顎変形症の外科的矯正治療
顎変形症とは
顎の骨の大きさ、形が著しく異常な状態を顎変形症といい、咀嚼障害、構音障害、審美障害などを伴います。顎変形症の場合、矯正治療単独で咬み合わせや顔貌の改善をおこなうことは困難であるため、顎矯正手術を併用した矯正治療、すなわち外科的矯正治療が適用となります。外科的矯正治療は矯正歯科と口腔外科との協同治療となり、当科は歯科口腔外科・矯正歯科を併設しているため包括的に治療を行うことができます。また、他院の矯正歯科から依頼があった場合の手術も行っています。顎変形症と診断された場合、矯正治療および顎矯正手術に保険を適用できます。
顎変形症の種類
顎変形症の種類には、下顎前突症、上顎前突症、下顎後退症(小下顎症)、開咬症、顔面非対称症などがあります。

外科的矯正治療の手順
-
- 診察・検査
- 口腔内および顔面写真、歯の型、エックス線写真、顎関節の診察、顎運動および筋電図測定、顎関節MRI、顔面CTなど
-
- 治療説明
-
- 術前矯正
- 1~2年
手術後に安定した咬み合わせになるように歯を並べます。
-
- 顎矯正手術
- 入院期間:10日~3週間
手術前には全身麻酔のための術前検査(血液検査、胸部エックス線写真、心電図、肺機能、顎顔面CTなど)および自己血貯血を行います。
-
- 術後矯正
- 1~1年半
咬み合わせが緊密になるように、仕上げの矯正を行います。
-
- 保定・経過観察
- 3年
矯正装置除去後は、咬み合わせが元に戻らないための装置を使用します。
また定期的に手術後の顎の状態を診察します。
手術方法
手術は全身麻酔下で行います。手術の術式は複数あり、基本的には口の中から行いますが、検査およびシュミレーション結果により決定します。骨移動後は、プレートで固定します。さらに、手術部位を安静にするために術直後は顎間固定(上下の歯列を固定する)を行います。手術の約半年後に、プレートを除去する手術を行います。以下は代表的な術式です。
下顎枝矢状分割術
下顎枝という部分を外側と内側の2枚に分割し、下顎前突症の場合は後方に下げた状態で、小下顎症の場合は前方に出した状態で固定します。下顎の手術では最も多く行われています。

治療例:咬み合わせの改善だけでなく、審美面も改善されます。

下顎枝垂直骨切り術
下顎枝という部分を垂直に分割して、下顎を後方に移動させます。移動量が小さい症例が適応で、顎関節症状がある場合にも選択されることがあります。プレートで固定は行わず、顎間固定のみ行います。
Le Fort Ⅰ型骨切り術
上顎の骨を鼻孔の横あたりで水平の骨切りし、上顎全体を移動させて固定します。上顎の手術では最も多く行われており、下顎に対する手術と同時に行われることがほとんどです。

患者様へ
-
- 顎変形症の治療をしたい、興味を持っている、あるいは話を聞きたい、相談したいという患者様は、まずは相談、検査を施行いたします。
紹介状を持っていない場合であれば当科外来にお電話ください。
外来:0985-85-9887 (月~金 9:00~17:00)