突き指ってなに?
指は大切なの?
手指は中手骨~基節骨・中節骨・末節骨の骨や指の曲げ伸ばしをする伸筋腱・屈筋腱などが存在し、機能的・巧緻運動のために非常に重要な部位です。
突き指はどうして起こるの? (図1-2)
突き指は、指先にボールが当たったり、何かを突いたりしておこる外傷の総称で、指の関節などが腫れてしまう状態です。スポーツ活動において頻繁に発生します。
単なる打撲や捻挫のことが多いが、指先を伸ばす腱が切れたり骨折や脱臼をすることもあります。重症例では、適切な治療が行われなければ、指の変形や動きの制限など手指の機能に重篤な影響を及ぼすこともあります。
伸筋腱付着部の裂離骨折により、DIP関節の屈曲変形で、自力でDIP関節が伸びなくなります。手術を要することがあります。
突き指するとどういう症状がでるの?
痛み、腫れ、皮下出血が主なものです。関節が曲がってしまうなどの変形や伸びない・曲がらない等の症状がでることもあります。
突き指はちょっとした事だから大したことはないの?
突き指は、単なる打撲や捻挫のこともあれば、指先を伸ばす腱が切れたり骨折や脱臼をすることもあり、痛みがあったり、腫れたり、指先が曲がったままになったりします。たかが突き指と日常茶飯事の軽いけがと軽視される傾向がありますが、適切な治療が行われなければ、指の変形や動きの制限など手指の機能に重篤な影響を及ぼすことも少なくありません。
突き指をした時は?
治療はRICE療法が基本です。氷がなかったら、水道水を使ってまずは冷やしてください。RICE療法後、痛みが続く、腫れている、皮下出血がある、変形している、しっかりと伸びない、曲がらないという症状があれば病院を受診してください。たとえ軽症であってもきちんと検査し適切な治療を受けることが大切です。症状によっては手術することもあります。
突き指をした時はひっぱるの?
突き指をしたらひっぱると直るは正しくありません。かえって、痛めている関節や腱などの組織に悪影響を及ぼします。ただ、脱臼を整復する時にひっぱることはありますが、粗雑に扱うとさらにダメージが拡がるので決して安易に行ってはいけません。
予防は?
運動前のストレッチと指の曲げ伸ばし運動をしっかり行いましょう。運動をするのに爪が長すぎるのも色々な意味で危険です。サッカーのキーパーはキーパーグローブを必ずつけましょう。バレーボールではテーピングも有用ですが、基本的には再発予防です。
骨折の場合は?
小児期(成長期)は骨端線損傷や若木骨折を生じやすいですが、小児の骨折は成人と比較して骨癒合が早くから起るため可及的早期の整復が必要です。骨端軟骨板、いわゆるX線上での骨端線は骨幹部の骨や関節靭帯に比べ力学的強度が劣っていて、外的負荷に対する抵抗力が低い場所です。この部位での損傷は、適切に治療されないと骨の成長障害により短縮や変形を生じ、将来的な疼痛や機能障害の原因になります。
代表的病名は?
槌指(ついし:マレットフィンガー)
伸筋腱(指を伸ばす筋肉の腱)の断裂または伸筋腱付着部(腱が骨に付く場所)の裂離骨折により、DIP関節(指先から最初の関節。末節骨と中節骨間の関節)の屈曲変形で、自力でDIP関節が伸びなくなります。(図2)
PIP関節脱臼骨折
PIP関節(指先から2番目の関節。中節骨と基節骨間の関節)の脱臼で、中節骨が背側(手の甲側)に脱臼します。脱臼の際に中節骨基部の掌側(手の平側)に骨折を生じ、自力でPIP関節を曲げることができなくなります。掌側から背側に向けて強い衝撃を受けると起こります。
母指MP関節尺側側副靭帯損傷(スキー母指)
母指(親指)のMP関節(親指の指先から2番目の関節。基節骨と中手骨間の関節)をつなぐ示指(人さし指)側の靭帯の損傷です。スキーでストックを持ったまま転倒した際に、母指のMP関節が橈屈位(親指と人さし指が開いた状態)を強制されて受傷することがあります。
PIP関節側副靱帯損傷
PIP関節(指の先端から2番目の関節。中節骨と基節骨間の関節)の側副靱帯を痛め、側方へのグラグラする不安定性が生じます。球技において、指を伸ばした状態で多く受傷します。
第一中手骨基部脱臼骨折(ベネット骨折)
親指の中手骨が、基部に骨切片を残して本体が橈背側(外側で手の甲側)に脱臼します。野球のキャッチャーに多いです。
文献
- 井上博:小児四肢骨折治療の実際, 6章:手の損傷 P255-293, 金原出版
- 日本体育協会:スポーツ医学研修ハンドブック, 文光堂
- 林光俊 種目別スポーツ障害の診療, 南江堂
- 日高典昭:手指のスポーツ外傷-突き指、骨折など. MB Orthopedics 21(13):82-90, 2008
- 武藤芳照:図解スポーツ障害のメカニズムと予防のポイント, 文光堂
- 武藤芳照, 柏口新二, 内尾祐司:学校における運動器検診ハンドブック, 南光堂, 2007
- 臨床スポーツ医学編集委員会 スポーツ現場における救急・応急処置のポイント 臨床スポーツ医学vol.15 臨時増刊号, 文光堂
※学校の運動器疾患・障害に対する取り組みの手引き(財団法人日本学校保健会発行)に執筆