ミャンマーでの活動

宮崎大学国際連携センターの矢野靖典先生の尽力で、2015年からJICAの活動としてミャンマー国におけるヒ素汚染地域での汚染水対策を多方面から実施しています。宮崎大学は工学部、農学部、医学部が中心となり、ミャンマー国は保健省がカウンターパートとなって活動しています。私は2016年の活動から参加させていただき、低濃度長期ヒ素曝露の住民を多数診察させていただく機会を得ました。

詳細はこちらを参照ください(http://www.med.miyazaki-u.ac.jp/home/3naika/blog/%E3%83%9F%E3%83%A3%E3%83%B3%E3%83%9E%E3%83%BC%E7%A0%92%E7%B4%A0%E6%A4%9C%E8%A8%BA/

 

皮膚科、公衆衛生学の先生方の参加もあり、皮膚所見と神経所見、ヒ素曝露量の検討から興味深い結果が見えてきました。神経所見については、10 ppbという低濃度ヒ素汚染水の摂取でも自覚的な神経症状が生じる可能性があり、50 ppbでは客観的な神経障害が生じる可能性を示しておりました。

宮崎県土呂久での検診の結果では、中枢神経系の障害も示唆されておりますが、ミャンマーでははっきりした所見はありませんでした。この2つの違いは、ミャンマーは低濃度、土呂久は高濃度曝露で、ミャンマーは現在進行形、土呂久は50年以上前の後遺症を見ているという大きな違いがあるからかもしれません。しかしながら、温痛覚を司る小径線維メインの末梢神経障害が目立つという共通した所見も存在しました。

JICAの活動は更に4年継続することが決まっております。国際的な交流を続けることにより、ミャンマーにも多くの友人ができ、自分自身の成長にもつながりました。神経内科の王道とはいえない研究テーマかもしれませんが、現在の地球上では2億人もの人々がヒ素汚染に曝されていると推測されています。近い将来には、土呂久とミャンマーでの知見が世界のヒ素中毒患者を診療する際の重要な基礎情報になると考えています。