2006年度 ソンクラ大学留学報告記

医学科6年 Y.S

 このたび、PSUのDr.ティーラのご厚意と生理学の丸山先生のご尽力により、正規枠外でPSUに短期留学させていただきました。8月2日から11日は内科で感染症科をまわり、12日から25日は小児科をまわりました。

 感染症科では毎日Dr.パンティップの回診に同行しました。回診は他科のコンサルトをうけて病院中をまわるものでした。レジデント2年目のDr.タムが病歴を英語で読み上げ、データなどを見た上でDr.パンティップが処方するというものでした。薬学部フェローのパム先生と薬学部レジデントの2名の女性も回診に同行しました。学生は我々二人だけでした(何回かPSUの5年生2名も同行しました。)

 抗生剤の理論は微生物学の講義で学びましたが、用量・用法などの臨床的なことは学んでいなかったので、議論にほとんどついていけませんでした。我々がほとんどわかっていないことを知りつつも英語で議論してくれて、ありがたく思いつつも恥ずかしい気持ちの方が大きかったです。

 また、外来にも2回つきました。PSUの学生は、病棟・外来を平行してやる我々とは違い、外来2週間、病棟2週間といった形で分けてやっていました。新患の病歴をとり、身体診察をした上でDr.パンティップが診察をしていました。驚いたのは内科医なのに慢性頭痛の患者の眼底をみて緑内障と診断したことでした。急性の頭痛ならば緑内障は鑑別診断として思い浮かびますが、慢性の頭痛で緑内障を考えて眼底を診察し、かつ自信を持って緑内障と診断したので感心しました。

 それ以外には、我々2人とPSUの5年生2人に抗生剤についてと寄生虫についての講義をしてもらいました。その5年生の1人は、我々よりも英語が流暢でない数少ない 5年生の1人でしたが、医学的なことになるとペラペラ話すので驚きました。これは次にまわった小児科でも経験しました。PSUの学生はたいてい我々よりも英語が話せますが、あまり英語が得意でない学生でも患者のプレゼンテーションをするときはうまく話します。そのような教育を受けているのでしょうか?

 あと、感染症科では微生物学者のPee-Yai(Peeは敬称、Yaiはあだ名)にお世話になりました。放課後に顕微鏡を見ながら細菌や寄生虫の虫卵について指導してくれました。また食事にも何度も連れて行ってもらい、実家のトランク県(ソンクラから西にバスで2、3時間)にも連れて行ってもらいました。

 感染症科では、学生と接する機会が少なく、ドクターの議論は難しく、厳しい日々を送りました。次の小児科には学生が常に数名まわっているので、いろいろ助けてもらえると思い、期待していきました。実際、いろいろ助けてもらい本当に助かったのですが、PSUの学生の方がはるかに優秀なので悔しさを味わうことにもなりました。

 小児科は毎朝7時30分くらいからレジデントラウンドがあり、9時くらいからスタッフラウンドがありました。学生はそれよりも早く来て自分の患者を見てまわります。我々のポリクリはほとんどの科で担当患者が1人だけでしたが、PSUは違いました。5ブロックくらいある小児科の病棟のうち1ブロックにだけ学生がまわっていたのですが、1ブロックに患者は15人くらいいます。6年生は1人しかいなかったので1人で15人みます。サマリーも書くし、処方もします。5年生は2,3人まわっていたので分担になりますが、それでも5人から8人患者をもっています。多くの患者を自分でもつし、日本よりも侵襲的な手技が認められているし、毎朝レジデントの回診につき、スタッフの回診につき、また夕方にレジデントの回診につき、しかも患者が15人と少ないですから回診も儀式的ではなく教育的なものとなり、非常に有意義な臨床実習だと感じました。またPSUの学生は議論を好みます。この症状から何が考えられる? こういうときはどういう検査をする? 治療は? など質問をしてきます。議論好きな私も臨床知識の不足と英語の不自由さのためたじたじでした。英会話や臨床手技ではとうていかなわないであろうと予測していましたが、臨床に即した知識という面でも歯が立たず、非常に悔しい思いをしました。

 スタッフラウンドでは教授たち(途中でスタッフの配置換えがあったり、私がブロックを移動したりしたので、2週間で2人の教授と1人の講師?につきました)が丁寧に知識面、診察面で指導してくれ、医療者としての心構えといったものも話してくれました。毎日宿題も出してもらい、それを放課後図書館で調べて次の日に報告するということもやりました。

 小児科では血液疾患の教授であるDrヴィシャイが我々の指導教官をしてくれたのですが、Drヴィシャイは毎日1時間、私のためだけの回診をしてくれました。これにより考え方・診察法などを徹底的に学びました。また外来にも2回つき、サラセミアの患者の診察をさせてもらいました。血液標本の診断指導もありましたし、パワーポイントを使った講義も2つしてくれました。内容はサラセミアと東南アジア卵状赤血球症についてでした。また助教授の先生がデング熱についての講義をしてくれました。

 今回のPSUでの実習は私の魂を震撼させるものでした。悔しい思いを多くしたので、今後さらに努力しようと決意しました。また知識面、診察面でも多くを学びました。このような有意義な実習をすることができたのは、PSUの感染症科、小児科のスタッフ、レジデント、学生たちのおかげです。また、特別に受け入れてくださったDr ティーラ、交渉をして下さった丸山先生、PSUの事務の方々にこの場を借りてお礼をいたします。それから3週間半の期間を通して、3月に宮崎にきたBerm,Tang,Hongがお世話をしてくれましたし、新しく知り合った5年生たちも親切にしてくれました。彼女たちにも感謝しています。