W/WV

分類 ミュータント系(mutant strain)
名前 W/WV
説明 マウス第5染色体上の突然変異遺伝子(c-kit 欠損)にはこれまでに6種類の対立形質、W, W b, W j, W s, W v, W xがあることが知られている.これらの遺伝子はいずれも毛色、血球形成、生殖能力に関係しており、これらの遺伝子を2個持つマウスは全て白色毛黒目で不妊であり高度の貧血を示す.大部分の組み合わせでは生後2週間までに死亡するが、成熟動物の得られるW/W vが研究に使われている.このマウスはジャクソン研究所のE.S.Russel(1949)によってWB-W/+とC57BL/6-W v/+のF1として生産できることが報告された(我が国では日本エスエルシーが生産・供給している).
 現在までにヒトではWB-W/+とC57BL/6-W v/+マウスに相当する疾患は知られていない.Kitamuraら(1978)はW/W vマウスが、多能性血液幹細胞分化増殖因子(stem cell factor=c-kit ligand)に対するレセプター(c-kit receptor)に欠陥があり、肥満細胞、粘膜肥満細胞を欠損することを明らかにした.
造血幹細胞の低形成を示すW/W vマウスは感染防御能に欠陥があり、腸管内寄生虫に対する感受性が高く排除機能が悪い.またサイトメガロウイルスに高感受性を示す.W/W vマウスのこのような感染に対する高感受性は、正常マウスの骨髄細胞を移入することにより回復させることが出来る(名和, 1986).
画像説明
左:WB-W v/+(軽度貧血)、中前:W/W v(貧血・不妊)、右:C57BL/6-W/+(正常)、中後:C57BL/6(正常)
研究となる対象
血液研究:血球生産の機構の解明
免疫学研究:造血肝細胞からの各種血球系の分化増殖の調節と感染防御能の発現との関係
維持機関のデータベースへのリンク  Jaxon Lab.
維持研究機関 宮崎医科大学附属動物実験施設
参考文献 1. Russell ES, (1949) Analysis of pleiotropism of the W-locus in the mouse: relationship between the sffects of W and W V substitution on hair pigmentation and on erythrocytes. Genetics, 34:708-723.
2. Russell ES, Bernstein SE, (1966) Blood and blood formation. <i>In</i> Green EL(ed), Biology of the laboratory mouse, McGraw-Hill, New York, 351-372.
3. Kitamura Y, Go S, Hatanaka K (1978) Decrease of mast cells in W/W Vmice and their increase by bone marrow transplantation. Blood, 52:447-.
4. 北村幸彦(1979) 遺伝性貧血症(W/W V Sl/Sl d). 疾患モデル動物ハンドブック(川俣他編集)、医歯薬出版、東京、7-10.
4. 名和行文 (1986) W/W V マウスの特性と維持.第3回九州実験動物研究会報.