行にどのように関与しているかについては、十分に明らかにされていません。

本研究では、糖やアミノ酸の代謝を介してピルビン酸の産生に関わる酵素であるpyruvate kinase M2(PKM2)とserine dehydratase(SDS)に着目しました。血管手術で採取されたヒト大動脈の血管壁検体を用いて、これらの酵素の発現の有無、程度および局在を病理組織学的に検討しました。

その結果、進行した大動脈粥状動脈硬化病変および大動脈瘤病変では、初期病変と比較してPKM2とSDSの発現が増加しており、その多くが病変内のマクロファージに認められることが明らかとなりました。

さらに、ヒト単球由来マクロファージを用いた培養細胞実験では、炎症性サイトカインであるtumor necrosis factor-α(TNF-α)およびinterferon-γ(IFN-γ)の刺激によって、PKM2とSDSの発現が増加しました。PKM2の発現を抑制すると、炎症を促進するmonocyte chemoattractant protein-1(MCP-1)やinterleukin-6(IL-6)の発現が増加し、抗炎症作用を有するtransforming growth factor-β(TGF-β)の発現が低下しました。一方、SDSの発現を抑制すると、細胞内の活性酸素種が減少しました。

これらの結果から、動脈硬化病変の炎症環境によってマクロファージのPKM2およびSDSの発現が誘導されることが示されました。また、PKM2は血管壁の炎症を抑制する方向に働き、SDSは酸化ストレスの調節に関与する可能性が示唆されました。

本研究の成果は、人体病理を基盤として、動脈硬化における炎症と細胞代謝の関係を理解するうえで新たな知見を明らかとしたものです。将来的には動脈硬化や大動脈瘤の病態解明、新たな治療標的の探索につながることが期待されます。

本研究成果は、日本動脈硬化学会の公式誌である Journal of Atherosclerosis and Thrombosis 誌に公開されました。

リンクは以下からです。open access であり、どなたでもご覧いただけます。
Nakamura E, Nishimura M, Maekawa K, Gi T, Oguri N, Aman M, Moriguchi-Goto S, Nakai M, Furukawa K, Yamashita A. Pyruvate kinase M2 and Serine Dehydratase are Upregulated in the Macrophages of Human Aortic Atherosclerotic Lesions via Inflammatory Stimuli. J Atheroscler Thromb. 2026 (Epub ahead of print).
doi: 10.5551/jat.66119

本研究成果の要約図. Ref) https://doi.org/10.5551/jat.66119




 

白血病に合併する脳出血に関する原著論文が掲載されました

本講座の魏助教らが、白血病に合併する脳出血に関する原著論文を発表しました。

本研究では、白血病患者における重篤な合併症である脳内出血の発症機序を明らかにすることを目的として、剖検例を用いた病理学的解析が行われました。白血病症例37例と対照20例を対象に、中枢神経系の血管病変の特徴および止血関連因子の発現について詳細に検討しています。

その結果、多くの白血病症例では、白血球細胞そのものが脳血管に浸潤することで、内皮障害や血管壁の変性等の血管傷害を引き起こすことを明らかとし、これらが出血の背景となる可能性が示されました。さらに、好中球由来プロテアーゼであるカテプシンGの発現が血管障害と関連し、VEGF発現が白血病細胞の髄膜進展に関連していることが明らかとなり、白血病細胞が血管傷害に関与する分子機序の一端が示唆されました。

Ref) https://doi.org/10.1016/j.rpth.2026.103433

これらの知見は、白血病における脳出血の病態理解を深めるとともに、出血リスクの評価や新たな治療標的の探索につながる可能性があり、臨床的にも重要な意義を有する研究と考えられます。

なお、本研究は、宮崎大学医学研究者育成コースに所属している医学科生の解凱堯さんも参画しました。本研究内容で、解さんは宮崎大学医学研究者育成コース (2025年度) 医学部長賞を受賞しています。

本研究成果は、国際血栓止血学会の公式誌である Research and Practice in Thrombosis and Haemostasis 誌 に掲載されました。

リンクは以下からです。open access であり、どなたでもご覧いただけます。
Gi T, Kai K, Shide K, Nakamura E, Oguri N, Aman M, Maekawa K, Moriguchi-Goto S, Nakai M, Shimoda K, Hisada Y, Yamashita A. Cathepsin G is associated with cerebral vascular injury in myeloid leukemia: A pathological insight into intracranial hemorrhage. Res Pract Thromb Haemost. 2026;10:103433. doi:10.1016/j.rpth.2026.103433.

Case report: CD20-Positive Adult T-cell Leukemia/Lymphoma

当大学医学部附属病院 皮膚科学分野の持田講師らが、まれなCD20陽性ATL(成人T細胞白血病/リンパ腫)を、皮膚病変の生検を契機に診断した症例を報告しました。あわせて既報例を検討し、早期の皮膚所見の把握と迅速な診断・治療が予後改善につながる可能性を示しました。
当講座 魏助教が病理診断について共著者となっています。
Open accessであり、以下のリンクからどなたでもご覧いただけます。

Mochida K, Narita Y, Nogami K, Gi T, Sekine M, Amano M. A case of CD20-positive adult T-cell leukaemia/lymphoma: Skin biopsy and analysis contributed to early diagnosis and improved survival.
Indian J Dermatol. 2026. doi:10.4103/ijd.ijd_1001_24 (online published ahead of print)

 

Case report: Helicobacter felis-associated acute gastric mucosal lesion

当講座の阿萬助教らの症例報告が、Pathology international (日本病理学会発行の国際英文誌)に掲載されました。
猫や犬にみられる Helicobacter felis が、人の胃に急性胃粘膜病変を引き起こした稀な症例を報告したものです。詳細な光学顕微鏡・低真空走査電子顕微鏡による形態観察、ならびにRT-PCRにより菌種を確認し、H. felis がヒト胃疾患の原因となり得ること、また病理診断における詳細観察の重要性を示しました。
低真空走査電子顕微鏡は、共同著者である当医学部解剖学講座 超微形態科学分野の澤口朗先生が独自に開発された手法であり、病態解析への応用が進んでいます。

Aman M, Gi T, Maekawa K, Kimura T, Sawaguchi A, Yamashita A. Helicobacter felis-associated acute gastric mucosal lesion: Ultrastructure by low-vacuum scanning electron microscopy.
Pathol Int. 2026;76:e70109. https://doi.org/10.1111/pin.70109 (online ahead of print)

低真空走査電子顕微鏡についてはこちら
Sawaguchi A, Kamimura T, Yamashita A, Takahashi N, Ichikawa K, Aoyama F, Asada Y. Informative three-dimensional survey of cell/tissue architectures in thick paraffin sections by simple low-vacuum scanning electron microscopy.
Sci Rep. 2018;8:7479. https://doi.org/10.1038/s41598-018-25840-8.

Case report: KIC3 variants in tricho-hepato-enteric syndrome with hemochromatosis

当講座の阿萬助教らが共著となり、SKIC3遺伝子の新規変異によるTricho-hepato-enteric syndrome(THES)に新生児へモクロマトーシスを合併した症例を報告しました。
本疾患は、難治性下痢や毛髪異常、肝障害などを特徴とする極めて稀な常染色体劣性疾患です。今回、母由来のフレームシフト変異(c.815_816del)と父由来のミスセンス変異(c.2284G>A)というSKIC3の複合ヘテロ接合性変異を同定しました。
本講座では、剖検での肝ヘモクロマトーシスの詳細な評価を行っています。
本症例は、THESと新生児へモクロマトーシスの関連を分子レベルで示した初の報告であり、SKIC3機能異常と鉄代謝異常の関係を明らかにする上で重要な知見と考えられます。

Ochiai K, Aoki Y, Yamada N, Aman M, Yamashita A, Yamaguchi M, Nakato D, Takenouchi T, Kosaki K, Kodama Y, Moritake H. Novel SKIC3 variants in tricho-hepato-enteric syndrome with hemochromatosis. Hum Genome Var. 2025;12:14.
doi: 10.1038/s41439-025-00318-y. 

凝固XI因子の局在と作用に関する原著論文が掲載されました

血液凝固因子XI(FXI)は、凝固作用を有しながらも、止血には大きく関与しないと考えられています。従来、抗凝固薬は副作用として出血リスクが問題となりますが、FXIは、副作用の少ない新規抗凝固薬の標的として期待されています。
当講座の大栗大学院生らは、FXIの深部静脈血栓症(DVT)の病態形成に果たす役割を明らかにするため、剖検例のヒトDVT検体の組織学的解析を行い、さらに活性化FXI(FXIa)阻害薬および活性化血液凝固X因子(FXa)阻害薬の血栓形成と止血における機能を明らかにするため、家兎の血栓・出血モデルおよびヒトおよび家兎の全血を用いたin vitro(フローチャンバー)システムで評価しました。

●ヒトDVTにおけるFXIの局在
 深部静脈血栓は新鮮部、細胞溶解部、器質化部の異なる時相の血栓成分が種々の割合で混在していました。FXIはすべての血栓に存在しており、主としてフィブリンに一致して局在し、特に非器質化領域に多く分布していました。電子顕微鏡解析では、FXIがフィブリン様メッシュ構造に集積している様子も確認されました。

●動物モデルにおける低分子化合物のFXIa阻害薬(ONO-1600586)の効果およびFXa阻害薬との比較
 FXIa阻害薬は、家兎の頸部静脈血栓モデルにおいて血栓形成を抑制させ、大腿動脈出血モデルにおいて出血時間および出血量には影響を与えないという特異なプロファイルを示しました。一方で、従来のFXa阻害薬(リバーロキサバン)は血栓形成を抑制しつつも、出血傾向を有意に増加させました。

●フローチャンバーによるフィブリン形成の違い
 低ずり速度下におけるフローチャンバーシステムでは家兎およびヒトの全血でフィブリン形成の減少や還流後のプロトロンビンフラグメントf1+2の減少がみられましたが、FXa阻害薬の効果がより強く、低ずり速度下におけるトロンビン産生やフィブリン形成への関与の違いが影響している可能性があります。

本研究により、ヒトDVTにおけるFXIの存在と病態生理学的意義が示唆されました。加えて、FXIa阻害薬は血栓形成抑制と出血リスク低減を両立し得る新規抗凝固療法として、臨床応用への大きな可能性を有することが示されました。

掲載論文・リンクは以下の通りです。(Open accessであり、どなたでも閲覧・ダウンロードできます)

Oguri N, Gi T, Nakamura E, Maekawa K, Furukoji E, Okawa H, Kouyama S, Horiuchi S, Sawaguchi A, Sakae T, Azuma M, Asada Y, Yamashita A. Factor XI localization in human deep venous thrombus and function of activated factor XI on venous thrombus formation and hemostasis. Res Pract Thromb Haemost. 2025;9:102720. https://doi.org/10.1016/j.rpth.2025.102720

母体安全への提言(2023年版)の英訳版が掲載されました

阿萬助教が委員会のメンバーを務める妊産婦死亡症例検討評価委員会が執筆した、母体安全への提言(2023年版)の英訳版が、Journal of Obstetrics and Gynecology Reserchに掲載されました。
母体安全への提言は、日本国内の妊産婦死亡の動向や母体安全のための方向性を示すための提言をまとめたものであり、妊産婦死亡症例検討評価委員会、日本産婦人科医会が毎年発行しているものです。妊産婦死亡症例に対する、病理解剖の重要性についても記載されています。

(Open accessであり、どなたでも下記リンクよりご覧いただけます)

Japan Maternal Death Exploratory Committee. Proposals for improving maternal safety (2023 edition): Insights from the analysis of maternal deaths in Japan. J Obstet Gynaecol Res. 2025;51:e16244.
doi: 10.1111/jog.16244.