OUR SPIRITS

宮崎県ドクターヘリ誕生物語  −「For MIYAZAKI」に込めた想い−

平成24年4月17日、宮崎県ドクターヘリが産声をあげました。全国で29県目、34機目のドクターヘリとなります。
この宮崎県ドクターヘリ。その実現までの道のりは決して平坦なものではありませんでした。宮崎にはドクターヘリは不要!だとか、ドクターヘリの必要性を全く感じない!だとか、ドクターヘリを運用する病院が無いじゃないか!とか、そもそもお金がないし、救急医の確保はどうするんだ!など、批判的な意見を数多く耳にしました。
しかし、ドクターヘリの導入に熱意ある関係者らは、決してあきらめませんでした。「宮崎こそ、ドクターヘリが必要だ!」と確信していたのです。なぜなら宮崎の救急医療は大きな医療格差を抱えており、その解消にはドクターヘリが不可欠だという信念を持っていたのです。
例えば、1分1秒を争うような重症の患者さんは、救命救急センターでの治療を要します。しかし宮崎県では、到着までに約63分を要するとの報告があります。しかも救急医療に携わる医師不足も相まって、重症の患者さんの「命をつなぐ」ことにおいて、他県との大きな格差が実在するのです。
救急の最前線で「命をつなぐ」消防救急にも見過ごせない格差があります。宮崎県内の消防機関は少ないマンパワーで広大な地域をカバーしなければならないのが実状です。自ずと、いざというときの「命をつなぐ」救急力に、大きな格差を生じてしまうことは容易に想像されることです。
さらに消防救急を保有しない町村が県内に7ヶ所あります。陸続きの地区でありながら消防救急が無い地域は全国的にみても稀で、7ヶ所も存在するところは他にありません。この地域では119番に電話をかけても救急車は来ません。その代わりに、それぞれの町村の役場職員や病院職員の日夜を問わない献身的な対応により救急医療が確保されています。すべての町村が山間部に位置しており、重症の患者さんの転院となると医師が付き添って長時間の搬送を余儀なくされます。休日や夜間で医師1人体制の場合は、搬送の間は文字通りの無医村になってしまうことさえあるのです。この宿命から逃れることは困難で、時として「命をつなぐ」ことが出来ないという厳しい現実に今なお直面しています。
このような救急医療における地域格差は、すなわち『命の地域格差』に直結します。他県では助かる命が、宮崎では「命をつなぐ」ことができないがゆえに助けられず、失っている命があるのです。
『 消え入りそうな命を、何とかしてつなぎたい… 』
その想いを見失わずに「命をつなぐ」ために、長い年月をかけて地道な活動を続けた結果、宮大病院のスタッフをはじめ、医師会の先生方、消防職員の方、宮崎県職員の方、ドクターヘリ運航会社の方、そして宮崎県民の皆様、数え切れないほどの多くの方々がドクターヘリ導入の協力なサポーターとして参加されて、今回の宮大病院における宮崎県ドクターヘリ運用開始という形に結実いたしました。
しかし、ドクターヘリの導入で、救急医療の大きな格差が一足飛びに解消されて、確実に「命をつなぐ」ことが可能となるわけではありません。ドクターヘリは夜間は飛べませんし、天候に左右されるという弱点があります。
ただし、飛行可能な日中であれば、一刻を争う重症の患者さんには、全県下要請から30分以内でドクターヘリが到着しフライトスタッフの治療を受けることができます。つまり、63分と報告されたアクセス時間の短縮が約束されるのです。消防救急を有しない町村の無医村にならざるを得なかった宿命もドクターヘリが引き継ぐことで解決することができます。フライトドクターやフライトナースに憧れてわれわれの仲間に入ってくれるスタッフも増え、救急医療のマンパワー不足も解消への兆しがみられ始めました。
稼働して間もない宮崎県ドクターヘリですが、ヘリがあったからこそ「命をつなぐ」ことができ、実際に救命できた患者さんもいらっしゃいます。本当にうれしいことです。
このように宮崎の救急医療のこれまでの「どげんもこげんもならん」と言われた側面が、ドクターヘリの導入で、確かな一歩を踏み出すことができました。
宮崎の「命の格差」を少しずつ埋めていくこと、これが宮崎県ドクターヘリの使命です。
その使命を「For MIYAZAKI」の言葉に込めて、われわれ救命センターのスタッフ1人1人が背負い、そして全員で志一つにして前へ歩み続けることがわれわれの使命です。
「For MIYAZAKI」のスピリッツを背負って、われわれと同じ志で仕事をしたい!仲間になりたい!と思われる方はいつでもご連絡ください。経験は問いません。熱い志があれば十分です。歓迎いたします。
また、子供達の社会勉強として、ドクターヘリを見学したい!というお話も歓迎いたします。その経験からフライトドクターになりたい、フライトナースになりたい、と夢を持ってくれる子供たちが1人でも増えてくれることも「For MIYAZAKI」に込めた想いです。
空を見上げてください。
期待と使命の両方を抱いて、多くの患者さんの「命をつなぐ」ために、「For MIYAZAKI」を背負うスタッフを乗せたドクターヘリが、今日も宮崎の空を翔けています。

宮崎大学医学部附属病院
救命救急センター
スタッフ一同


宮崎大学医学部附属病院救命救急センター