1.循環器疾患
・経皮的冠動脈インターベンション治療(PCI)
心臓を取り巻く血管
(冠動脈
)が、細くなったり、詰まったりして、心臓の筋肉に必要な栄養や酸素を豊富に含んだ血流が不足・途絶する病気である「狭心症」や「心筋梗塞」に対して行う治療法です。腕や足の動脈より、カテーテルと呼ばれる細い管を挿入し、病変部をバルーン
(風船
)やステント
(網目状の金属の筒
)で拡張し、血流を改善します。冠動脈病変の性状や狭窄度の評価として、血管内超音波(
IVUS)、光干渉断層撮影法(
OCT)、冠内圧測定(
FFR)を用いて、個々の患者さんに対して最適な治療となるよう努めています。また、高度な石灰化を有する硬い病変に対し、ロータブレータという機械で硬化成分の切削を行ったり、柔らかなプラーク組織病変に対して、エキシマレーザーという機械で病変組織を蒸散させたり、一方向性冠動脈アテレクトミー術
(Directional coronary atherectomy: DCA) にてプラーク組織を切除する事により、良好な血管拡張を得る事ができます。
・末梢血管治療(EVT)
末消血管疾患(閉塞性動脈硬化症、重症下肢・上肢虚血)に対し、細くなったり、詰まったりした血管をバルーンやステントで広げることで血流を良くする治療を行います。末梢血管の疾患は、全身の動脈硬化を反映しての病態です。薬物治療、運動療法、補助療法を総合的に行う必要があります。
・経皮的バルーン肺動脈形成術(BPA)
慢性肺血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)は、器質化(古い)血栓が肺動脈を慢性的に詰まらせてしまい、肺の循環が悪くなる病気です。これに対し、薬物療法と合わせて、カテーテルを用い、バルーンで肺動脈の病変部を拡張する治療を行います。
・経皮的中隔焼灼術(PTSMA)
症状のある、薬剤抵抗性の閉塞性肥大型心筋症に対するカテーテル治療です。具体的には、左心室の出口を圧排する肥厚心筋を潅流する冠動脈の枝に、カテーテルで少量のエタノールを局所注入し、肥厚心筋を焼灼壊死させ、薄くすることで、血行動態を改善させます。本治療は高度の専門性を要します。当院は、九州地区でも数少ない、安定した手技が可能な施設です。
・経皮的僧帽弁交連切開術(PTMC)
心不全を来した僧帽弁狭窄症に対し、形態的にカテーテル治療の適応と判断される場合に、硬くなった僧帽弁をバルーンで広げる治療です。
・経皮的大動脈弁置換術(TAVI)
近年増加している高齢者の大動脈弁狭窄症に対する治療です。心臓外科医、麻酔科医、臨床工学士など多職種で構成する「ハートチーム」を結成し、硬化し開きにくくなった大動脈弁を、カテーテルで人工弁に取り換えます。
・カテーテルアブレーション治療
不整脈に対するカテーテル治療です。細い電線の付いた専用のカテーテルを心臓内まで進め、カテーテル先端からの電流により心臓の異常な電気興奮の発生箇所を焼灼することで筋肉の興奮を抑え不整脈を治す治療です。カテーテルアブレーションは、主に頻脈(脈拍数が多くなる)の治療として行います。カテーテルアブレーションは根治的治療法であるため、治療がうまくいけば、内服薬を中止することができ、その後の通院も不要となることも多くあります。主な治療対象は、心房細動や心房粗動、発作性上室性頻拍、心房頻拍、心室期外収縮、心室頻拍です。
・ペースメーカ、リードレスペースメーカ
心臓は
1日約
10万回拍動し、全身に血液を循環させています。心臓の拍動が遅くなったり、一時的に止まったりすると“めまい”や“失神”、“呼吸困難感”などの症状が起こります。このような徐脈性不整脈(洞不全症候群、房室ブロック)に対する治療として、ペースメーカという機器を留置し、至適な脈拍数を維持します。ペースメーカには多彩な機能があり、個人個人に合わせ、設定変更を行っております。また、リードレスペースメーカという、カプセル型のペースメーカを心臓内に植え込む治療も行っております。すべての患者様に植え込みできるわけではありませんので、担当者にご相談下さい。
・植込み型除細動器(ICD)、皮下植込み型除細動器(S-ICD)
心室頻拍や心室細動という危険な頻脈に対し、突然死の予防を図るための医療機器を留置します。
ICDは常に心拍を見張り、頻拍の発生を検知すると不整脈が停止するよう自動的に電気ショックなどの治療を行います。近年、皮下にすべてのシステムを植え込む皮下植込み型の
ICDが使用可能となっています。
S-ICDをご希望いただいてもすべての患者様に適しているとは言えませんので、担当者にご相談下さい。
・両室ペースメーカ(CTR)
拡張型心筋症や陳旧性心筋梗塞等で心機能低下を呈し、薬物治療で心不全症状が改善しない場合に適応となります。心室全体を同期させて収縮させることにより、心機能の改善
(心拍出量の改善
)が得られます。
・画像診断
循環器疾患にかかわらず、診療において不可欠な客観的指標である臨床検査の一環として、超音波検査、
CT、
MRI、
SPECT、
PET検査などの画像技術が近年目覚ましく進歩しています。これらを用い、心血管病に関する画像診断を行い、病態評価、治療法の選択、治療効果の判定に役立てております。
・循環補助用心内留置型ポンプカテーテル(IMPELLAⓇ)、経皮的心肺補助装置(ECMO)、大動脈内バルーンパンピング(IABP)
当科では、ショック症例や、心不全の病態が複雑な症例、治療に難渋する症例などの重症例を全県下からご紹介頂き、積極的に診療しております。薬物療法と合わせ、非薬物療法として、
IMPELLA、
ECMO、
IABPなどの補助循環装置を用いた治療を行っております。
・成人先天性心疾患
成人期を迎えた成人先天性心疾患の患者様が適切な医療を受けて頂くため、循環器内科医、小児科医、心臓血管外科医を中心に診療体制を構築し、継続的な加療を行っております。
・心臓リハビリテーション
様々な職種の医療スタッフとカンファレンスを定期的に行い、多職種による心不全のチーム医療に取り組んでいます。心臓リハビリテーションは循環器疾患を有する患者さんの
QOL及び予後の改善に効果があることから循環器疾患の極めて重要な治療法として位置づけられています。心臓・血管病を発症した後、社会復帰と再発予防を目的として、運動療法のみならず、食事療法や薬物療法に関する患者教育を行っています。
2.腎臓疾患
・腎生検に基づく腎疾患治療
慢性腎炎およびネフローゼ症候群などの腎疾患を対象に腎生検を行ない、病理組織診断に基づき治療方針を決定します。診断に応じてステロイド薬や各種免疫抑制薬による治療を行っていきます。
・難治性ネフローゼ症候群に対するLDL吸着療法
免疫抑制薬による治療困難な患者様に対して症例を検討した上でより高度な治療を行っていきます。
・急性進行性糸球体腎炎に対する血漿交換療法
ANCA関連血管炎に対して血漿交換療法を行ないます。
・末期腎不全に対する透析導入
腎臓が十分に機能を果たさなくなった患者様には十分な相談の上血液透析や腹膜透析の導入を行ないます。血液透析についてはシャントを含めたバスキュラーアクセスの作成を行ないます。安全な透析の導入に努め関連病院と連携しつつその後の維持透析先の紹介を行ないます。
・透析中の合併症に対する治療
感染症やバスキュラーアクセストラブルなど透析患者様に特有の合併症に対する治療を行います。