泌尿器科代表疾病

当科で治療を行う代表的な疾患は以下の通りです。

宮崎大学医学部附属病院泌尿器科では、子供からお年寄りまでのさまざまな泌尿器科の病気に対して、最先端の治療を安全に提供できるように心がけております。このページでは、当科で治療する主な疾患、特徴的な治療法を行っている疾患を紹介します。現在、ご紹介していない治療対象の疾患も数多くあります。今後、掲載していきますので、ご期待ください。

間質性膀胱炎

間質性膀胱炎とは、頻尿(トイレに行く回数が多いこと、一般には日中8回以上といわれている)や、多くの場合は膀胱充満時(膀胱におしっこが溜まったとき)の膀胱痛や不快感や下腹部や会陰部の痛みを伴う病気です。このように急性膀胱炎に似た症状を示すために抗菌薬などが処方されたり、頻尿改善薬などが処方されたりしますが、効果があまりなく、つらい症状が続いてしまう時は、この病気かもしれません。今までは、この病気に対する理解が、一部の泌尿器科医を除いて、十分ではなかったため、つらい症状に対して、ただ対症療法だけだったり、場合によっては医師が「異常ありません」と診断したり、時には精神的な病気扱いなどされていました。しかし、最近では、多くの泌尿器科医が、この病気を理解するようになってきました。

この病気の特徴は痛みが強いことと言われていますが、必ずしも痛みが伴わない場合も多く、他の病気と症状が似ていることから診断が難しいことがよくあります。そして、アメリカでは患者数は70万人にものぼると言われ、珍しい病気ではありません。この病気は細菌による急性膀胱炎とは異なり、 膀胱の粘膜の下にある間質といわれる部分の炎症で起こる疾患です。 ただ、原因はまだ明らかになっていません。間質性膀胱炎の診断と治療に現在最も有用なのが『膀胱水圧拡張術』です。下半身麻酔で膀胱内に生理食塩水を注水し膀胱を拡張することで、 膀胱粘膜の変化や出血の程度から間質性膀胱炎を診断します。また同時に痛みが和らぎ、膀胱の大きさが増す効果があります。

こんな場合は間質性膀胱炎を疑ってみましょう



まずは排尿日誌(何時に何ccくらいおしっこが出たか、排尿のたびに記録する)をつけます。1日8回以上の頻尿で平均排尿量が150ml以下の場合では、間質性膀胱炎も疑われます。また、朝起きてすぐ、排尿が300mlぐらい出たとき、不快な痛みがでてその後頻尿になる、尿が貯まるたび膀胱痛がある場合なども間質性膀胱炎が疑われます。

診断・検査


症状については問診票(間質性膀胱炎症状スコア、問題スコア)などで重症度を判定します。 間質性膀胱炎の疑いが強いと考えられた場合は、以下のような検査を行います。

1.麻酔下膀胱鏡・水圧拡張術(hydrodistention)
麻酔下に膀胱内に生理的食塩水を注入し、膀胱を拡張します。麻酔下に行なわないと痛みなどで十分膀胱が拡がらないため、所見が見逃されることがあるからです。このとき膀胱鏡で膀胱内を観察すると特徴的な所見がみられます。
 (1).glomerulation(五月雨様出血)
 膀胱の拡張後、収縮時に細かい出血が膀胱全体からおこります。
 (2).Hunner潰瘍(膀胱粘膜の亀裂)
 全例に見られるわけではありません。
また、この検査は間質性膀胱炎であった場合には治療としても有効で、この治療により症状が軽減する方が多いようです。
2010年4月1日 間質性膀胱炎に対する膀胱水圧拡張術が保険適応となり安心して治療していただけるようになりました。

治療法


治療法は、診断時に行った膀胱水圧拡張術で症状が改善することがよくあります。また、内服薬の治療、膀胱内への薬物注入療法等もあります。

1.水圧拡張術
麻酔下に行ない、診断と治療を兼ねています。膀胱粘膜の機械的に拡張のために一時的に症状悪化することもあります。
2.内服薬
多くの薬が開発中です。
(1).トシル酸スプラタスト(アイ・ピー・ディー)抗アレルギー剤。有効であったとの報告がある。
 (2).三環系抗うつ薬:アミトリプチリン(トリプタノール)抗コリン作用、神経伝達ブロック等の作用
 (3).抗ヒスタミン剤:ハイドロキシジン(アタラックス)肥満細胞からのヒスタミン遊離に対する作用といわれいます
 (4).ステロイド剤 投与法は様々で決まったものがない。有効性については証明されていない。
 (5).その他 Ca拮抗剤、pentosan polysulfate(PPS)、鎮痛剤等
3.電気刺激療法
主に疼痛に対する治療である。今後期待される治療法です。
4.膀胱注入療法
dimethyl sufoxide(DMSO)、ヘパリン、BCG、L-アルギニンなど
また、当科では鍼灸を組み合わせた治療法を試みています。患者さんによっては良い効果が得られています。 間質性膀胱炎、膀胱水圧拡張術などに関する質問や疑問などがあれば、泌尿器科までお気軽にご相談ください。