周産期臨床研究のご紹介

胎児の脳発達と生活リズム

お産のトラブルを解決しながら、次世代を産み出す手伝いをするのが産婦人科医の仕事。私が働き始めたころは、赤ちゃんが助かるかどうかの境目は妊娠28週とされていたが、周産期医療は前進し、今では22週で助かる例が増えた。

一般的に、胎児の心臓は24~25週、肺は28週くらいで、子宮外で生活するというストレスに耐えられるようになる。最後に成熟するのが脳。血液や酸素の供給機能ができてから成熟するという過程は、実に自然な流れである。

胎児は子宮内で手足を動かすだけでなく、呼吸運動もする。が、やめたりもする。これらの動きは最初はバラバラだが、だんだん脳の機能と連動してくる。これが「リズムの形成」と言われる。

胎児期と生後の生体リズムは、分娩(ぶんべん)を機にリセットされると言われてきた。しかし、最近では何らかの影響があるのではないかという観点で研究が始められている。睡眠障害や社会力の低下などは、生体リズムが壊れていることに関連するとも言われるが、それが実は胎児期から始まっているのではないか、という視点である。
ヤギの胎児を用いた実験では、レム睡眠、ノンレム睡眠時の脳波と眼球運動、心拍数、血圧などが連動し、胎児がリズムをつくり上げている様子が分かる。室内を暗くすると、母ヤギも体内の子ヤギもメラトニン(睡眠や覚せいに関係するホルモン)が上がり、明るくすると下がる。母子の相関関係を物語り、親が過ごす環境が胎児に影響を与えていることが分かる。
子供の社会力を研究する心理学や教育学の分野から、「胎児期からの脳を科学しよう」というアプローチは盛んになっており、産婦人科医側の意識も高まってきている。

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