宮崎大学医学部附属病院 検査部

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検査部で行っている臨床研究

検査部で行っている臨床研究

HTLV-1の総合的な感染対策に資する研究

血液検査などの臨床検査は病気の診断、治療効果の判定、経過観察を行うために必要なものです。また臨床検査は客観的なデータに基づく医療に不可欠であり、医学の発展とともに日々進歩しています。当大学病院検査部でも臨床検査に使われる測定法の開発、改良および性能評価を行い、医療の現場に貢献したいと考えています。

HTLV-1(ヒトT細胞白血病ウイルス1型)は成人T細胞白血病(ATL)やHTLV-1関連脊髄症などの原因ウイルスであり、HTLV-1感染の診断は主にHTLV-1抗体検査によって行われています。しかしこの検査法は、まだ改良の余地があり、本学附属病院においてもHTLV-1検査法の改善につながる臨床研究を実施します。日本医療研究開発機構(AMED)おいて汎用性の高い検査方法の開発の検討が行われています。本学附属病院においてもAMED研究の一環として、臨床検体を用いて検査法の評価を行い、HTLV-1検査法の改善につなげたいと考えています。また、HTLV-1プロウイルスにはウイルス構造の一部が欠損しているHTLV-1欠損プロウイルスが存在しています。このHTLV-1欠損プロウイルスの測定系を確立し、欠損プロウイルスが新しい検査方法に与える影響についても検討を行います。なお、この研究は、HTLV-1感染症の診療に関連する新しい知見を得ることを目的とする学術研究活動として実施されます。

HTLV-1の総合的な感染対策に資する研究

レーザーキャプチャーマイクロダイセクションを用いた新たな起炎菌検出方法の開発

感染症の診断と治療には病原微生物の同定が不可欠です。細菌の同定手順として検体をグラム染色し、染色性や形態等からそれぞれの菌種群に的確な培養法や同定法を選択する必要があります。実際の臨床検体の中には、グラム染色で確認された菌体が何らかの要因で培地に発育してこない場合、あるいは複数の菌種が混在し真の起炎菌の分離同定が困難な場合があり、適切な抗菌薬の選択に難渋することがあります。これらの従来の細菌検査における問題点を解決するため、グラム染色標本から、好中球が貪食した起炎菌と考えられる細菌のみを特異的に回収し、同定する方法の確立を目指しています。なお本研究は、感染症学領域における新たな知見を得ることを目的とする学術研究活動として実施されるものです。

レーザーキャプチャーマイクロダイセクションを用いた新たな起炎菌検出方法の開発

HTLV-1陽性膠原病リウマチ性疾患におけるロイシンリッチα2グリコプロテイン(LRG)および新規炎症マーカーの検討

ヒト T 細胞性白血病ウイルス(HTLV-1)は、血液の病気である白血病の原因ウイルスとして同定されましたが、膠原病や関節リウマチなどの病気との関連も疑われています。HTLV-1 に感染した関節リウマチ患者さんでは、既存の抗リウマチ薬に治療抵抗性であることから、HTLV-1感染のない関節リウマチ患者さんとは異なったが炎症病態にかかわっている可能性が推測されます。
以前よりC反応性蛋白質(CRP)が疾患活動性マーカーとして測定されていますが、疾患活動性が高いにも関わらず CRP値が正常値を示す患者も一部存在します。ロイシンリッチα2グリコプロテイン(以下LRG)は、これまでに関節リウマチ以外にも、潰瘍性大腸炎、クローン病、乾癬等において、血清LRGが疾患活動性マーカーとして有用性を発揮する事が明らかにされています。このことから、血清LRGはより広範囲な疾患で炎症のマーカーとして使える可能性が推測されます。

以上より、本研究では、HTLV-1陽性膠原病リウマチ性疾患の炎症病態を反映するバイオマーカーとしてLRGが適切であるか検討します。さらにLRG以外の新規のバイオマーカーを様々な生物学的手法により探索します。

HTLV-1陽性膠原病リウマチ性疾患におけるロイシンリッチα2グリコプロテイン(LRG)および新規炎症マーカーの検討

尿定性潜血と尿沈渣赤血球結果の乖離原因に関する検討

尿一般検査などの臨床検査は病気の診断、治療効果の判定、経過観察を行うために必要なものです。 また臨床検査は客観的なデータに基づく医療に不可欠であり、医学の進歩とともに日々進歩しています。尿一般検査において、尿定性潜血検査結果と尿沈渣赤血球の検査報告に乖離が生じる症例が存在します。乖離の原因としていくつかの代表的要因は報告されていますが、日常臨床検査においてそれらの要因を除外した場合にも尿定性潜血と尿沈渣赤血球の検査結果の乖離に遭遇する場合があります。そのような要因の中には患者側要因(疾患,内服薬など)や検査試薬の特性などの影響が存在すると考えられます。尿定性潜血検査の乖離原因を明らかにすることで、診断価値の高い検査結果の提供が期待できます。

尿定性潜血と尿沈渣赤血球結果の乖離原因に関する検討

新型コロナウイルス検査法の性能評価に関する研究

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、ウイルス感染によって起こる重篤な感染症です。現在、この感染症は世界中に蔓延し大きな問題となっています。COVID-19の診断に必要な検査法として、遺伝子検査法・抗原検査法・抗体検査法の3つが広く知られています。特にPCRを用いた遺伝子検査法が標準法となっています。しかし、測定に用いる試薬や方法よって、検出できるウイルス量に差があり、陽性や陰性の判断基準に迷うことがあります。さらに、検査による偽陽性については、その原因について十分な検討が行われていないのが現状です。このため,臨床検査に使われる測定法の性能評価を行い、医療の現場に貢献したいと考えています。なお、この研究は、新型コロナウイルス検査法に関連する新しい知見を得ることを目的とする学術研究活動として実施されます。

新型コロナウイルス検査法の性能評価に関する研究

新型コロナウイルス感染症に関する臨床医学的および微生物学的解析研究

新型コロナウイルス感染症は、ウイルス感染によって起こる重篤な感染症です。最近の新型コロナウイルス感染拡大の問題は、現代社会に大きな影響を及ぼしています。この感染症をいかに制御するかが極めて重要な課題となっています。特に国内外でのウイルス変異株の出現は、ウイルス感染拡大、病原性発現、ワクチン効果の有無に影響を及ぼす可能性が考えられます。このような課題を解決するため、本研究では、新型コロナウイルス感染症の予防・診断・治療に関連する新しい知見を得ることを目的とする学術研究活動として実施します。なお、本研究は他施設との共同で行います。

新型コロナウイルス感染症に関する臨床医学的および微生物学的解析研究

検査部生理検査室におけるパニック所見(医師の確認が至急必要と判断される異常所見)の集計と報告体制の検討

本院、検査部生理検査室で施行された心電図(長時間記録心電図を含む)、心臓超音波検査、血管(下肢静脈)超音波検査において、医師へのパニック所見の報告を行った症例を集計・分析します。カルテの記載内容から医師がどのように対応したか、パニック所見の報告がどの程度活かされているか診療の実態調査を実施します。

検査部生理検査室におけるパニック所見(医師の確認が至急必要と判断される異常所見)の集計と報告体制の検討