母体安全への提言(2023年版)の英訳版が掲載されました

阿萬助教が委員会のメンバーを務める妊産婦死亡症例検討評価委員会が執筆した、母体安全への提言(2023年版)の英訳版が、Journal of Obstetrics and Gynecology Reserchに掲載されました。
母体安全への提言は、日本国内の妊産婦死亡の動向や母体安全のための方向性を示すための提言をまとめたものであり、妊産婦死亡症例検討評価委員会、日本産婦人科医会が毎年発行しているものです。妊産婦死亡症例に対する、病理解剖の重要性についても記載されています。

(Open accessであり、どなたでも下記リンクよりご覧いただけます)

Japan Maternal Death Exploratory Committee. Proposals for improving maternal safety (2023 edition): Insights from the analysis of maternal deaths in Japan. J Obstet Gynaecol Res. 2025;51:e16244.
doi: 10.1111/jog.16244.

食餌の軟らかさが、インスリン抵抗性や肝臓の糖・脂質代謝に与える影響を明らかとした原著論文が公開されました

宮崎大学フロンティア科学総合研究センターおよび医学部看護学科生活・基盤看護科学講座助教の山口史剛先生らと、当講座中村先生らが共同研究した研究成果が発表されました。

本研究では、軟らかく吸収しやすい食餌(軟質食)がインスリン抵抗性や肝臓の糖・脂質代謝に及ぼす影響を調査しました。

主な結果

● 軟質食を9週間摂取したラットでは、インスリン抵抗性の上昇を確認
● 22週間の継続摂取により、血糖値の上昇、肝臓の糖代謝異常、脂質合成の増加が顕著に
● 一方で、軟質食から標準食に戻した群では、代謝異常が回復

研究の意義
本研究により、食事の物理的性質がインスリン抵抗性や糖尿病リスクに影響を与える可能性があることが示唆されました。また、適切な食事選択による代謝異常の改善の可能性が明らかとなり、糖尿病の病態や、予防・治療の側面からも重要な知見と考えられます。

Fumitake Yamaguchi, Sayaka Akieda-Asai, Eriko Nakamura, Hinano Uchida, Atsushi Yamashita, Yukari Date. Continuous exposure of non-obese adult male rats to a soft-textured, readily absorbable diet induces insulin resistance and derangements in hepatic glucose and lipid metabolism.
The Journal of Nutrition, in press.
https://doi.org/10.1016/j.tjnut.2025.03.009.
(https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0022316625001609)

炎症・低酸素環境と、粥状動脈硬化プラークの血栓性との関係を検討した原著論文が掲載されました

前川研究員らが、粥状動脈硬化プラーク内の細胞が持つ血栓形成能に着目し、炎症および低酸素刺激が組織因子(TF)発現や解糖系を促進し、冠動脈血栓形成に関与する可能性を検討しました。

主な結果として、
●  不安定プラークでは、安定プラークに比べてTFおよびヘキソキナーゼ(HK)-IIの発現が増加
● TF・HK-II陽性のマクロファージが血小板-フィブリン血栓形成に関与
● 炎症刺激と低酸素状態の組み合わせが、TF発現および凝固活性を増強
● 解糖系阻害によりTF発現と凝固活性が抑制

これらの結果から、炎症および低酸素環境がマクロファージの凝固活性を著しく増強し、プラーク破綻後の冠動脈血栓形成に寄与する可能性が示唆されました。

急性冠症候群の発症機序を、プラーク環境の観点から解明した研究であり、重要な知見と考えられます。

Maekawa K, Nakamura E, Saito Y, Matsuura Y, Gi T, Nishihira K, Oguri N, Mriguchi-Goto S, Sato Y, Hatakeyama K, Shibata Y, Komohara Y, Kaikita K, Asada Y, Yamashita A. Inflammatory stimuli and hypoxia on atherosclerotic plaque thrombogenicity: Linking macrophage tissue factor and glycolysis. PLOS ONE 2025;20:e0316474. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0316474

*Open access であり、どなたでもご覧いただけます。