MENU

筋柔軟性ついて

スポーツ傷害Q&A

体の柔らかさについて

体の柔軟性についてはその要素は1つではありません。体の動く範囲を決定するものとしては、骨や靭帯、関節を取り巻く脂肪組織や皮膚などの構造的な要素と、関節を動かすための筋肉や腱などの機能的な要素に大きく分かれます。

スポーツと筋柔軟性

多くの競技において、体の柔軟性は競技を行う上で重要な要素になります。演技的な体操やダンスなどは全身の柔軟性が必要です。また水泳の自由形や野球選手における肩関節の動きや、サッカー選手の股関節の動きが大きいことは競技を行う上で有利になります。

筋柔軟性と障害

筋肉は疲労したり、外傷を受けたり、長時間使わないでいると短縮し、柔軟性が低下することが多くなります。柔軟性が低下した筋肉は血行循環が悪くなり、動かす時に痛みを伴ったり、関節の動く範囲が狭くなったりして運動の機能障害の原因となります。特に成長期の段階では骨の成長により、筋が伸ばされることで骨の付着部や筋肉などに様々な障害や外傷が発生します。このことから運動を行う上では筋の柔軟性を高めることはとても重要になります。

筋柔軟性の機能と評価について

大腿四頭筋(太ももの前面の筋肉)

大腿四頭筋は体重を支えるための重要な筋肉で、膝を伸ばす働きがあり運動において最も重要な役割を果たします。この筋肉の柔軟が低下するとジャンプ着地のときに衝撃の吸収が悪くなり、筋や腱の骨付着部への負担が大きくなります。発生する疾患としてはジャンパー膝(膝前面の痛み)オスグットシュラッテル病(成長期における膝前面の痛み)などがあります。評価する方法としてはうつ伏せになって膝を曲げてお尻に着くと柔らかいと判定されます。下腿場合にはお尻が浮き上がる現象が見られます。(図1)

ハムストリング(大腿後面の筋)

ハムストリングは主に膝を曲げる働きがあり、運動においては大腿四頭筋と共同して下肢の動きをコントロールする重要な筋になります。ハムストリングの柔軟性低下はダッシュなどの急激な動きのときに急激に伸ばされて損傷(肉ばなれ)を起こしたり、骨の付着部である鵞足(膝の前内側部)の炎症などが起こります。評価する方法としては、前屈して手が床に着くかどうか、または仰向けになって膝を伸ばして下肢を挙げて90度までになるかどうかで判定します。宮崎大学整形外科が実施した過去6年間における宮崎県少年選手のメディカルチェックの結果では、男子のFFD陰性(床に指がつかない)と障害発生に相関を認めました。(図2)

下腿三頭筋(ふくらはぎ)

下腿の筋(腓腹筋、ヒラメ筋)は足関節や膝関節の動きをコントロールする働きがあります。下腿三頭筋の柔軟性低下はアキレス腱の緊張を増し、ジャンプやストップなどの時に衝撃吸収の効率が悪くなり、アキレス腱やアキレス腱付着部に傷害を生じさせる原因となります。またダッシュをしたときに急激に伸ばされて筋が損傷(肉ばなれ)します。評価する方法として、仰向けになって膝を伸ばして足関節を背屈させて角度を測定します。(図3)

引用:国体選手における医・科学サポートとガイドライン P73

出典

  • 中嶋寛之ら:国体選手における医・科学サポートとガイドライン.日本体育協会国体選手の医・科学サポートに関する研究班,1-96,2000
  • 山本利春:測定と評価(改定増補版) ,ブックハウスHD,東京,72-80,2004.
  • 河原 勝博ほか:宮崎県少年選手におけるメディカルチェック-障害・外傷と関節
    弛緩性・筋柔軟性との関連について-日本臨床スポーツ医学会誌,18,59-66,2010

(文責 河原 勝博)