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温熱療法ってなに?

スポーツ傷害Q&A

温熱療法とは?

〔概念〕温熱療法は物理的エネルギー(光線,電気,音波,振動,温熱など)の生体に対する作用を応用したものであり,身体の機能改善,維持を図る医学的治療法です。

温熱の作用は?

  1. 局所への作用として、末梢血管の拡張により血流が増加し,浮腫の減少とともに代謝を亢進させ,筋緊張の軽減などにより鎮痛・鎮静効果が発揮され,さらに膠原線維の伸張により局所の運動機能が改善されます。
  2. 全身への作用として、初期は交感神経の緊張と心拍出量の増加のため血圧の上昇,中後期は末梢血管拡張により血圧は下降します。鎮痛・鎮静効果もあり,運動療法に効果があります。

温熱療法の種類は?

皮膚の表層を直接温める表層性温熱と骨,関節,筋肉などの深部を温める深達温熱に分類できます。
表在性温熱:ホットパック、パラフィン浴、赤外線、種々の水治療
深達温熱:超短波、マイクロウェーブ、超音波

温熱療法の実際は?

一般的には損傷部を15~20分間温めてから運動療法を行います。明らかな治療効果がなくとも2~3週間行うと効果が出ることも多いです。しかし改善がなければ他の方法を考えましょう。
下記は整形外科で一般的に行われているものです。具体的には治療方法は、医師に相談しましょう

  1. 温水:40~42℃の温水で,15~20分間患部を温める。(図1)
  2. ホットパック:シリカゲルの入った木綿袋を75~80℃に温め,水を切りタオルで包み患部に20分前後当てる。厚めのタオルを使用し熱傷に注意する。
  3. ホットタオル:50℃位の湯にタオルを入れ,しぼったあと患部に当てる。5分毎に換え20分前後行う。
  4. パラフィン浴:熱伝導率が低いため,熱傷を生じ難く,熱容量が大で,冷却が遅い性質があり,手指や足の患部に利用される。50℃前後で溶かしたパラフィンに患部を10数回入れてパラフィン膜を作り,さらにビニールで包み15~20分間温める。手指に傷や創のある例は適用外である。
  5. 赤外線療法:赤外線を発生する電球が用いられる乾性温熱の方法である。患部を電球から60~100cm離し20分前後温める。熱傷の発生に注意する。
  6. 極超短波microwave diathermy:アプリケーターより電磁波を出す。深部の加温が目的であり,患部より5~10cm離してアプリケーターを向け,15~30分間使用する。(図2)
    [注意事項]水分,金属の部分にはエネルギーが集中するため,術後の浮腫の部位や眼球,金属固定部位,妊娠中の腹部および心臓ペースメーカー装着者などには禁忌である。

    ※超音波ultrasound(US):1MHzの超音波を用い,温熱作用と振動作用(マッサージ効果)を利用する。患部にパラフィンを塗り,導子を直接当てる方法(直接法)と患部を水中に入れ導子を2~10cm離して照射する方法(間接法)がある。骨,関節などの深部に有効であり,脂肪層での熱発生が少なく,筋の温度上昇が高い。また振動のマッサージ効果により瘢痕拘縮の治療にも用いる。(図3)
    [注意事項]含気量の多い胃,腸,肺は熱傷を生じたり,眼球は敏感であり注意を要する。

温熱療法の注意点は?

以下の症状,疾患等には使用できません。

  • 浮腫や関節の腫脹など急性炎症(発赤・腫脹・疼痛が著しい時期には、温熱によって炎症は助長します)
  • 循環障害(血流による熱の放散が妨げられているので熱傷の危険が高く、局所の代謝が温熱で亢進するにもかかわらず血流不足から酸素欠乏による相対的虚血となり危険です)
  • 知覚障害・意識障害(熱傷の危険があります)
  • 出血傾向(血が止まりにくくなります)
  • 悪性腫瘍(通常は腫瘍の成長を促し、転移の危険性を増すと考えられます)
  • 適用禁忌部位(脳、成長期の骨端部など)

*スポーツ外傷例 急性期には温熱は使用しません。

下肢の挫傷(血腫),肉ばなれ(筋部分断裂)
保存治療例

  • 受傷早期には,出血や腫脹に対して局所を安静に保ち,冷却し,必要に応じた鎮痛剤の投与を行います。
  • 症状が軽減してくれば,温熱療法などの物理療法を行いながら,ストレッチングや筋力増強の運動療法を行います。

参考文献

今日の整形外科治療指針(第5版)
現代リハビリテーション医学(第2版)