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顎顔面外傷について

顔面は人間の外観や機能に重要な役目を持っており、その顔面を損傷することは、食事や会話、その他さまざまな能力を損なうことになります。

一般に顔面外傷は若年者の割合が高く、サッカー、野球などのようなスポーツ外傷あるいは自動車やバイクの衝突といった交通外傷、そのほかに喧嘩や転落などが挙げられます。特に宮崎では、野球やゴルフといったスポーツが盛んな事、また海や山が多く景観がいいことからバイクによるツーリングが人気であり、顎骨骨折の割合は多いと考えられます。
顎顔面骨骨折は、頭蓋や頸椎など口腔領域以外の損傷を伴うことが多いものの、他部位の骨折に対する処置を優先してしまった結果、咬合不正や開口障害、顔面非対称など後遺症に悩まされた報告も数多く存在するため、迅速な対応が要求されます。
顔面は中枢神経系に近接して位置した非常に重要な神経および重要な血管が走行しており、それを保護するように骨が顔面を構成しています。前方顔面骨格は前頭骨、鼻の骨、頬骨、上顎骨、下顎で構成され、蝶形骨、篩骨、涙腺、鋤骨、および側頭骨は、咀嚼や嚥下のための筋肉が付着しています。神経は、上顎では眼窩下神経を含んだ中顔面の神経支配を、下顎では顔面の下3分の1の感覚に影響しており、また顔面は非常に血管が豊富であり血管を伴う軟部組織損傷や骨折は大きな血腫や多量の出血、または重篤な場合であっても瀉血を引き起こす可能性があります。以上のように、神経・血管の走行は複雑かつ網羅的であり、顔面外傷により損傷が起きた際、時に致命的となったり、重大な障害が残存してしまう場合があります。
当科では、毎日救急部へのラウンドを行っており救急部へ緊急搬送された患者の口腔内精査(残存歯牙の確認や動揺歯の検査、口腔清掃状態の悪い患者への細菌検査を施行し、誤嚥性肺炎のリスクが高い患者への気管切開の提案)を行っています。また、口腔顔面外傷患者が搬送された際は速やかに縫合処置や必要時気管切開、骨折の整復などを行っています。そのため、当科は他院からの紹介による顎骨骨折だけでなく、救急部からの依頼により全身多発骨折を起こした患者に対する顎骨骨折の加療を担うことも多いのが特徴です。

顎骨骨折の治療の流れ

  • 近医歯科をはじめとした他施設より骨折に対する整復の依頼
  • 救急部より全身多発骨折に対する顎骨整復の依頼

骨折は、基本的に整復までの期間が短い方がよいため、可能な限り同日の整復を行います。また、交通外傷などにより軟組織に欠損や裂創を生じてしまった場合には裂創の縫合だけでなく、背中の筋肉などを用いて他組織からの軟組織移植をすることで限りなく外傷前の顔面に戻すことを心がけています。

CTにて骨折線を精査
全身麻酔下にてチタンプレートによる骨折の整復

下顎骨骨折の場合、1-2週間の顎間固定を行います。

正中および左側顎関節に骨折線を認めます
固定中のパノラマレントゲン写真

固定解除後は開口訓練を行い、退院します。
退院後も外来でのフォローを行い、骨折線の治癒や創部治癒の経過観察を行うだけでなく、わずかな咬合状態のずれなどが原因で顎関節症を生じる可能性があるため、顎関節CTや問診票に基づき顎関節症に対する精査も行います。

およそ整復から半年後にプレートを除去します。

顎関節のみの骨折の場合、顎間固定のみとする場合もあります。

当科における業績

当院歯科口腔外科が過去10年間で加療を行った顎顔面骨骨折症例は329例であり、他科との連携診療を有したのは80例あった(整形外科55例、耳鼻科23例、脳神経外科6例、眼科18例、1外科1例、2外科3例、小児科1例、延べ数で表す)。
また当院では過去10年間における救急搬送による骨折症例1494例のうち約4.2%である63例が救急科からの要請により口腔外科領域の骨折整復を行った。その特徴として重症例が多く、中には判断に苦慮する症例も認められた。

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