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桂木教授の部屋

産婦人科研究室配属を終えて・医学科3年山本菜々美さん

2025年度の宮崎大学医学部医学科3年生の研究室配属が終わりました。私も11月7日に4E09号室で6名の発表を聞かせて頂きました。みなさん1か月という期間でそれぞれの研究室で研究した事を10分という時間に込めて大変上手に発表して頂きました。私の発表のグループには宮崎大学工学部の田村教授の元で学んだ学生さんもいました。工学部からは2名の4年生が駆けつけてくれて学生における医工連携がスタートした感じで発表の合間にも大変良い交流ができました。海外で勉強した医学部3年生の活躍も気になるところです。

産婦人科で今回研究室配属で研究した内容は『新生仔ラットの新生児虚血性脳症に対するローヤルゼリーの効果』です。医学部医学科山本菜々美さんに産婦人科研究室配属を終えた時点で、1)研究室配属、発表を終えての感想 2)どんなことを臨床実習に期待するか 3)どんな医師になりたいか についてお話を伺いました。

その前に桂木より補足を・・・ 『新生児低酸素虚血性脳症』は主に分娩時、出生後の胎児・新生児におこる主に大脳皮質、海馬、基底核を中心とする神経障害です。一旦発症すると下記の1)写真のように脳の神経細胞の多くが損傷します。写真2)ではグリア細胞由来神経栄養因子を頭蓋内に注入し軽度の回復が認められています。

Ikeda T, Ikenoue T, et al.  Acta Neuropath, 2000:100;161-167.

宮崎県の疫学データ(Kodama et al.  Early human develop 2009)によりますと、新生児脳障害における約20%が『低酸素性虚血性脳症』でこれは大変大きな産婦人科ー新生児領域での永遠のテーマです。

宮崎大学産婦人科ではこの研究に約30年前から継続して取り組み、今回山本菜々美さん・井形唯音さんには治療侵襲の少ない治療法としてのローヤルゼリーが脳梗塞を着目する事を応用し、『ローヤルゼリーを用いた低酸素虚血性脳症の改善効果』に関する研究に取り組んで頂きました。

1)研究室配属、発表を終えての感想はどうですか? 今回初めて研究室というものに入って1ヶ月間しっかり研究を行ったのですが、まず思ったのは研究者は本当にすごいということです。研究はまず計画を通すところから始まり、いざ始まったとしてもうまく行くとは限りません。数ある工程のうち一つでも間違ってしまうことは許されないし、間違いなく行ったとしても結果が思わしくなかったりするためまた次の方法を考えて同じように行う。これの繰り返しを日々されているということを知って、本当に尊敬の気持ちでいっぱいになりました。
しかも、今回私たちは初めて行う作業がたくさんあったのですが、指導してくださった楊先生は1から本当に丁寧に教えてくださいました。また、今回実験の検体の数が少なかったにも関わらず私たちに作業させてくださって、とても貴重な経験になり、本当に感謝しています。

また、研究結果を発表するためのスライド作成の際は桂木先生にもとても気にかけていただきました。今までいくつかスライドを作ってきたことはありましたが、実際のお医者さんと研究者の方のアドバイスを直々に受けて作成したことはなかったので、意外なところでご指摘があったりなどとても勉強になりました。
また実際の発表会も自分たちで司会進行、質問などを行い、同期が別々のところで1ヶ月間学んだこと、頑張ったことを知ることができるとても刺激的な時間になりました。
産婦人化学分野は雰囲気が温かいだけでなく、初めてで新鮮な経験がたくさんできる研究室でした。後輩にもぜひ勧めたいです!!

2)どんな事を臨床実習に期待しますか? 今回、初めてオペを見学させて頂いたり病棟にお邪魔したりして臨床実習の雰囲気を少し感じさせていただきましたが、実際の医療現場は勉強しているだけじゃわからないことがたくさんあると感じました。来年からは勉強をしっかりした上でその他の手技や医師の考え方などを吸収し、自分が実際に働き出したときのことを想像しながら実習に臨みたいと思っています。

3)どんな医師になりたいですか? 私は幼い頃よく病院に通っていて、たくさんの小児科医の方に会ってきました。また、私は幼い頃の記憶が割としっかりある方で、その頃に感じていたこと、子どもなりに考えていたこと、お医者さんに対して思っていたこともよく覚えています。あくまで理想にすぎないと思われるかもしれませんが、これらの経験と特性を活かして私は、自分が不満に思っていた点は絶対子どもたちにも思わせないように、病気の子どもたちの気持ちを理解する努力のできる小児科医になりたいと考えています。

桂木の感想 

山本菜々美さんは1か月間毎日熱心に取り組んでいました。小児科医希望の山本さんにとっても脳障害を少しでもなくす! は取り組みやすいテーマであったと思います。本当に、この20年、どんなに世界中の医師・研究者が取り組んでも『新生児低酸素性虚血性脳症』で苦しむ子供たちは減っていっているわけではないので、この分野の新しい知見が益々重要です。

産婦人科の研究室配属での指導者は主に楊先生・桂木ですが、楊先生も山本さんは良く頑張っていると言ってました。この実験系の意義も良く理解し、動脈を結紮したり、低酸素負荷の現場でもシャキシャキと動けており、将来有望な医師になる印象を受けました。言われた事を即実行できるのは臨床医を目指す者にとってとても重宝される利点です。その素質を随所に感じました。

子供のころからの小児科医師になる夢を今後3年間の臨床実習、その後2年間の研修医生活でもいかし夢を実現させて欲しいですね。研究室配属では大変良く頑張りました。実際立派な小児科医師になるためには何が必要なのでしょうか。私はこの研究室配属で山本さんが日々みせていた、『裏表のない日々の積み上げ』が一つの答えだと思っています。

突然成績があがったり、突然スポーツがうまくなったりはしませんが、今回の研究室配属で、山本さんが、『私や楊先生から熱心な指導を受けた。研究者ってほんとすごいと思いました』の感想からも分かるように、山本さんには、教えられる内容を把握したいという学問に対する意欲がとても感じられました。私も、楊先生、また、秘書の方々が口をそろえて言っていた事は山本さんは素直な医学生である印象です。医学教育における必要な3要素は知識・技術・態度の育成と言われています。知識・技術は積み上げていく事ができますが、態度は教えるのがなかなか難しいと感じています。山本さんはその3要素がバランス良くとれており、感じが良い印象を常に持っておりました。今後は知識・技術を益々高め、4年生からの臨床実習に向けて後1年頑張っていって下さいね!

今日からスタート ヨーイ ドン! です!!