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脊柱側弯症について

スポーツ傷害Q&A

背骨の構造と働き

背骨は32~34個の椎骨とその間に介在する椎体板によって構成されています。その配列は前から見ますと直線状ですが、横から見ますとゆるやかに弯曲しS字状を呈しています。後方部分には管状の脊柱管が形成され脊髄神経が収められています(図1)。背骨の働きには、体の支柱として体幹を支持する、体を動かす、背骨の中を走行する神経を保護するというものがあります。

側弯症とは?

背骨が側方に弯曲する姿勢異常ですが、実際には背骨のねじれも伴っています(図2)。側弯症の重症度は最も傾いた椎骨(終椎)によって形成されるコブ角という角度で判定します(図3)。一般にコブ角25°以上が治療の対象となります。

側弯症の症状は?

弯曲が軽度であれば自覚的症状はありませんが、コブ角が100°を越すような高度になりますとバランス異常のほか息切れなどの呼吸機能障害が発生します。

側弯症の原因は?

側弯症の多くは原因が不明で特発性側弯症と呼ばれます。その他、先天的な椎骨の奇形によって発生する先天性側弯症、別の疾患に随伴して生じる症候群性側弯症、神経や筋肉の病気に伴って起こる神経筋性側弯症などがあります。遺伝に関しましては、遺伝子が特定された訳ではありませんが、ある程度の関連性があるとされています。

側弯症の疫学(発症時期、性差、頻度)

多くは学童期から思春期(小学生や中学生)に発症し、男子に比べ女子に多く認められます。発生頻度は15°以上の側弯症に限れば、小学生高学年で0.4%、中学生で1.4%程度とされています。

側弯症の自然経過

成長に伴って進行し成長終了をもって停止する傾向があります。すなわち発症年齢が若く、残された成長期間が長いほど進行し易いと言えます。一般にコブ角が45°以下では骨成熟を迎えると側弯症の進行は停止しますが50°を越えると成人以降も年に1~2°進行します。

側弯症の診断

背骨全体のレントゲン撮影で診断します。ただし誤差をなくすため正しい姿勢での撮影が必須です。その他、原因検索のため脊椎MRIや他診療科での精密検査を適宜行います。

側弯症の治療

側弯症の治療原則は早期発見早期治療にて変形の進行を抑え、将来発生し得る機能障害を予防することです。コブ角による側弯症の重症度ならびに成熟度から進行の可能性を考慮し治療方法を判断します。基本的には25°以上で装具療法(図4)、50°以上で手術療法の適応とされています(図5)。装具療法は成長終了まで継続します。たとえコブ角が小さくても未成熟で進行の可能性が残されている場合は定期的な経過観察を行い、適切な治療時期を逃さないよう配慮します。放置あるいは無効な整体治療のみに頼ることは急激な進行に気付かず治療困難な状態に至る危険性があり厳に慎むべきです。

側弯症の簡単な発見方法は?

  1. 両肩の高さの左右差
  2. 脇線の左右非対称
  3. 両肩甲骨の高さや位置の非対称
  4. 前屈したときの背中や腰の高さの左右差(肋骨隆起、腰椎隆起)

の4つのチェックポイントがあります(図6)。これらの異常が認められた場合、側弯症の可能性がありますので専門医への相談をお勧めします。なお、宮崎県においては一部地域を除き小学5年生と中学2年生に対し特殊な写真撮影(モアレ撮影)による側弯症学校検診を行い、側弯症の早期発見に努めています。

側弯症の日常生活上の注意点

特別なものはありません。肩かけかばんやテニスなどの左右差のあるスポーツも側弯症の進行に関与している事実はありません。悪い姿勢が進行を促すこともありませんが、正しい姿勢を保つことは心身の健やかな発育の上で大切です。治療にあたっては、こどもに不安を抱かせずのびのびと日常生活を行わせながら無理なく継続することが重要です。

参考図書

側弯症のしおり -知っておきたい脊柱側弯症-.日本側弯症学会編,インテルナ出版,2003.
標準整形外科学,第9版,2005