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肉ばなれってなに?

スポーツ傷害Q&A

肉ばなれとは?

「肉ばなれ」とはスポーツ現場での呼び名であり、「捻挫」や「打撲」と同様に受傷状況を表した言葉です。筋肉が離れた感じで、ダッシュやジャンプなどの動作中に、瞬時に筋肉の一部が離れたように感じ、急激な痛みや脱力により運動の継続が困難となる状態です。

肉ばなれはどうして生じるの?

打撲などの直達外力による『筋挫傷』とは異なり、ダッシュやジャンプ、ボールをキックした時の伸ばされようとする筋肉の急激な収縮により生じます。

肉ばなれはどういう時や部位に生じやすいの?

下肢に多く生じます。サッカーのシュート動作時における大腿四頭筋、短距離走での疾走時におけるハムストリングなどが好発部位です。(図1)(表1)

肉ばなれの原因は?

筋の柔軟性や筋力または筋持久力の不足、左右の筋力差あるいは筋群間(例えば、大腿四頭筋とハムストリング)のアンバランスが著しいほど生じやすいです。気候や競技場などの環境面も関与しています。

肉ばなれの症状は?

自発痛、圧痛などの痛みや腫れや硬結などの局所所見です。時に受傷翌日以降に皮下出血を認めることもあります。重篤な場合には断裂による筋の陥凹を触れたりすることもあります。

肉ばなれの損傷程度は?

1~3段階に分類します。1度は筋が引き伸ばされる状態、2度は筋の部分断裂、3度は筋の完全断裂です。

肉ばなれの治療は?

血腫形成の程度が肉ばなれの重症度を決める要因になります。このため、初期治療によりどれだけ出血を抑え、血腫形成を最小限に抑えるかが治療の鍵を握ります。急性期(受傷から48~72時間)はRICE療法を徹底すべきです。

肉ばなれからの復帰条件は?

復帰の目安は、運動前後のストレッチング痛の消失や疲労感、筋の緊張感などを参考にします。損傷した筋周囲の関節の動きに制限がないことも必要です。

肉ばなれの予防は?

ストレッチングを含めた練習前のウォーミングアップと練習後のクーリングダウンを丁寧に充分に時間をかけて行います。また、左右の筋力差あるいは筋群間(例えば、大腿四頭筋とハムストリング)のアンバランスを解消させ、十分な柔軟性を獲得してください。運動環境にも注意が必要です。

文献

  1. 奥脇透:疾患別スポーツ傷害 肉ばなれ. 関節外科, 25:140-145(10月増刊号), 2006
  2. 中嶋寛之ら:スポーツ損傷としての肉離れ-基礎と臨床の最前線- 臨床スポーツ医学(10)vol.21,2004. 文光堂
  3. 日本体育協会:スポーツ医学研修ハンドブック, 文光堂
  4. 林光俊:種目別スポーツ障害の診療, 南江堂
  5. 武藤芳照:図解スポーツ障害のメカニズムと予防のポイント, 文光堂
  6. 臨床スポーツ医学編集委員会:スポーツ現場における救急・応急処置のポイント 臨床スポーツ医学vol.15 臨時増刊号, 文光堂

※学校の運動器疾患・障害に対する取り組みの手引き(財団法人日本学校保健会発行)に執筆