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周術期口腔ケアとは

クリーンルームで行う骨髄移植患者への指導や口腔ケア

全身麻酔による手術では、口から気管チューブを挿入します。口腔内には1gの歯垢に1億という非常に多くの細菌がおり、気管チューブを挿入することで口腔内の細菌を肺に押し込めてしまうことで肺炎や気管支炎といったリスクが生じます。また、動揺している歯がチューブなどに当たり、飲み込んでしまったり気管内に入ってしまう可能性があります。

当院では、手術を受ける患者様が安心して手術に臨んでもらえるよう手術前後に口腔ケアを実施しています。ブラッシング指導だけでなく、歯石除去や動揺歯の治療も積極的に行い、口腔内を清潔に保つよう心がけています。

また、がんによる化学療法や放射線療法、骨髄移植では口内炎が副作用として出現します。そこで、これらの治療前にも口腔ケアを行うことで口内炎の発生頻度をおさえることができます。さらに、口内炎ができてしまったとき、食事が満足に取れないときなど患者様の現在の口腔内の状況に応じて様々な含嗽剤のレシピを組み合わせ、不快症状を除去することで治療に集中できるよう取り組んでいます。

周術期口腔ケアの流れは以下のようになっています。

  • 周術期口腔ケアの流れ1
    全身麻酔下での手術、化学療法、放射線療法による加療日が決定すると、主治医より口腔ケアの依頼があります。
  • 周術期口腔ケアの流れ2
    現在の口腔内を精査し、ブラッシング指導や歯石の除去を行います。加療開始までの間に何度か受診していただき、口腔内の清潔を目指します。(ケアに関しまして、遠方より通院の患者様はかかりつけ歯科医院に依頼することがあります)
  • 周術期口腔ケアの流れ3
    手術・化学療法・放射線療法開始
  • 周術期口腔ケアの流れ4
    術後や化学療法・放射線療法が開始された後も定期的に口腔ケアを行い、口腔内の症状の除去に努めます。
  • 周術期口腔ケアの流れ5
    退院

詳細は各科主治医に相談してください。

そのほか、当科では救急部と綿密な連携をとり、救急部で入院となった症例に対し口腔内の観察を行っております。救急部では緊急で気管挿管を行う事が多く、気管挿管をすると常に口が開いている状態となります。この状態では口腔内が乾燥し細菌が繁殖しやすい環境となります。
口腔内を観察し、必要に応じて当科衛生士による口腔ケアや保湿を実施することで誤嚥性肺炎のリスク軽減をはかっています。
また、その他にも重度熱傷患者に対する気管チューブの固定や、動揺歯の固定および抜歯など、患者様の口腔内を清潔に保つよう努めています。

救急部への往診を毎日行い、必要に応じて処置を施行します。

周術期口腔機能管理

周術期口腔機能管理は、術後の誤嚥性肺炎等の外科的手術後の合併症等の軽減を目的に2012年4月の診療報酬改定で新設されたもので、がん治療などを実施する医師との連携の下、患者の入院前から退院後を含めて歯科が一連の包括的な口腔機能管理を行っています。現在様々な医療施設において口腔ケアの重要性が見直されており、がん治療の周術期口腔ケアを積極的におこなうようになってきています。

具体的には周術期における一連の口腔機能の管理計画の策定を評価する「周術期口腔機能管理計画策定料」(300点)、主に入院前後の口腔機能の管理を評価する「周術期口腔機能管理料(I)」(190点)、入院中の口腔機能の管理を評価する「周術期口腔機能管理料(II)」(300点)、放射線治療や化学療法を実施する患者の口腔機能の管理を評価する「周術期口腔機能管理料(III)」(190点)、また周術期における入院中の患者の歯科衛生士の専門的口腔衛生処置を評価する「周術期専門的口腔衛生処置」(80点)です。医科での術後感染症の予防を歯科が受け持つ「医科歯科連携」が評価されたもので、病院歯科だけではなく地域の一般歯科医院でも算定可能であることから、今後は周術期の患者が歯科を受診する機会がいっそう増えるようになるでしょう。

対象者

  1. 全身麻酔下で頭頸部領域、呼吸器領域、消化器領域などの悪性腫瘍の手術を行う患者
  2. 放射線治療や化学療法を行う患者 など

当院では、がんに限らず全身麻酔下での手術を行う際、主治医より依頼があった場合に術前から口腔ケアを実施しています。また、術後においても口腔ケアを定期的に行い退院までの口腔内の清掃状態を維持するよう努めています。

初診時口腔内写真
口腔ケア後

当科における実績

宮崎大学医学部附属病院は18の診療科、総病床数632を有する宮崎県における中核的医療機関であり、宮崎県内外より多数の患者が受診しています。そんな中、当大学病院歯科口腔外科・矯正歯科はそれらの診療科からの依頼により全身疾患を有する患者における口腔領域の疾患に対して治療を施行する機会が多いのが特徴です。
当科では2012年より周術期口腔機能ケアを行っており、悪性腫瘍に対する術前あるいは化学療法、放射線療法前に口腔ケアを施行しています。また、悪性腫瘍以外の疾患にも、院内他科からの口腔内の精査依頼は非常に多く、各科からの依頼により口腔ケアを実施しています。

当科における2012年より2014年までの院内他科からの依頼数は2958例でした。
患者の年齢分布と紹介元の診療科別患者分布を以下に示します。

患者の年齢別分布

紹介元の診療科別患者数分布

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