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アキレス腱のけがについて

スポーツ傷害Q&A

アキレス腱とは?

『腱』とは、筋肉と骨をつなぐ仲介の役目をしている組織です。似たものに『靱帯』がありますが、これは骨と骨との仲介で、腱とは異なる組織になります。アキレス腱とは、ふくらはぎの筋肉(下腿三頭筋といいます)の力を踵骨(かかとの骨)に伝える役割を担っています。これにより、十分な力での底屈(足首を伸ばす動き)が可能であり、走ったり、つま先立ちが可能になっています。ちなみに、名前の由来は、古代ギリシアのアキレスという戦士の名前からと言われています(無敵の戦士だったが、弓でアキレス腱を射られて倒れた)。

アキレス腱のけがにはどんな種類があるのか

多くの場合、アキレス腱部分の痛みが生じるのは、アキレス腱自体が原因のものとアキレス腱以外が原因のものがあります。多くは長時間の立位や、スポーツなどでの急な負荷や使いすぎが原因となります。痛みの原因として多いのは、アキレス腱炎(アキレス腱周囲炎)やアキレス腱断裂が挙げられます。同じような症状を起こすものは、他にも、痛風、腓腹筋筋挫傷(いわゆる肉離れ)、アキレス腱付着部剥離骨折、など様々です。

アキレス腱部分の痛みの診断は?

診察所見が第一です。ほか、考えられる疾患に応じてレントゲン撮影や、血液検査、超音波検査、CT検査、MRI検査を行うこともあります。

アキレス腱炎とは?

アキレス腱は切れておらず、腱自体に炎症を起こし痛みとなっている状態です。症状は、スポーツなどの後にかかとから数センチ頭側に、痛み、腫れを生じます。早くに治療を行えば、早くに改善することが多いのですが、無理して長引かせると長期にわたり痛みが続くこともあります。

アキレス腱断裂とは?

いわゆるアキレス腱が切れてしまっている状態です。特徴的な症状としては、断裂部分に陥凹(へこみ)が生じ、つま先立ちが不可能になります。また、ふくらはぎを手で掴むと、通常は自然と足首が伸びますが、これがなくなります(トンプソンテストと言います)。ほか、内出血やふくらはぎを掴む際の痛みなどあります。間違いやすいのですが、アキレス腱が完全に切れても、アキレス腱以外の筋肉に働きによって足首を動かすことは可能です。

アキレス腱のけがの治療は?

応急処置としてRICE療法(※)が基本になります。その後、早目の整形外科病院受診をお勧めします。アキレス腱炎の場合は、安静に加え、痛みや炎症を抑えるために鎮痛薬・湿布薬を使用します。アキレス腱断裂の場合には、手術を行う方法と、行なわずに治す方法(保存的治療といいます)があります。治療成績としては、どちらも良好なことが多いのですが、それぞれの治療に利点・欠点がありますので、各医療機関で相談して下さい。一般的に手術の場合は早い段階でのリハビリ、歩行が可能ですが、手術を行わなければならず、傷ができます。保存的治療の場合には入院せず通院でも治療可能であるのですが、長い期間のギプス固定が必要であったり、手術に比べて、治療途中でもう一度断裂を起こす(再断裂といいます)危険性が高くなると言われています。いずれも早期治療が早期改善の第一歩です。

アキレス腱のけがの予防は?

スポーツ前のウォーミングアップやストレッチング、練習後のクーリングダウンや冷却を勧めます。

参考文献

アキレス腱断裂診療ガイドライン
今日の整形外科治療指針 第5版