2005年にクリニカルクラークシップの一環として、4週間の期間でタイのプリンス・オブ・ソンクラ大学と単位互換を伴う学生交換を始めました。留学報告記から年度毎に抜粋して掲載しています。2009年度からは看護学科との交換プログラムも開始しました。2008年度には試行的に看護学科の学生が病院実習を受けました。


日々の研修の細かな報告内容は、以下でもご覧いただけます。

2008年度ソンクラ大学留学報告記


「PSU exchange program 報告書」

医学科6年 T.O

僕は平成20年5月から6月までの約1ヶ月間、タイ王国南部のPrince of Songkla University (PSU) に留学させていただきました。僕にとってはじめての留学経験で、貴重な機会を与えて頂いたと感謝しています。今後、PSUへ行かれる方のためにも僕の感じたことや現地の情報などを書こうと思います。

・ソンクラについて

タイ王国南部の中心都市で、バンコクから国内線で1時間半位。国内線はAsia Airwayというのを使えばバンコクでの乗り換えで別の空港に移動しなくてよく、安いです。が日本では多分予約できず、バンコク空港で予約できます。南部は過激なムスリムも多く、危険といわれているがソンクラは普通に暮らしている分には安全だと思いました。もっと南のマレーシア国境では多少の危険はあるらしいが、僕らは基本的に狙われないみたいです。PSUの学生やドクターと一緒に行動していれば、大丈夫です。

・PSUでの生活について

ハジャイ空港に着いたら、PSUの職員(Peter?)が迎えに来てくれます。4, 5 , 6月は暑く半袖で充分です。キャンパスは広大で、セブンイレブン、洗濯サービス、カフェ、フードコート、マーケット、インターネット、湖(ランニングもできる)となんでもあり、キャンパスの横にデパートもあって一人でも何も困りません。が、毎晩PSUの学生などがかまってくれました。特に日本に来たBasやJipやBeなどにはレジデントで忙しいのに良くしてもらいました。これから日本に来る留学生にも良くしてあげてほしいです。学生以外でもPeter, Dr. Pi-yai, Dr. Iwatanaなどとも何度か食事に行き、魅力のある方が多く、考え方や、日本とタイの医療の違いなども分かってよい経験になりました。実習は9時から5時という感じで、皆英語が話せます。寮や食事も特に困ったことはありませんでした。お金は9万円を換金しました。平日は朝、昼、夜食で300baht位、週末はファンガ島、プーケット、バンコクと旅行しましたがPSUの学生や先生と一緒だったのでホテル代などかなり安かったです。あと家族や部活にお土産と自分にデジカメを買ってちょうどでした。ガイドブックを見ておけば、タクシーなどの相場や簡単なタイ語もあって便利だと思います。

・実習について

2週間ずつの選択でInfectious Diseaseと Emergencyを選択しました。PediatricsやOB-GY、Orthopedics、Radiology、Hepatologyも選択出来ます。どこも良い経験ができると思いますが、ID、Pediatrics、Orthopedics、Radiologyなどは特に教授が熱心な方でお勧めです、タイの学生は医学を英語で勉強していて、6年生というと僕らもそれなりにみなされます。まずIDをまわったのですが、Prof..Kationsangにつきました。毎日3時間程度レジデントや学生と5人くらいで病院中を回診しますが、

What is the differential diagnosis of seizure?

2 weeks cough. Shadow in upper lobe of lung. What do you think?

By a cobra toxin, a symptom appears around an eye first. Why? And differential diagnosis?

Do you know side effect of 3TC and d4T? A patient with anti-HIV drugs will die by what?

How to use AmpB meningitis?

など、どんどん質問されます。患者さんはunderlying diseaseにTBやHIV positiveが多く、感染症自体も日本より複雑でNocardiaやHistoplasmosis, ESBLなどみたことのないものも多いです。学生もantibioticsについて詳しいです。特に単語の意味が分からないと討論が進まず、辞書を引いてもいられないので最初は迷惑をかけました。医学用語を英語でなんと言うか今から調べておけば有意義な実習になると思います。Doctorもresidentも親切なので素直に頑張ったらいいと思います。朝は8時からmorning conferenceに参加したりして5時くらいに帰っていました。Conferenceなども殆ど英語でしてくれるので、何か発言しないとと思いながら殆どできませんでしたが・・・PSUのdontorやresidentも僕らを良く見ていました。せっかくタイまで行くのだから、教えてもらうだけのお客さんじゃなくて良い質問をして、PSUのresident達にもいい刺激を与えられるようにするのがexchange programの意味なのだろうと思います。僕は仲の良いresidnet達が頑張っているのを見てよい刺激を受けました。Professorもお年ですがタフで、よく仕事をされる方でした。感染症の知識もそうですが、それ以上にいろいろなことを感じることができた2週間でした。

 次はERを2週間でした。IDともまた違う雰囲気で、extern(6年生!)がdoctorとして患者さんを初診、検査、治療(簡単なopeや処方)、consultして、あとはresident数人で一日200人位の患者さんを受け持っていました。タイの医学生の臨床能力は高いです。4年生位からbed sideに出て5年生では虫垂炎の手術をしたり、内科でも患者さんを数人受け持ち処方や検査もオーダーしています。Stuffはたまに来てアドバイスをする位です。ERではIDの様に、doctorが教育するという雰囲気があまりない代わりにとても実践的でした。また患者さんとの関係も日本のように問題となることが少ないのか、僕たちも縫合や胃管挿入、digital blockや創洗浄などをやらせて貰いました。Extern達とは忙しくないときは同年代として普通におしゃべりしているのですが、難しい患者さんなどは来たときはdoctorとして一人前に働いている姿が印象的でした。そしてたまには、今のでいいの?というようなシーンも見かけました。同級生なんだな、と思い出しました。Motor-Cycle-Accident chronic heart failure, dyspenia, epilepsy, tremor, vertigo, schizophrenia, asthma attack, croup, ectopic pregnancy…ERではたくさんの患者さんを見ることができます。タイではfamily doctorが少なく外来のかわりに初診でERに来る患者さんも多いようです。TBやHIVも多くの患者さんが持っている可能性があり、またタイの医療制度である30baht systemでは区域外の適切な病院を受診できず、たらいまわしになっている患者さんなど、タイの医療の現実も良く見れた気がします。タイと日本の医療の違いを感じたり、診察や手技を自分よりうまくこなすexternを見てIDとはまた違った刺激を受けた気がします。

 今回PSUで過ごしていて、タイの学生やresident、doctorたちはタフで明るく、親切だなという印象を受けました。魅力的なresidentやdoctorに多く出会え、また日本とは異なったタイという国の医療を見たことで、より日本の医師や医療を客観的に見ることができるようになった気がします。僕は日本の医療やそれを支えている医師にもっと自信を持つようになりました。一ヶ月間、英語で暮らしたことも自信になりましたし、次はアメリカやヨーロッパなどに留学してみたいという気持ちがしています。やはり世界中の人とコミュニケーションをとり、情報を交換するための言語は英語だと思いますし、それにより視野が広くなり自分が良く見えようになることもあると思います。今回、このような機会を与えてくださった池ノ上先生や丸山先生、玉田先生、横山先生、菅沼先生ほか多くの関係者の方々に感謝しています。今後、宮崎大学の学生がこのexchange programをもっと良いものにしていって欲しいと思います。頑張ってください!ありがとうございました!




「プリンスオブソンクラ大学での実習報告」

医学科6年 T.E

 タイでの短期留学から、早いものでもう半年が経とうとしています。年間で最も暑い、4月にソンクラ大学での実習に行ってきました。それはそれは、とても暑い一ヶ月でした。国民の休日がとても多い月でしたので、実際の実習期間は4週間よりもだいぶ少なかったのですが、多くの人に出会い、多くのことを学んだ素敵な一ヶ月でした。

 4月には私たちの学年のEMPメンバーの中から女子の学生が4人タイに行きました。実習の日取りが決まった年末頃から診療科の希望を提出し、出発の二月ほど前からぼんやりながら予定を立て始め、一月前くらいには飛行機を手配し、実習前後の休暇を利用してタイの北部や他の国への旅行を計画したりしていました。出発がせまった3月くらいからどんなふうに過ごしたか、思い出してみます。

〈出発一ヶ月前〉

まず出発日決め、飛行機の予約をする。

同じ時期にソンクラ大学に留学する学生は大体同じ時間にハジャイ空港に到着するように調整して、学務課の酒井さんを通してお迎えに来てくれる留学生担当者(ピーターさん)に便名と到着時刻を連絡してもらいました。航空券の値段は航空会社によってマチマチでしたが、個人の好みでネット検索や直接旅行会社に問い合わせて選びました。出発日を実習開始の5日ほど前にして、宮崎に留学していたソンクラ大学の友人に会ったり、タイ北部の観光地パタヤに出かけることにしました。

予防接種をする。

実は私は学校で指定されていた予防接種以外は、何もせずに行きました。A型肝炎の予防接種を半数の学生が受けていましたから、心配な人は受けておいた方が安心してタイの食文化を楽しめると思います。二度接種が好ましいようなので、もう少し前から準備しておいたほうが無難かもしれません。もちろん、ゆっくり慣らせば、一度もお腹を壊さずに帰国することも可能でしたが、、

〈出発2週間前〉

実習予定の診療科について勉強する。

私はER、民間病院(シチョン病院)、小児科での実習が決まっていたので、ERと小児科で学んだことをさらっとおさらいしてみました。ですが、実際の実習をしてみて役立ったことは、試験に出るような細かい知識ではなく、最も一般的な抗生物質や、ショックに対する一時的な処置、小児特有の生理的な特徴などでした。これについてはまた後ほど。

〈出発一週間前〉

荷物の準備をする。

一ヶ月の滞在だからと、あれこれ必要なものをたくさん買い込んできて、大きなスーツケースに詰め始めます。教科書類は重いから一緒に行く人たちでシェアしたり、お世話になるであろう方たちへのお土産や、大量の生活用品も準備万端整えました。

が、実際には徒歩5分でいけるスーパー(テスコ)でたいていの生活用品(日本食まで!)は揃います。しかも、日本より安い。航空会社によっては荷物の重さに応じてTAXを追加するところもあるので、重くて場所をとるお風呂グッズやかさばるコットン・ティッシュ類は持っていかないほうが得策です。

逆にこれは準備しておいて良かったというものはセッションのために宮崎に来てくださった先生や、タイでおうちに招いてくださった先生、一ヶ月お世話をしてくれたピーターさんへの少しいいお土産。タイではほんとに親切にお世話をしてもらうことになると思うのでいつでもお礼ができるようにもっていくといいと思います。高価なものではなくてもいいから、粋なものを。

〈出発当日〉

パスポートと時間の余裕をもって。

出発当日には、何かと手間取るので時間に余裕を持って空港に到着するようにしました。ソンクラ大学から、一人6000バーツのお小遣いがもらえます。それで食費はほとんど事足りますが、週末に旅行に行きたい人やたくさん買い物がしたいという人は前もってガイドブックなど読んでいくらくらい換金すればよいか調べておいたほうがいいかもしれません。でも、日本で換金するととてもレートが悪いこともあるので、タイの空港でしても、行く町々で銀行を見つけてキャッシュカードで引き落としてもいいと思います。帰国までに使った金額は個人でバラバラですが、だいたい5万円から10万円くらいではないでしょうか。いずれにせよ大金を持ち歩くのは少し危険なので、キャッシングできるカードがあるととても便利です。

忘れ物がないかあれこれ確認して、出発しました。

到着した日には留学生担当者のピーターさんやスタッフの方が夜ご飯に招いてくれて、寮まで送り届けてくれました。実習開始の前々日にハジャイに到着した私たちは翌日に足りない生活用品をすぐそばのスーパーまで買いに行ったり、病院内の学食で食事をしてみたり、初めてのソンクラ大学を探検して一日を過ごしました。こんなふうにしてタイでの生活が始まりました。

前置きとは思えないほど長くなりましたが、ここからが本題の実習についてです。

〈1週目:ER〉

ソンクラ大学のERはとても忙しく、朝から数人のレジデントとExtern(6年生)が慌しく働いています。Externは日本でいう研修医のような存在で、学生でありながら初診も処置もバリバリこなしています。週に何度か朝のカンファレンス、午後のレクチャーがあり、時に英語で、タイ語の場合でも最寄のドクターが訳してくれます。

ERで出会った症例をいくつか挙げてみます。

交通外傷(多い!)、呼吸困難、喘息発作、胸痛、めまい、敗血症、肝性脳症、肝不全、皮膚潰瘍、腹痛、下血、破傷風、マラリア、結核疑い、レプトスピラ、ハチ刺され、食物アレルギー、プールで溺れ呼吸停止で運ばれてきた子供など、多岐にわたります。

日本との違いも大きく前もって勉強しておけというのは難しいですが、、

知らなくて恥ずかしかったこともしくは知っていても全く英語で表現できなかったことをいくつか。

ペニシリンなどの最も代表的な抗生物質の使い方、基本的な症候(発熱、胸痛、呼吸困難、意識障害、下腹部通、下血など)の鑑別疾患、胸服部・四肢(骨折の症例で)のX線の所見の説明、心電図所見の説明、など。

これはどの科でも、民間病院でも共通することですが、みんなとても親切で先生方も若い先生が多いのでとても親しみがわきやすい環境でした。熱心に教えてくださる先生、ご飯や休憩に誘ってくれてフレンドリーな先生もおられました。でも、学生を中心にシャイなタイ人は多いので、さらに英語に自信がない人が多いので、1対1になったときにすかさず名前を聞き出し、簡単な英語でコミュニケーションをはかるとその後質問しやすくなります。初日はとにかくいろんな人の前で自己紹介をし、いろんな人に自己紹介されるので必死で名前と顔や雰囲気の特徴をノートにメモったりしました。○○先生:メガネ・変な笑い方。○○ちゃん:パーマ・声が高い。とか。

自分からバンバン質問し、処置のあるところをのぞきに行っていると、いつの間にか自然と処置を手伝わせてくれたりX線写真の所見を説明してくれていたり、最近のtopicを聞かせてくれたりしています。とにかく相手に慣れられるまで、つきまとう頑張りが大切かもしれません。

〈2週目:シチョン病院〉

ハジャイから3時間以上かけて北部のナコンシータマラーという町に移動しました。この病院のスタッフの方々も熱烈歓迎をしてくださり、たった2日間の実習の間でしたがとても親しくお付き合いしていただきました。

外科・ER・home health care・タイマッサージ療法など幅広い場面を見せていただきました。出会った症例はソンクラ大学で見るものにくらべcommon diseaseが多く、特にhome health careやタイマッサージ療法の実習を通して地域に根ざした医療を感じることができました。とはいえ、日本ではあまり見ることのない結核患者やHIV感染患者も多く、その治療方法や対処法を見れたことはとても貴重な体験でした。また手術に参加させていただき、日本とは全く異なる手法で清潔操作が行われていたことも実際にタイでの実習をしてならではの発見でした。

〈3・4週目:小児科〉

小児科では宮崎にセッションにきてくださったフィーシャイ先生やマティニ先生にお会いすることができました。毎日のようにマンツーマンでteaching roundをしていただいたり、レクチャーに参加させていただいたりしました。

教授・助教授のマンツーマンラウンドとレクチャー。

フィーシャイ先生は週に2回マンツーマンで自分で興味をもった入院患者について質問し、教えてもらうteaching round、週に一度の血液標本の所見検討会をすべて英語で行ってくださいました。またサラセミアやデング熱についてのレクチャーもあり、本当に熱心に指導してくださいました。またマティニ先生は5年生の学生を対象としたレクチャーに招いてくださり、大勢の学生の前で意見を求められたりするシーンもありました。タイの学生たちのディスカッションはとても活発で、知識も応用力も備えているなという感じでした。

小児科で出会った血液疾患の子供たち。

フィーシャイ先生が有名な血液疾患の専門家であることもあり、外来には多くの血液疾患の子供たちがやってきていました。サラセミア、白血病、SAO(South Asia Ovalocytosis)、遺伝性球状赤血球症、急性ITP(突発性血小板減少性紫斑病)、デング熱など。

サラセミア独特の肌の色や顔貌など実際に多くの症例で共通する所見があり、とても印象的でした。

4週間の実習の期間中いつもいつも誰かがお世話をしてくれるわけではないので、それなりにポツンと孤独を感じてしまうことや、ただ突っ立っているだけ、といった状況になることもあるかもしれません。ですが、それはしょうがないことなので自分から積極的に関わっていくのが一番だなと思いました。実際に日本で見ることができない症例や全く違う対処をしている場面など興味をそそられるシーンはたくさんあります。足りない知識を一番補ってくれるものは、もしかしたら知識欲そのものかも、なんて思っていました。

〈病院の外の生活〉

ひたすら温かかったタイの友達。

実習が夜遅くまで長引くことは少なく、夕方以降は自由な時間がたっぷりありました。タイ人の学生は本当に親切で優しく、温かいです。ご飯や飲み、お祭りなどのイベントに連れて行ってくれたり、週末の旅行をプランニングしてくれたり、いろんなシーンでサポートしてくれました。右も左もわからぬ私たちが何不自由なく暮らせたのも彼らのおかげでした。

フェアウェルパーティーで送り出してもらい、ソンクラを出発しました。



「ソンクラ大学留学について」

医学科6年 M.I

 タイから帰ってきて3週間も経ちましたが、宮崎でもやたらとタイ料理を口にする機会が多く、なかなか帰ってきたという実感が沸きません。タイでの一ヶ月をレポートするにあたって、病棟での出来事などは恐らく他のメンバーが書くことを期待して、僕はタイでの生活で便利だった事、不便だった事などを中心に書きたいと思います。これからタイに行く人の役に立てば幸いです。

<タイ語について>

 賛否両論あるかとは思いますが、外国で現地の人々との距離を縮めるにはやはりその国の言葉を片言でもいいので喋る事だと思います。僕は旅行会社のお姉さんがくれたポケットサイズのタイ語の本をいつもポケットに入れて持ち歩いていました。しかし病院では先生や学生と話す内容が専門的なことなので英語でしか話せませず、結局覚えたタイ語は放課後使うものばかりでした。覚えといて便利なのは「これ何?」「今何時?」などの疑問文や、食卓で使う形容詞などだと思います。タイ語の本を開いても日本語で表記するのが難しい発音が多く、覚えるには友達に話してみて修正してもらう必要がありました。一番使いそうな「日本、日本人、日本語」などを意味する「イープン」は特に難しく何度教えてもらっても結局正しく発音できませんでした。

<食事について>

 タイに来て2週間くらい、朝ごはんは「ママー」という即席麺ばかりでした。安い(一食5バーツ)し、美味しいし、楽だし。なんといっても調理器具が無いのでこれしか作れないというのが一番の理由です。朝早く起きるのに慣れて、余裕もできた後半は病院の地下1階にあるカフェテリアで朝ごはんを食べました。一食だいたい20バーツとママーに比べたら高いですが、それでも日本で買うコンビニおにぎりよりはるかに安くてボリュームもあります。お店もたくさんあるので飽きる事はないと思います。僕は朝ごはんを食べないと午前中は集中できないので、タイの学生のほとんどが朝ごはんを食べないと聞いたときにはとても驚きました。

昼ごはんは、これまた地下1階のカフェテリア。「これ食べた事ある?」と学生が次から次に料理をお裾分けしてくれたので、美味しいメニューを探すのに苦労はしませんでした。

 晩ごはんは大学の外に学生やドクターが連れてってくれました。タイには華僑の人が多いせいか、中華も充実していて美味しいです。一番食べたのはタイ料理で、みんなで何皿も頼んで、満腹になって、一人せいぜい100バーツくらいでした。辛い料理に最初のうちはお腹がゆるむことがありますが、そのうち慣れるので安心してください。

<交通手段>

 ハジャイでの交通手段は主に友達の車、トゥクトゥク、バイクタクシーです。一番安全で、安くて、便利なのは友達の車です。トゥクトゥクは軽トラの荷台にベンチと屋根がついた感じの乗り物で、こっちの人数と交渉しだいでは一人20バーツくらいで市街地まで行けます。バイクタクシーは二人乗りで、市街地までの相場は40バーツです。道をぶらぶら歩いているとトゥクトゥクの運転手が引っ切り無しに声をかけてきますが、優柔不断な態度をとるとお互い困るので、必要ないときはきっぱり断りましょう。

<買い物>

 市街地に行けばデパートや露店でいろいろな物が買えます。困った事に、日本人は定価の何倍もの値段で売りつけられる事が多々あります。タイ人の友達が一緒にいるときは彼らに相場を聞いたり、タイ語で交渉をしてもらうのが手っ取り早いです。僕は友達が忙しいときに一人で市街地に出たりしましたが、同じ商品を扱う露店を何軒か回って、その商品の最安値を探りました。「もっと安くならない?」という質問に対して返ってくる値段は交渉の終わりではなく始まりです。

 日本の知り合いへのお土産を買うのは時々開かれるナイトマーケットが便利です。規模はかなり大きく、全部の店をじっくり見て回ると何時間かかるか分かりません。売り物の多くは女の子向けで、アクセサリーを始めいろいろな物が耳を疑うくらい安い値段で手に入ります。食べ物の屋台も出ていて、つい目移りしてしまうのですが、ナイトマーケットはスリが多いらしいので、注意しましょう。

<洗濯>

 PSUには洗濯をしてくれる人たちがいます。みんな個人的に契約をしていて、1日1回洗濯物を回収しに来て、2〜3日後にアイロンをかけて返してくれます。友達の紹介で僕がお願いした人は一ヶ月400バーツでした。しかし毎日大量の汗をかいて白衣を変えていると、やりくりができなくなってくるので、白衣だけは自分で洗って干しました。それでも洗濯係の人には10回くらいお世話になったので、高くはなかったと思います。

<友達>

 今年PSUに留学したメンバーの中で、僕だけ1人で留学しました。現地の一ヶ月を寂しくなることもなく楽しく過ごせたのは、タイ人の友達のお陰です。4年の夏に宮崎に来たJameやBeに始まり、5年の冬に来たBasまで、宮崎でお世話をタイ人の友達はすでにドクターになっていて忙しいのに、いつも面倒を見てくれました。バスで5時間かかる所からわざわざ遊びに来てくれたり、毎晩のように御飯に連れて行ってくれたり、たまに当直で忙しいときは他の知り合いの都合を聞いてくれたり、とてもお世話になりました。現地の学生は、日本でEMPの学生が留学生を持て成すようには持て成してくれません。ですから、現地で助けてくれるのは日本に興味のある学生か、かつて宮崎に来て仲良くなった友達だけと言っても過言ではありません。宮崎に来たタイ人の学生は大事にしましょう。タイに行ったときにいろいろお世話をしてくれる以外にも良いことはたくさんあると思います。

 全体の感想として、若いときにタイに留学する機会があってよかったです。英語で医学を勉強し、タイの優秀な学生からモチベーションを分けてもらったのも今回の留学の大きな収穫でしたが、それ以上に一ヶ月の生活を通して僅かではありますが自分の視野を広げることができた事が大きかったと思います。外国での生活は「郷に入っては郷に従え」に尽きるのではないでしょうか。これからタイに留学する人には是非実践してもらいたいものです。



「ソンクラ留学報告書」

医学科6年 A.N

 平成20年4月7日から5月2日まで、タイのプリンス・オブ・ソンクラ大学で実習しました。この先留学することになる後輩に向けて、実際的な事を中心に報告しようと思います。この留学が実現した裏には英語科の先生方をはじめ学務課、総務課の方々、受け入れに協力してくれた学生のみなさん、さらに時代をさかのぼって宮崎大学とソンクラ大学の関係を築いてきてくださった先生方、本当にたくさんの方々のご尽力がありました。平成17年度に4人の枠で最初の留学が実現して以来、現在の8人に拡大されたのも、これまでに留学された先輩方がソンクラで立派な活躍をしてくださったからです。これから留学するみなさんは下級生のころからEMPに参加して、他の同級生が遊んでいる間にも努力をして留学を勝ち取ったかもしれませんが、どうかその事を忘れないでくださいね。そしてこの交換留学プログラムがこの先もたくさんのEMPメンバーの貴重な体験となることを願います。

◎準備編

いつ行くか ?今年から留学時期が選べるようになりました。来年度以降どうなるかはわかりませんが、もし4月から7月の間で自由に選べる場合、いつ行くべきでしょうか。特に事情がなければ4月がよいと私は思います。4月はタイで最も暑い時期ですが、日程的には春休みとGWの間に挟まれていて準備をしたり観光したりする余裕があります。4月にはソンクラーンとよばれるタイの旧正月があるのでお祭りを楽しむもよし、休暇を利用してリゾート三昧もよしです。日本では6年生が一気に受験モードに突入していますが、4月をタイで過ごしていれば、自分が6年生になったことに気付かずに済みます。帰ってきてからその現実に直面すればよいのです。6月、7月になるとマッチングで病院まわりをしなければいけなかったりします。

よく勘違いしている人がいるのですが、ソンクラ留学もクリクラの一つなので原則的に現地集合・現地解散です。ハジャイ空港からの送迎はありますが、大学が宮崎からのツアーを組んでくれるわけでも、飛行機代を出してくれるわけでもありません。なので留学が決まったらまずやらなければならないことは航空券の手配です。その前に…「地球の歩き方」を入手しましょう。トラベルストーリー、ロンプラ、何でもいいですが。え〜自分でチケットとるの?と思うかもしれませんが、自分で手配できるということは前後に帰省したり旅行したり自由に組めるということです。もし同じ日程で同じ空港から出発するメンバーがいるのなら一緒に手配してもいいですね。人数が集まれば旅行会社と交渉して割引になるかもしれません。4月に行くのなら年が明けたくらいからチケットを探し始めるといいと思います。私の場合は3月のはじめに購入をしました。直前になると満席になったり安い便がなくなったりするので早めに手配しましょう。いろいろな方法があると思いますが、ネットで格安航空券を検索するのが一番てっとり早いです。日本からハジャイまでの直行便は多分ないので、バンコクで乗り継ぐのが王道でしょう。ハジャイまでセットになっている航空券もあるかもしれませんが私は別々にとりました。成田⇔バンコクはタイ航空、ユナイテッド、ノースウェスト、シンガポールなど各航空会社が直行便を出しています。関空や福岡からも出ているはずです。チャイナの北京経由、アシアナのソウル経由など、経由便だと直行便よりも安くなることがあるし、帰りに寄り道する楽しみもあるので考えてみる価値はあります。値段は30日FIXであれば3万円台から。燃油サーチャージが+2万円くらいなので諸経費を含め5万円台で行けることになります。しかし30日を越えたとたんに値段が跳ね上がります。30日というのはクリクラだけで4週間ソンクラにいるのでかなりぎりぎりな日程になります。バンコクあたりでちょっとでも観光をしてきたい人は少しお金はかかりますが余裕のある日程の航空券をとるとよいでしょう。私は結局バンコクまではノースウェスト航空の45日FIXで69, 640円、バンコクからハジャイまではタイ航空で5, 000バーツ(16,713)。往復、諸経費込み。ちなみにハジャイまでの国内線はローカル航空会社がかなり格安のチケットを販売しています。エア・アジア、ノック・エア、ワン・ツー・ゴーなどどれも日本からオンライン予約可能です。気をつけるべき点は国際線の到着空港と国内線の出発空港が同じであるかどうかです。バンコクの国際線はほとんどが新しいスワナンプーム空港に到着しますが、タイ航空の国内線は古い方のドンムアン空港から出発します。スワナンプームからドンムアンまでは車で1時間弱ですが、空港で迷ったりバスを待ったりしている時間もあるので乗り継ぎには3時間くらいみておいた方がいいです。私は深夜に到着の便だったので空港の近くで一泊しました。ホテルの予約はしていなかったので到着後に空港のカウンターで探しました。ドンムアンまでは翌日スワナンプーム空港からバン(乗り合いのミニバスみたいなもの)を利用しました。スワナンプーム空港は広くて、空港内のシャトルバスに乗って公共バスの乗り場を探したりと以外と手間取りました。慣れない人はスワナンプームから出発する国内線を手配した方が無難かもしれません。ドンムアンまでのバンの料金は一人45バーツ(150円)でしたが、スーツケースがでかいという理由でさらに45バーツ請求されました。何か釈然としない気持ちになりましたが、成田→羽田のリムジンバスで3000円もとられたことを考えると300円くらいまぁいいかと納得。

現地までの交通手段を確保したら次はVISA。滞在が30日以内なら必要ありませんが30日を越える場合は必ず事前に取得しましょう。詳しくは大使館のHPを見てください。東京に行く用事がない人には郵送申請がおすすめです。直接大使館に行ったら翌日に発行してもらえます。料金は4500円。3月中に手配しましょう。タイの滞在がトータルで30日を超える場合でも30日以内に一度隣国に出国すれば必要ありません。私は入国後30日以内にバンコクからカンボジアに出国し、1週間ほど旅行して戻ってきてからバンコクでのんびりしていました。ソンクラからだったらマレーシアやシンガポールにも近いです。

ソンクラで何科を選択するかは自分の興味と先輩たちの話をきいて決めるといいです。これまでの先輩方の報告書を読むとだいぶイメージがつかめると思います。だいたいどの科にいってもちゃんと面倒をみてくれるので大丈夫です。4週間全部ちがう科にするとソンクラーンの週は3日しかないということになってしまったりするので、地方の診療所に行く週を除いて二つの科を選ぶくらいがちょうどいいかもしれません。

予防接種について。ソンクラ大学には結核患者がままいるのでツ判くらいして自分の抗体を確認していってもよいかもしれません。万が一結核菌をもらって帰ってきて日本の病棟でバラまいたら大変ですし。個人的にはそれ以外特に必要ないかなと思います。私はどこに行くときも予防接種はしませんが、重篤な感染症にはかかったことがありません。それよりも生水は飲まないとか、生ものは食べないとか、蚊取り線香を焚くとか、基本的な予防が大切です。心配な方におすすめなのは厚生労働省が出している海外渡航者のための感染症情報http://www.forth.go.jp/です。どこに行くときに何をしていったらいいか、それぞれの予防接種の投与計画まで親切に書いてあります。

日本から持っていくべきものと持っていくべきでないものについて。お金をいくら持っていくべきかは悩みどころだと思います。生活費として大学から一日250バーツ(800円くらい)、1ヶ月分で6500バーツ(2万円くらい)が最初の週に支給されます。食事は病院のフードコートや近くの屋台で食べれば一食30バーツくらいだし、先生や学生がおごってくれることも多いので、1ヶ月の生活費としては余るくらいです。私はソンクラにいる間に2回旅行をして、ハジャイに行く前にバンコクに1泊して、それなりに買い物もしましたが、1ヶ月で使ったお金は成田で換金した2万円と大学からの支給のみでした。つまりどこにも旅行をするつもりがなく、買い物もするつもりがないのなら、大学からの支給のみでむしろ余るくらいだということです。日本にいる間にバーツやドルを準備する必要はなく、日本円を持っていって現地で換金するのが良いと思います(成田で換金するとレートが悪いのでスワナンプームでの換金をおすすめします)。心配性な人はトラベラーズチェックにして持っていってもよいですが、どこでも使えるわけではないし現金に換金する時に手数料をとられることを考えるとそんなに高額でないかぎりあまりメリットはありません。クレジットカードは一枚あると便利です。現金を持ち歩かなくていいし、飛行機のチケットがネットで買えたりホテルの予約ができたりします。現地で予期せぬ出費があってもキャッシングができれば問題なし。大学から近い大型スーパー「テスコ・ロータス」でもカードが使えます。

荷物は少ないに越したことはありません。航空会社によりますがだいたい30kgを超えると超過手数料(数万円)を取られます。私の場合シャンプーは絶対マシェリじゃないと嫌だし、QBもやりたいし、白衣も毎日替えたかったので相当な荷物になりました。手違いで超過手数料はとられなかったものの、帰りにカンボジアに寄る前にいらないものを全部ハジャイから宮崎の自宅まで郵送するときに5桁の郵送費を取られました。教科書はイヤーノート、STEP内科の感染症、病気がみえる婦人科と産科、チャート小児科、QB3冊を持っていきましたが、絶対にこんなにいりません。同じ科をまわる人がいるならその科の教科書はシェアできます。イヤーノートもないと不安かもしれませんが常に持ち歩くわけではないので誰か一人持っていけばいいです。マンゴーを食べまくったりビーチで遊ぶのにも忙しいのでQBはせいぜい1冊終われば○。パソコン、電池、ドライヤーはあきらめましょう。傘も貸してもらえます。電子辞書があれば何も困りません。洗面用具類は全部現地で買えます。タオルも現地で買って使い捨てることもできます。白衣は3着もあればOKです。女の子の場合服と化粧品をどれだけ減らすかが重要な問題ですが、先生の家にお呼ばれしたとき用にワンピースの一着でもあればあとはほとんどいりません。どうせ汗で落ちるのでこの際ノーメークで1ヶ月過ごしましょう。実習用のスラックスやシューズが意外にかさばりますが、そんなものは暑くて着ている場合ではありません。実習着はマーケットで買った黒いスカートとサンダルに変えたので結局は必要ありませんでした。タイの学生はみんなスカート(しかもけっこうミニ!)にサンダルで実習しており、日本ほど服装にこだわる必要はありません。ちなみに髪を結ばなくてもいいし、ピアス、ネックレス、化粧、香水もOKのようでした。逆に日本から持っていくべきものとしてはお世話になる人へのお土産です。絶対持っていかないといけないかというとそれは個人の判断ですが、タイの学生は断っても毎日のようにごはんをおごってくれたりするので、申し訳ない気持ちになります。ホスピタリティの高さはタイのカルチャーでしょうか。外食が安いからおごってくれても日本に比べれば経済的負担は少ないとはいっても、それなりのレストランに連れて行ってくれて、明らかに安くない額を強引におごってくれることもありました。お返しにドミトリーに招待して日本料理を振舞うという案もありましたが、ドミに全く調理器具がないために断念。学生みんなに配れるような小さなギフトを30個ほど、私たちの場合日本の文房具、和風の栞や手ぬぐいなどをみんなで準備しました。特にお世話になる先生にはちょっとしたものが2, 3人分くらいあるといいでしょう。後はスーツケースとは別に小さめの旅行鞄やリュックがあると週末の旅行の時や地方の病院に行くときに便利です。どうしても荷物を減らしたくない場合はタイ航空を選んでください。超過手数料をとられないような気がします(要確認)。

◎クリクラノート ソンクラ編

ソンクラでは6年生をextern, 研修医1年目をintern, 2年目以降をresidentと呼びます。実習期間中に一度はDr. Teerhaにお目通り願いましょう。ピーターに頼めばアポをとってくれます。このプログラムの最高責任者で3年前に宮崎にも来てもらいました。気さくで優しい先生ですが実はとんでもなく偉いお医者さんです。私たちは自宅(豪邸)に招待していただきました。Dr. Suparpにもできればお会いしましょう。今はFaculty Of Medical Technologyという新しい学部に移っていますが、昔1病理にいたことがあり住吉学長のお友達です。私たちはベンジャマスさん(後述)に頼んでコンタクトをとり、ディナーに連れて行ってもらいました。オペ室に入るときには着替えますが、このとき貴重品をロッカーに残さないように注意しましょう。貴重品とは財布、携帯電話、電子辞書、カメラです。できれば無くなって困るものは寮に置いておいたほうがいいです。ロッカールームでの盗難はこっちでもよくあることですが、タイでは置いていった5分後に消えているなんてことも起こるそうです。貴重品の管理は自己責任です。不注意で無くなった場合は自分もショックだし、まわりの人にも迷惑をかけます。

<小児科(2週間)>

 小児科と産婦人科は建物を共有していて、5階から7階まで半分はすべて小児科の病棟です。階ごとにチームを組んでいる様子でした。私たちは主に7階のプライベート病棟とよばれる個室ばかりの病棟にいて、そこはextern 1人、intern 2人を5年目くらいのチーフレジデントがまとめていました。5年生も午前中は病棟にきて回診に参加し、患者のプレゼンテーションをします。午後はレクチャーやグループスタディの発表、ときには試験があるみたいでした。スタッフドクターは回診のときだけ病棟に現れ、その他はオフィスにいたり出張したりするので、すべての病棟業務はチーフレジデント率いる若手ドクターにまかされています。回診に参加するスタッフドクターも週によって専門の違う先生がきて、自分の専門の患者だけ回診して帰ります。6年生になると3日に一度くらいの当直をこなします。インターンとペアで当直するとはいえ、ファーストコールは6年生が受けることになっていて、できるところまでは自分でやります。私たちのために組んでくれたスケジュールに沿って実習していくと、朝は週1回の外来の日を除いて9時ぐらいからスタッフドクターの回診に参加します。先生によってはすべて英語でやってくれます。症例は先天性心疾患の術後管理、未熟児の呼吸器疾患、熱性けいれん、下痢、脱水など日本でもおなじみのものからデング熱、先天性梅毒、HIVに結核の合併などタイならではの症例もあります。11時からはモーニングカンファレンスといって、5年生からスタッフドクターまで全員が参加するカンファレンスがあります。これはほとんどタイ語で行われるのですが、英語の話せる学生の隣に座ったりすれば訳してくれます。興味のある症例や困った症例についてレジデントが発表し、スタッフドクターが突っ込むという形式のようでした。金曜のモーニングカンファだけは英語で行われ、ネイティブの英語の先生が英語の表現を指導したり、発音を直したりと厳しい指導が行われていました。例えば「〜の5分前に」は “5 minutes before〜”じゃなくて “5 minutes prior to〜” でしょ、とか「触知しない」は “not palpable” より“could not be palpated”がいいよね、とか日本人からするとどうでもいいんじゃないかと思えることを厳しく指摘していました。でもよく考えると正しくない英語を何となく使っていたのでは実際にアメリカで臨床研修をすることになったりしたら全く通じなくて困るだろうなと思ったりしました。それにしても大学病院のカンファに英語の専門の先生を招いて英語教育をしているという姿勢は日本の病院も見習うべきだと思いました。タイの医学生や若い医者の英語のレベルはどうかというと、確かに医学英語に関しては日本の学生よりもはるかに知識があり、完全についていけません。でもそれはタイ語に訳がないから英語をそのまま使っているというだけのことで、タイの英語教育が日本に比べて優れているわけではないと思います。実際英語を使っているとはいっても、日本人がカタカナ英語を愛用するように、多くのタイ人が使っているのはタイ英語だったりします。何度きいても???なときはスペルを書いてもらうと一気に解決することがよくあります。午後は血液標本のスライドレクチャーがあったり、6階の大部屋病棟に降りて小児白血病の回診に参加したり、私たちのためだけに感染症の先生がHIVのレクチャーを2時間くらいしてくれたりしました。タイのコマーシャルセックスワーカーのHIV陽性率は50%にも及ぶことがあるそうです。ちなみにタイでHIVの感染率が高いのはタイに男性同性愛者が多いことと関係があるのかどうか先生にきいたら、それよりも北部で少女の売春が盛んなことが大きな要因になっているということでした。2週目の木曜日と金曜日にはハジャイ病院という市中病院に行かせてもらいました。主に回診とレクチャーに参加しましたが、大学病院よりもcommon diseaseに接することができます。5年生のOSCE実習の様子も見せてもらいました。シュミレーターを使って乳児のくるみ方、固定のしかた、皮下注、筋注、Vラインのとり方、ヒールカット採血、尿カテの入れ方、経鼻胃管挿入などをやっていました。5年生のときからこうやって習っているから6年生になったときには患者さんを目の前にしてできるのだなと納得しました。小児科では毎日4時半には帰れます。他の科に比べると体力的には楽で、留学生の受け入れにも慣れているかんじがしたのでおすすめです。4階の事務室にいるMrs. Benjamasさんは昔2生理にいたことがあり声をかけるととても親切にしてくれます。今年EMP講師として来宮したDr. Matineeは、多忙でほとんど病院にはいませんが見かければいつも声をかけてくれます。娘さん(Ms.Bua)は医学部の1年生で週末に旅行に行くときのコーディネートまでかなりお世話になりました。去年のEMP講師Dr. Vichaiは血液の専門です。教育回診をしてくれるといったときは、興味のある症例を3つくらい入院患者の中から選んでおいて質問しましょう。何号室の何の患者かまで覚えておかないと電カルで検索できなくて戸惑います。最後の日はランチに連れて行ってもらいました。先生のお気に入りのヌードルレストランは住吉先生もお気に入りだったというだけあってかなりおいしかったです。(Vichai先生は軽々と2杯食べていた!)

<Sichon Hospital(1週間)>

ソンクラから北に車で4時間くらい、ナコンシ・タマラート県にある病院です。実習内容に関しては誰かが書いてくれると思うので譲ります。とりあえず海辺のリゾートコテージを用意してくれて、Dr. エカラットが毎晩のようにビーチリゾートに食事に連れて行ってくれるという接待ぶりにはありがたいやら申し訳ないやら何しにきたんだか…。Peeヌヌ(Peeは敬称)というかなり濃いキャラのおばちゃん看護師にも出会えるはずです。日本の学生が大好きで何でも面倒をみてくれます。この1週間は全くお金を使いません。

<産婦人科(1週間)>

 産婦人科の先生方は日本びいきの方が多く、熱烈歓迎を受けます。宮崎の学生で産婦人科を選択したのは私が初めてらしく「なんでみんな産婦人科にこないんだろう」くらいの勢いです。教授、助教授など偉い先生方にも「よく来たね、ぜひディナーでも一緒に」と誘われます。しかしここでも宮崎大学の池ノ上医学部長の名前が通っているので、宮崎から来たということでそれなりの目でみられます。「うちの実習は産科・婦人科・新生児を合わせて2週間しかないから婦人科は3日しか実習してません。」と先に言い訳をしておくことが重要です。私は1週間Dr. Jittiにつきました。Dr. Jittiはスタッフドクターのわりには若い男性医師で、バンコクの名門医学校を卒業した超エリート。学生にもナースにも患者さんにも人気がある、いわゆるイケてる先生です(既婚)。今年の秋から日本に留学する予定があるらしく、日本語もちょっと話せます。専門は婦人科オンコロジーで、PubMedで彼の名前を検索すれば論文がダーっと出てきます。朝8:30に彼のオフィスを訪ね、9時くらいから一緒に外来や回診をしに行きます。午後は先生はいなくなってしまうのでレジデントやインターンの先生に預けられて出産を見学したりしました。産婦人科はシニアレジデントをリーダーとし、ジュニアレジデント、インターン、エクスターン、5年生で構成されるグループが全部で5グループありますが、分野ごとに別れているわけではなく、全てのグループが出産・妊婦検診・婦人科外来・婦人科手術・病棟業務を日替わりのローテートで受け持っています。どこかのグループに所属すれば1週間ですべての分野を体験できます。ここでの産婦人科実習はとにかくいろんなことをやらせてもらえます。日本では絶対できないようなレベルまで学生に許されているのでやりがいはあると思います。婦人科外来のときはクスコの持ち方から内診の仕方まで手取り足取り教えてくれます。はじめはぎこちないかんじでしたが、20人くらいの患者さんをみせてもらううちに子宮頸部と膣の観察くらいは一人でできるようになります。内診はやっぱり難しくてよくわかりませんでした。妊婦検診の日も5年生と一緒にレオポルド触診法を実践して自分で子宮底の高さを測ったり胎向を調べたりしてカルテに入力します。Engageは児頭が固定されているという意味です。(婚約じゃないですよ!!)こういう言い回しは以外に英語で知らなかったりするので要注意です。1週間で帝王切開に3回くらい手洗いで入れてもらいました。帝王切開をする際に胎児に達するまでに出てくる膜とか筋とかの名前は英語で言えるようにしておくとよいでしょう。ちなみに ‘カイザー’ は日本語です。‘C section’ なら通じますが。日本語で知ってたって英語で表現できなければ知らないのと一緒です。ソンクラで産婦人科を考えている人はポリクリで産婦をまわった際に、これは英語で何て表現するんだろうといちいち考える癖をつけるといいと思います。わからなかったらどんどん先生にききましょう。エクスターンとインターンがペアで当直をするので機会があれば一緒に泊まらせてもらうといいでしょう。エクスターン(つまり6年生)はほとんど一人で分娩介助ができます。終わってから考えると産婦人科に2週間いてもよかったかなと思いました。

◎現地での生活編

ハジャイの空港に着くと、ピーターが迎えにきてくれているはずです。彼は医学部の国際交流事務室(international affairs)の職員で、私たちの生活に関することなら何でも相談にのってくれます。普段はadministration officeの4階にいます。同じ部屋に福崎さんという日本人の女性がいます。彼女は指宿在住の日本舞踊の先生で5年前からソンクラの医学生や職員にボランティアで日本舞踊、日本語、華道、三味線、日本料理などを教えています。毎年ソンクラ大学の医学生を連れて来日していて、宮崎大学も何度か訪れています。ソンクラでの生活も長く何でも知っているので心強い存在です。私たちを部屋に招待して日本料理をふるまってくださいました。タイ料理に少し飽きていた私たちはすごい勢いで10人前くらいの煮物・漬物・味噌汁・茶碗蒸しをたいらげました。どうしてもタイ料理になじめなかったときはこっそりお願いしてみてください。きっと喜んで美味しい和食を作ってくださいます。

私たちが住んでいたのは「プラ・サン・チャイ・ヌーン」と呼ばれる看護婦さんの寮でした。迷子になったときのためにぜひ覚えましょう。鍵を4人分大学の経費でコピーしてもらいました。ベッドが二つある寝室が二部屋あり、リビングも広くて快適でした。エアコンとホットシャワー付です。トイレは水洗の洋式ですが、トイレットペーパーを便器に流してはいけません。日本以外のアジアの国ではあまりにも常識なため特に注意されないかもしれませんが、うっかり流すと詰まって大変なことになります。冷蔵庫とポット、食器が少しあります。コンロや電子レンジはありません。生水は飲めないのでテスコでミネラルウォーターをまとめ買いしておきましょう。24時間のセブンイレブンまで徒歩3分、屋台街まで徒歩5分なので食べるものには困りません。病院内のフードコートでも3食食べられます。ゴミは無差別で毎日出せます。寮の出口にある大きなバケツに入れておけばOKです。洗濯機がないので洗濯はクリーニングに出すことになります。私たちは洗濯おばさんに1ヶ月一人400バーツでお願いしていました。週3回洗濯物を取りに来てくれ、すべてアイロンをかけて返してくれます。自分たちだけでは洗濯おばさんにコンタクトをとることは難しいので、誰か学生に頼んで電話をかけてもらうといいでしょう。タオルや白衣などなんでもOKですが下着は自分で洗いましょう。白衣などはハンガーにかけて返してくれますが、このハンガーはもらえるわけではなく返却しないといけません。出した洗濯物が紛失することはありませんでしたが、誰のかわからないタオルが混じっていることもあったので、絶対になくしたくない大切な服は出さない方がいいです。出した服には裏にマジックで印を付けられます。インターネット環境は良いとはいえません。図書館のパソコンを使いましたが日本語入力はできないし日本語のページが文字化けしていることもありました。プリントアウトには1枚1バーツかかり、カウンターの女性にお願いしないとできません。図書館は土日も開いていますが、貸し出しにはIDが必要で、IDの発行がスムーズにいかないこともあるので、最初に図書館を案内してもらったときに貸し出しの方法をしつこくピーターに尋ねるとよいです。英語の本もたくさんあります。図書館はなぜか極寒なので勉強しに行くときは防寒着を持参しましょう。寮には内線電話もありますが、大学から携帯電話を人数分貸し出してくれます。SMS(ショートメッセージサービス)や国際電話もできて、日本から持っていった携帯を使うよりは安いです。プリペイド式なのでまずは料金をチャージ。チャージの仕方はコンビニなどでカードを買い(100B, 300B, 500Bなどの種類あり)、センターにアクセスしてカードに書いてあるシリアルナンバーを入力すれば完了です。はじめは学生に一緒にやってもらうと良いでしょう。

◎番外編

タイの病院は女社会です。ナースはもちろんほぼ女性、医学生からスタッフドクターにいたるまで7割は女性です。小児科や産婦人科などで男性医師をみかけることはあまりありません。何で女ばっかりなの?と現地のある女子医学生に訪ねたら「男の子はまず医学部の入試に通れないのよ。だいたい医者ってストレスの多い仕事だから男には無理かもねー。」と笑いながら言っていました。真実はどうあれ、タイの男の子は女の子にとってもやさしいので、医療現場では男子学生は大忙しです。当直をしていても女の子は寝ていて電話をとるのは男の子。先輩のごはんを買いに行ったり、食事の後片付けや控え室の掃除まで男の子の仕事です。友達同士で食事をしてもよく見ているとお金を払うのは男の子。少ない男性医師は過酷な外科に集中していきます。タイの病院は女社会ですが、実は少数派の男の子に支えられているのかもなーと思いました。

最後に英語力について少し。後輩のみなさんからは「どうやったら英語を話せるようになるんですか?」とよく聞かれます。私もたいして話せるわけではないのでこっちがききたいくらいだし、英語の勉強方法に迷ったら英語科の先生方に一度相談してみるのがいいと思います。参考までに私が今までやってきてよかったと思う方法を紹介します。まず英語といっても医学英語と日常会話は分けて考えるべきだと思います。医学英語は単純に知識の問題です。日本語の医学用語だって1年生の頃から一つ一つ覚えてきたから知っているのです。一番のお勧めはreally englishのEラーニングです。(今でも受講可能かどうかはわかりません。横山先生にきいてみてください。)「縫合」、「生理食塩水」、「解熱剤」、「消毒」、「特発性」など、日本語では簡単な表現でも英語でどういうのか以外に知らないものです。Eラーニングでは基本的で重要な医学単語をオンラインで学べます。一日15分程度で無理なくできるし、ゲーム感覚で楽しいです。自分の発音を録音してネイティブの発音と比べられたり、テストで自分が間違えた単語を繰りかえし学習できるのもコンピュータならでは。とても役に立ちました。

これに対して日常会話は知識の問題というよりも慣れの問題です。言語はコミュニケーションの手段なので結局は人から人に伝わるものだと思います。みなさんも博多弁の友達といつも一緒にいたら博多弁がうつったり、恋人の口癖をいつの間にか自分が使っていたりした経験があるでしょう。しかし関西人と話したこともない人が完璧な関西弁を話せるようになることは絶対にありません。同じように外国人を目の前にして言葉が出てこないのは知識が足りないのではなく、英語を話すことに慣れていないだけのことです。宮崎にいても留学生との交流を通じて英語を話すことに慣れることができます。自分が外国人になってみるのも良い方法でしょう。とはいっても誰もがアメリカやオーストラリアに語学研修に行くことができるわけではありません。私がお勧めするのは下級生のうちに1〜2週間を使って近場のアジアに国際会議やボランティアに参加しに行くことです。そのような活動の際にはたいてい同じくらいの年齢の仲間と共同生活をすることになります。しかもメンバーは世界各国から集まっているので、いろいろな英語に接することができます。タイ人の英語、韓国人の英語、フランス人の英語、インド人の英語。みんな違ってみんないい…?そして修学旅行の夜のようにわいわいとガールトークに花を咲かせる方が英会話教室よりも楽しいし、生きた英語が身につきます。英会話のフレーズを覚えるのにテキストを何度読んでもすぐに忘れてしまいますが、あるシチュエーションで友達が言った一言というのは不思議と耳に残っていて、気付かないうちに自分でもその表現を使っていたりするものです。発音や文法が正確であることよりも、最低限のコミュニケーションがとれることの方がよっぽど重要です。英語を国際社会の中で生きていく道具と考えたときに、いろいろな国の英語に慣れておくのも悪くはないと思います。



「交換留学報告書」

医学科6年 C.X

4月に一ヶ月間ソンクラ大学に留学し、感染症内科、ER、地方のSichon病院で実習しました。

感染症内科(1週目)

感染症内科には病棟はなく、各科で感染症が疑われたときにコンサルトされ、その科に往診に行くような形をとっています。ここでは、朝と昼にカンファがあり、興味深い症例や各自テーマを決めて発表したり、時にはクイズ形式で行われたり、医師、レジデント、学生が討論する場が設けられています。みなさん積極的に自分の意見を述べていたのが印象的でした。カンファはほとんどタイ語で行われるので、タイの学生やレジデントが通訳をしてくれました。また、回診では、各科を回り、教授、レジデント(日本の研修医のような存在)、学生、薬剤師を含め行いました。日本の回診とは違い、教授が学生、レジデントに意見を求め、みんなでこれからの方針について考えていくという形をとっていました。薬剤師も抗生剤の選択などでアドバイスをしたりしていました。外来ではHIVの患者さんがたくさんいました。家族で受診している方も多く、若い夫婦が多く、子供にも垂直感染しているケースもあり、タイではいかにHIVが深刻な問題となっているかを目の当たりにしました。また、タイでは結核の患者さんが多く、AIDSの合併症は結核が第一に挙がる。投薬を6ヶ月継続して行わないといけないという長期間の治療が必要なため、内服を途中で忘れるまたはやめてしまう患者も多く、耐性菌が生じるなど問題となっており、それに対する対策として服薬を促すメールを定期的に送っているなどの取り組みがなされている。

 最初の一週間ということもあり、とにかく言葉の壁が大きかったです。タイ英語が思いのほかに聞き取れなくて苦労しました。医学用語や抗生剤の知識も十分でなかったので、質問に答えられないことも多々ありました。親切に説明してくれる人も多いので、とにかく、聞き返したり、辞書で調べたりなどして努力しました。

Sichon病院(2週目)

 ハジャイから車で4時間はなれた場所にある病院で、学生4人そろっていきました。タイは医師不足だと聞いていましたが、そのことがよく分かりました。9万人のSichon地区に病院が1つしかなく、かつ、この病院には医師12人しかいません。あとは診療所がいくつかあり、医師が定期的に往診にいく形をとっていました。私たちは2人ずつに分かれて各科を見学しました。内科ではレジデント1人と医師1人で30も40もの患者を管理していました。当然、2人だけではすべてをこなすのは無理なので、看護師が大きな労働力を担っていました。麻酔医もいなかったので、免許をもった看護師が麻酔をかけるなど、地方の医療の実情がよく分かりました。また、タイマッサージも体験しました。タイでは治療の1つとして確立しており、マッサージ師もいました。Family medicineといって通院が難しい患者や遠くに住んでいる患者の家を往診する医師がおり、看護師、栄養士と一緒にチームで往診が行われています。その患者宅訪問も見学させてもらいました。大きな都市から少し離れると大きな医療の差が生じていることが分かりました。非常に貴重な体験でした。医師や看護師の方々は非常に親切にしてくれ、食事や観光と至れり尽くせりでした。

ER(3, 4週目)

タイのERは日本と違い、時間外・深夜料金を支払う必要はなく、通常の外来と同じ30バーツで診療を受けることができる。外来では患者は多く、診療を待たせられることが多いので、同じ料金ならと早く診てもらえる救急を受診する人がいるため、タイのERの患者は非常に多い。そして、バイクなどの交通事故が多いタイでは救急車で運ばれてくる患者も含めると、夕方にはERの部屋が患者であふれかえります。学生やレジデント、救急医は次から次へと来る患者を診ていかないといけません。また、救急医だけでなく、ERには内科医や産婦人科医なども常駐していますので、診断に困った時やコンサルト時には相談しやすいです。

ERでは基本的に重症の患者を除いて、順番に学生が問診、身体所見をとり、検査のオーダーを問診用紙に書きます。その後、レジデントがチェックして、必要な場合は検査を追加したりします。チェックを受けてOKをもらうと、学生は電子カルテに情報を打ち込み、検査のオーダーを出します。検査後には診断によって、そのまま帰すか、各科の専門の医師にコンサルトしてみてもらう形をとっています。

 私は一人でERで実習を行いました。患者が来たら、診療している学生の後についてみたり、どんな患者さんかを教えてもらったりしました。軽症から重症までさまざまな患者が来られました。例えば、

  ・脳梗塞

  ・交通外傷

  ・くも膜下出血

  ・喘息の急性増悪

  ・薬服用後のアナフィラキシーショック

  ・急性動脈閉塞症

  ・COPDの急性増悪

  ・違法人工中絶後の腹痛、出血で不完全な流産

  ・結核

  ・下痢から敗血症

  ・血友病の関節内出血

  ・胆石症

タイの学生は、日本の研修医とほぼ同じ仕事をしていますので、豊富な知識と経験があり、いろんなことを教えてくれました。皆さん忙しく働いていますが、合間をぬって質問すると、画像なども見せてくれ、以前の症例なども紹介してくれました。また、私が見ていないその日の珍しい症例も教えてくれました。海外からの観光客も多く、英語しか通じない時もありました。英語は通じるのでレジデントの一人が私に問診をするチャンスを与えてくれました。知識で学んだり、実際に自分で見てみたりして分かったつもりでも、実際にやってみるとうまくいかないこともあり、それで気づかされることもありました。

ERでは特定の留学生担当の先生はいなく、常に誰かがついていてくれるわけではないので、自分で学生やレジデントに話しかけていくしかなかったです。最初は大変ですが、快く教えてくれる人もいるので、慣れると、学生や先生が面白い症例があると呼んでくれるようになりました。みんな英会話に自信がなく、最初はしゃべりかけてくることが少なかったですが、自分から話しかけていくと、いろいろ教えてくれるし、仲良くもなれました。

あっという間の1ヵ月でしたが、実習もタイでの生活もとても充実していました。こんなチャンスを与えてくれたことに心から感謝したいと思います。



「PSUクリニカルクラークシップ報告書」

医学科6年 Y.F

実習期間:2008.4.7〜2008.5.2

実習場所:1週目  PSU小児科(感染症)

     2週目  Sichon Hospital

     3-4週目 PSU感染症内科

<小児科>

ある1日のスケジュール

毎朝8時にレジデント&スタッフドクターとの回診がスタートします。(8時に行ったら既に始まっていることも多々ありましたが・・・。)この回診は、教授(准教授)回診の予行練習のようなもので、10時くらいに、教授が現れ、再度、病室を一つずつ回っていきます。(教授回診といっても、日本のように1週間に1回のものではなく、1日に午前と午後に2回あります。)教授もレジデントも、我々がいるときは英語で説明してくれます。11時から1時間のconferenceは、レジデントやインターンによる症例発表で、学生、教授たちの活発な質疑応答がタイ語で行われます。午後は、午前とは違う先生によるteaching roundがあったり、lectureがあったりと様々です。4時半が医師のシフト交代時間なので、その前にもう一度roundをして帰るのが日課でした。

午前中のラウンドがない時間は、extern(6年生)、intern(研修医)、その他の医師が忙しそうに仕事をこなしているため、暑さと戦いながら持っていった本を読んでいることが多々ありました。午後は、先生たちがminiレクチャーをしてくださったりと、私たちに時間を割いてくださるので、それほど暇にすることはありませんでした。

 小児科で見た症例

・SLEの10歳、女児、Loops nephritis ( class IV)

・8歳、男児、VUR

・1歳、女児、Langhans Cell Histiocytosis (LCL)

・6生日、女児、congenital syphilis

・2歳、女児、fibril convulsion

・38生日、女児、ASD, VSD、PA

・7歳、21trisomy(TOF, ASD)心臓の手術待ち

・女児、ヘルパンギーナ

・4歳、女児、actinomycosis(放線菌症)

・他、結核、白血病など

いろんな病気の子供たちを見ることができました。私が行った4月は、まだsummer timeだったので、5月以降の雨期に行くとまた、違った疾患の患者さんがいるのだろうとは思います。

8:00-10:00 Ward round with Pediatric residents & stuffs at 7th Floor

10:00-11:00 Teaching round with Prof. Vichai

11:00-12:00 Morning conference

12:00-13:00 Lunch break

13:00-15:00 Infectious round with Associate professor Kamolwish

15:00-16:30 Lecture about HIV by Asst. Prof. Kamolwish

<感染症内科>

ある日のスケジュール

8:30- 9:30 Morning report

10:00-12:00 Ward round

12:00-13:00 Dead case conference

13:00-17:00 Infectious disease clinic (OPD)

 感染症内科の1日は、朝のカンファレンスから始まります。ある症例、疾患がトピックスとして取り上げられ、それについての討論がタイ語で行われます。隣の人に通訳してくれるように頼むか、友達を探してその隣に座るか、または、パワーポイントの英語を読んで自分の理解できる範囲で理解するしかありません。(一緒に感染症内科を回った台湾の留学生は、出席しても理解できないからと、英語の授業見学に変えてもらっていました。その辺は、とってもflexibleです。)

 大体10時くらいから病棟回診が始まります。感染症科の病棟はなく、一般内科病棟やICUなど、他の病棟からコンサルトがあった患者のベッドサイドを、教授やそれに近い上のドクターと回るのが感染症内科の回診スタイルです。各病棟は、インターン〜スタッフドクターの若い医師たちによって管理されており、彼らで、発熱の原因が特定できない場合、薬が効かない場合、治療方針についてコンサルトしたい場合、特定の抗生物質(一部の抗生物質については耐性菌出現防止対策のため、感染症内科の医師でないと一定の期間以上処方できないように決められている)を処方したい場合などにコンサルテーションシートが感染症内科に回され、それを元に回診を行います。

 1週間に2日以上は、薬剤師も一緒に回診をするため、彼らが話している内容は、専門的で高度です。ほとんどの人は、英語が達者であるため、質問すると答えてくれます。(私の場合、わからないことが多すぎて、すべてを質問することは不可能でした。)このラウンドは、暑い中、長いので体力の消耗は予想以上に激しいものでした。(特に4月の初旬に行ったので、タイの暑さに体が慣れるまで時間がかかりました)

 OPDは、一人の先生について外来患者を診ます。すべて、通訳・説明してくれる先生もいれば、そうでない人もいます。診た患者はすべて、HIVの患者でした。その診察の仕方、臨床症状、治療方針の立て方等、患者に対する配慮の仕方等、非常に勉強になりました。HIV患者に対する治療は、日和見感染(OP)を起こさないよう病状をコントロールことがすべてといても過言ではありません。治療は抗ウイルス薬の内服なので、感染症内科を回る人は、抗ウイルス薬について、名前、分類、副作用等は、頭に入れておいたほうがいいでしょう。

<感想>

 日本の春から突然タイの真夏に飛び込んだ暑さの中の実習は体力的にはキツイものでしたが、日本では教科書でしか見ることのできない症例を実際に目にすることができ非常に有意義な実習でした。多くの先生やドクターたちは英語に堪能なので、タイ訛りの英語に慣れてしまえば、コミュニケーションに問題はありません。どの先生たちも、医学生や若い医師たちへ、教育に熱心で、その点でも一緒に回診や外来に参加して勉強になることがばかりでした。

PSUの6年生は、日本の研修医のような仕事をしているため、医学知識は遠く及ばず、彼らに聞かれる臨床的な質問(あなたの病院では、CVカテーテルの原因菌で一番多いのは何?等)にも、答えられないことが多々ありました。自分の無知を何度も恥じましたが、あのときの悔しい思いが、日本に帰ってからの勉強に対するいいモチベーションになっていると今では思います。

 タイで出会った人々は皆親切で、特に、4月からインターンとしてPSUで働いている、昨年宮崎に実習に来たPSUの学生には、病棟で学外でとほぼ毎日お世話になりました。彼らを通じてまた新たな友人を作ることもでき、人と人のつながりの大切さ、人の温かさを実感する4週間でもありました。

 多くの貴重な体験と出会いを経験したソンクラでも臨床実習でしたが、感染症内科でDr. Khachornsakに出会えたこと、教えてもらったことは私の宝物になりました。1か月間、PSUで過ごすことができ、本当に感謝しています。

<アドバイス>

・感染症内科を回る人は、微生物学で習った病原体、疾患については、おさらいしていったほうがいいでしょう。

・HIVの治療薬の種類、副作用は勉強していったほうがいいと思います。少なくとも名前くらいは知っておくと、外来でちんぷんかんぷんということはないでしょう。

・4月は異常に暑く、女性はほとんどが、スカートにサンダルです。柄や丈には決まりはないようなので、薄いスカートを用意するのも、ひとつの暑さ対策です。(学生は、黒で無地のスカート、医者は柄もののスカートをはいていましたが、外国人は何でもいいようです)



「PSU留学報告書」

医学科6年 M.H

私は、今回T.O君、K.Hさんとともに、5月から6月にかけて1ヶ月間PSUでの実習に参加しました。ちょうど乾季から雨季に移行する時期で、天候が心配でしたが、結果的には雨もそんなに降らず、暑さも四月ほど厳しくない時期で快適だったように思います。私は、医学知識、英語(特に医学用語)ともに、不安を抱えての出発でしたが、そんな私でもくらいついていくことで、どうにかなったんだと思います。

以下、項目別に述べていきますが、何かの参考になれば幸いです。

○航空券

HISで手配してもらいました。福岡空港→バンコクのスワナプーム空港→バンコクで一泊→バンコクのドンムアン空港→ハジャイ空港。帰りは、乗り継ぎができる時間帯だったので、ハジャイ空港→ドンムアン→スワナプーム→福岡。往復で¥75,000くらい(空港使用税とかを含めて)。ホテルは別に取ってもらいましたが、ツインで部屋を取れば一人¥3,000ですみました。ホテル自体はキレイで広くてよかったのですが、ホテルを出たとたん、ツクツクの運転手さんにつかまり、拝み倒されて宝石店に連れ込まれました(T・T)何にも買いませんでしたけどね。

○ワクチン

A型肝炎と日本脳炎を受けました。直前にちょうど二内科をクリクラで回っていたので、そこで紹介していただき、ひろの内科(看護大の近く)に行きました。A型肝炎のワクチンは3回打つべきにもかかわらず、時期的に結局一度しか打てなかったのですが、それでも打たないよりはいいといわれました。PSUに行ったときに、「当然日本脳炎のワクチンは受けてきたでしょ」というようなことを言われたことが印象的でした。ただ、受けてない人の話もよく聞くので、考え次第だと思いますが。安心なことは安心でした。

 あと、結核の患者さんを診る機会もあると思うので、ツベルクリン反応は念のため確認しておくといいのかな…?

○保険

HISで入りました。そこの保険では、ぎりぎり一ヶ月未満だったので、留学よりは海外旅行の括りのほうが安いみたいでした。

○携帯電話

タイで使える携帯電話を、ピーターが用意してくれています。今回、私達は各自用意していったのですが、ピーターはピーターで用意してくれていたらしいです。行く前に確認しておくといいと思います。

携帯電話にUSIMカードというものを差し込んで初めて自分の携帯として使用できます。プリペイドカードを購入して、それをチャージしないと使えないです。そのチャージする方法がよくわからなかったのですが、PSUでの友達にやってもらって助かりました。300バーツ分のカードを買っても、日本への国際電話を20分くらいするとすぐなくなってしまうので、PSUの敷地内のセブンイレブン(日本の製品もいっぱい!)で購入するのが一番便利かもしれません。通話中に、ぶちっと切れてタイ語のアナウンスが聞こえてきたら、チャージが切れたってことだと思います。

○洗濯

洗濯屋さんがだいたい二日ごとに、部屋の前に出しておいた洗濯物を回収に来てくれて、代わりに前回回収した洗濯物をおいていってくれます。一ヶ月で400バーツくらいだったと思います。PSUの学生に頼んで申し込んでもらうといいです。とても助かりました。ただ、下着などは自分で洗うので、洗剤などの準備は必要です。

○教科書

私は、電子辞書(便利!!)血液のステップ、レビューブック、感染症治療の小さな教科書とQBを一冊もっていきましたが、QBはほとんどやる時間がありませんでした。レビューブックは、小さくて持ち運びやすいので、実習中にとても便利でした。イヤーノートは一緒に行った原さんに見せてもらいましたが、やっぱりあった方がよかったです。重ければ、一緒に行く人で分担してもっていくのも一つの手だと思います。図書館で教科書を借りることができたのは、とても助かりました。

○食事

朝はだいたい、カフェオレ、パン、果物を食べました。たまにテスコやカリフールといった(日本でいうジャスコみたいな)ショッピングモールに連れていってもらい、そこでカフェオレやミネラルウォーターなどをまとめ買いしていました。テスコはPSUのまん前なので、気軽に行けると思います。昼食は、病院内にフードコートがあり、いろんなお店があるので、その中からお店を選んで食べることができます。夕食は、毎日のように学生が連れていってくれます。また、PSU構内に月曜日、水曜日、金曜日の夕方に市場が開かれるので、そこで夕食や、果物、おやつなどを買いました。マンゴーが1キロ当たり20バーツか30バーツ(100円くらい)だったのが衝撃的で、一生分食べつくすつもりで毎日のようにマンゴーを食べました。ほかにも、マンゴスチンやドリアン、ソラ?など名前は忘れましたがいっぱい食べたことのない果物を食べることができて幸せでした♪

食事は基本的に、辛いものが多いです。辛いものに苦手意識があったので、1日目に食べたトムヤンクンがめちゃくちゃ辛いのに泣きそうになっていましたが、そのうちそれがクセになり、タイの食べ物大好きになりました。辛いものが苦手といえば、辛いものを避けて注文してくれるので、大丈夫だとは思います。ただ、たまに料理に入っているグリーンチリは要注意です。うっかり噛んでしまい、辛くて痛くて死にそうでした。

○もっていってよかったもの、もっていった方がいいと感じたもの

<生活編>

・おみやげ

私は、“太郎と花子”で買いました。竹とんぼとか、和紙でできた爪楊枝入れとか、細かいものを適当に買っておいて、別れるときに渡しました。他にも、ちょっとしたおみやげを逆にもらうこともあるので、そんなときのお返しとしても便利です。

・浴衣

皆さん興味があるみたいです。結婚式に招待して頂いたのですが、先生方は私たちがKIMONOを着るものだと思っていらしたらしく、着ないとわかると残念そうでした(笑)荷物になるので無理とは思いますが、参考まで。

・タイ語会話の本

英語と対比させてあるものが便利でした。わかりやすいし、英語の勉強にもなるので。発音がめちゃめちゃ難しいので、実際に教えてもらいながら練習すると、盛り上がって楽しかったです。虎穴にはいらずんば虎子を得ず、だなと思いました。

・制汗スプレー

皆さんもちろんもっていくこととは思いますが。

・タオルは多め

病棟はエアコンがないところが多く、毎日汗びっしょりになるので、タオルはよく使いました。洗濯は洗濯おばさんがしてくれるのですが、返ってくるまで少なくとも二日、遅い場合は三日かかったりするので、その間使い回せるくらいはあったほうが便利です。

・アースノーマット、虫除けスプレー

部屋にも蚊が出ます。感染症内科の先生に言わせると、デング熱を媒介するタイプの蚊ではないらしいですが、毎日刺されているとドキドキしっぱなしの羽目になります。(笑)

<実習編>

・もちろん電子辞書!

その場で調べられるのはもちろんのこと、会話の中でどうしても聞き取れない単語があった場合、電子辞書にスペルを打ち込んでもらうこともできます。

・持ち歩ける教科書

私は、いつもの宮大での実習のように、レビューブックを持ち歩いていました。英語が聞き取れないときでも、レビューブックと照らし合わせて類推することができるので便利だと思います。あと、持ち運べるサイズの解剖アトラスをもってきておけば便利だったなーと思いました。ERでは全身を見るので、英語で体の部分を言うことが必要な場面が多くあったからです。

○質問されて、もっと勉強しとけばよかったと思ったこと(もちろん、たくさんあるんですけど…)

・うちの大学の研究内容(五年生の最後の講義のときにそんな内容があったなーっと思い出しましたが後の祭り。生理活性物質についての研究が盛ん〜ってことしかいえませんでした)

・予防接種の実施時期や実施形態について(小児科の定期健診を見学させていただいたときに聞かれました)

・日本の今の政治事情と自分自身の意見(興味ある子はあるみたいです。自分の国について正しい知識を持っておくことも大事だな、と思いました)←例えば、皇室の愛子様は天皇になれないの?と聞かれ、二つの世論を説明したら、あなたはどっちがいいと思う?と聞かれました。タイでは、みんな王様のことをとても慕っているし、王室の肖像画が町中に飾ってあったり、王様の名が入ったお守りをしていたりしているほど興味をもっているので、そういう違いもあるんだろうなと思います。

・日本のアニメや漫画について(笑)

○実習の内容について

 私は、最初の2週間をK.Hさんと小児科で、次の2週間をT.O君とERで実習しました。小児科では、最初の一週間は個室病棟を回りました。私達のほかに5人の女の子達が一緒で、にぎやかに過ごせてとても楽しかったです。日常会話としては、英語に慣れていないらしい子も、医学英語となるときちんと話せるのがとても印象的でした。

 スケジュールとしては、私達が朝8時に病棟に行くと、学生はすでに来ていて自分の担当患者さんの診察を終えています。それから学生とレジデントだけの回診が始まります。学生が1人1人、自分の担当患者さんについて、英語でプレゼンテーションしてくれます。レジデントの先生もなにかと教えてくれるので、質問しやすい雰囲気でした。その後、助教授のポンサック先生がいらして、もう一度回診があります。2回あるので私にとっては理解が深まり、とてもよかったです。

 回診の合間に、レジデントの先生が学生にミニレクチャーみたいに教える場面がよくみられました。女医さんが多く、私達にも辛抱強く英語で教えてくれて、まるでお姉さんのようでした。

 11時からは、小児科全体のカンファレンスがあります。そこでは、レジデントの先生が症例発表したり、設定されたテーマについてドクターが講義をしてくれたりしました。講義は基本的にタイ語なのですが、配られるレジュメは英語なので、電子辞書で調べながらついていくってかんじです。

 午後からは、Dr. Bichaiや助教授の先生の講義や、外来、定期健診などがありました。Dr. Bichaiはサラセミア、東南アジア卵形赤血球症(SAO)についての授業をしてくださいました。二年前に宮崎に来て講義してくださったときに比べて、内容がきちんとわかるようになったことがとても嬉しかったです。もちろん先生がゆっくりわかりやすいように教えてくださったのですが(笑)他にも、病理学的診断のミニレクチャーがあり、顕微鏡を見ながらSAOやサラセミア、白血病などの診断について説明してくださいました。クイズ形式だったりして、面白く、とてもためになりました。

 助教授の先生は、デング熱についての講義でした。デング熱は、高熱をみたらまずデング熱を疑え、というくらいタイではメジャーらしく、デング熱の患者さんはよくみました。なので、とても役に立ちました。

 また2週目は、小児科の中の感染症を回ったのですが、血液疾患の患者さんもたくさんいました。ここでも、最初は学生とレジデントの回診、その後に上のドクターとの回診、といった形式でした。英語が堪能な先生が多く、辛抱強く教えてくださり、とても勉強になりました。Lumber Punctureをやらせてもらえる予定だったのですが、次の日からハジャイホスピタルに行く予定があったため、できませんでした。せっかくのチャンスだったので惜しかったですが、このように機会があればやらせてくれます。

 小児科での最後の2日は、ハジャイホスピタルに実習に行きました。朝早くバス乗り場に集合して、バスで病院までつれていってもらいます。ここでも、学生がPSUにいるときと同じように、担当の患者さんを1人で診察しカルテを記入し、その後レジデントと回診、そして上の先生と回診をしていました。大勢の患者さんが、広い部屋にズラッと並んでベットに寝かされているかんじです。PSUよりも多岐にわたった疾患を一度にみることができて、診断がおもしろかったです。学生が、呼吸音なども自信をもって聞き分けているのもすごいと思いました。そういう話を学生にすると、日本では、研修医になってから一度にいろいろ実践するのが、とても大変そうだねといわれました。日本では、デング熱がないの!?と驚く学生がいたり、日本でまず最初に疑う感染症は何?と聞かれたり、そういう違いを感じるのが面白かったです。病院の前に捨てられていたという赤ちゃんが寝かされていたのには驚きました。

 次にERですが、ここでは小児科と違い、火曜日以外ほぼフリーでした。火曜日は、レジデントの先生達と症例検討会や、他科との合同カンファレンス、英会話のレッスンなどに参加することができました。皆さん英語が堪能で、わかりやすかったです。

 火曜日以外は、学生が診察し、診断を下したり、検査に送ったり、他科にコンサルトしたり、治療したり、といったことをしているのを自分から興味をもって食いついていく、という感じでした。ERの前のテラスみたいなところに、ストレッチャーが並べてあり、到着した患者さんはそれに寝かされて、広い部屋に入ってきます。多いときは、15人くらい、少ないときは、2, 3人ですが、全員が全員、急を要する患者さんではなく、ほとんどは、診療所にくるような感じで訪れるようです。なので、様々な疾患の患者さんがいて、おもしろかったです。最初は、質問しにくくて、どうしようってかんじでしたが、そのうち勝手がわかってくるようになると、どんどん質問したり、手技をやらせてもらえるようになりました。自分から関わろうとすれば、レジデントの先生はいろいろやらせてくれるし、教えてくれます。ERはシフト制で、いろんな学生が入れ替わり立ち代りやってくるので、めまぐるしく、なかなか仲良くなりづらいかもしれませんが、やはり、自分から関われば、辛抱強く教えてくれます。患者さんは、タイ語しか話せないのでコミュニケーションはとれませんでしたが、どこの馬の骨ともわからない(?)私にも、快く診察させてくれました。また、英語の先生が運ばれてきたときは、英語で問診を取らせてもらえたので、それも貴重な経験でした。

やらせてもらった手技は、縫合はもちろん、直腸診、マーゲンチューブを入れて胃洗浄、などです。デジタルブロックをさせてもらった人もいました。

ちょっと考えさせられたのは、虫垂炎という診断を受けた子供が、治療を受けずに地元の病院に移されたときでした。保険か何かの関係らしく、PSUでの治療費を払えないためだそうです。厳しい側面を目の当たりにしました。

 今回のPSUでの実習は、私のかけがえのない財産であり、視野を格段に広げてくれました。この報告書では、とても書ききれないほどの経験をさせてもらったと思います。また、素敵な女医さん達との出会いが印象的でした。タイの、人懐こいという国民性もあるのかもしれませんが、チャーミングで笑顔を忘れない人がとても多いように思います。なのに、ディスカッションになると、とても聡明なところがよくわかって、こんな医師になりたい、と思える人がたくさんいました。もちろん、医師を取り囲む環境が、日本よりも恵まれている(訴えられにくい、とか、大学病院では、比較的時間に余裕があるなど)ということが根底にあるのかもしれませんが、素敵な経験でした。タイという異国に住んではいても、同じように医師を目指している医学生たちにも、とても刺激をうけました。見ず知らずの私達を、温かく迎え入れて親身に接してくださったタイの人々の優しさに触れられたことも、私の宝です。今回留学したことで、もう一度絶対留学したいとも考えるようになりました。このような経験をさせてくださったすべての先生方、仲間たちに、心から感謝致します。



「2008年度 プリンス・オブ・ソンクラ大学 クリニカルクラークシップ 報告書」

医学科6年 K.H

☆ハジャイ到着から実習開始まで☆

実習開始の前日、ハジャイ空港に到着すると、International Affair Officeのスタッフの方が出迎えて下さいました。大学のワゴンでキャンパスに向かい、構内を1周した後、寮に到着しました。構内の設備や寮での生活、実習で回る診療科について説明を受けました。

私は小児科と整形外科で2週間ずつ実習を行いました。

☆小児科☆

●こんな人におすすめ

・小児科に興味がある/子供が好き

・すてきな女医さんになりたい/会いたい

・ちょっと英語に自信がない

●小児科で見られる疾患

白血病、リンパ腫、サラセミア、デング熱、マラリア、結核感染症、喘息、黄疸、熱性痙攣、不明熱、膀胱尿管逆流、先天性心疾患、多発奇形など

●実習内容

実習初日の朝、International Affair Officeのスタッフに案内されて小児科の医局に伺いました。レジデントの先生に病棟や会議室など簡単に案内してもらった後、准教授の先生から2週間のスケジュールについてオリエンテーションを受けました。

大まかなスケジュールは以下の通りです。

第1週 月 火 水 木 金

8:00-10:00 オリエンテーション 病棟回診 (学生・インターン・レジデント)

10:00-11:00 病棟回診 (学生・インターン・レジデント・スタッフ・准教授)

11:00-12:00 カンファレンス 症例検討会 カンファレンス カンファレンス

13:00- 血液外来 レクチャー

(サラセミア) 血液回診 感染症回診

レクチャー

(デング熱) レクチャー

(血液塗抹標本)

第2週 月(祝日) 火 水 木 金

8:00-10:00 病棟回診(学生・インターン・レジデント) 7:30- ハジャイ病院

病棟回診

カンファレンス

10:00-11:00 病棟回診(学生・インターン・レジデント・スタッフ・教授)

11:00-12:00 症例検討会 カンファレンス

13:00- 外来

(乳幼児健診) レクチャー

(小児外傷) レクチャー

(楕円赤血球症)

・1週目は個室病棟、2週目は感染症病棟で実習を行いました。

・朝は8時に病棟に集合し、回診に参加します。それぞれの患者さんについて、担当の学生が英語でプレゼンをしてくれます。学生のアセスメントやプランについて、レジデントの先生が質問し、アドバイスします。私たちを含めてディスカッションすることもありました。1度回診が終わると、スタッフや教授を交えてもう一度回診を行います。スタッフや教授の先生方は、疾患についての説明などを丁寧にしてくださり、患者さんの診察も積極的にさせてくださいました。

・毎日11:00から医局のカンファレンスルームに学生から教授までが集まり、カンファレンスが行われます。曜日によって、症例発表や論文の抄読、特定のテーマについての発表などが行われます。発表やディスカッションはタイ語で行われますが、スライドはほぼ英語作られており、だいたい理解できました。わからないことは学生に聞けば英語で説明してくれます。

・午後の予定は私たちだけのために組まれており、すべて英語で行われました。

・2週目の木曜日と金曜日は市中病院の小児科病棟での実習でした。朝6時半に大学構内のバス停に集合し、5年生と一緒に病院に向かいます。5年生と一緒に担当患者さんの状態を確認した後、6年生、インターン、スタッフの先生と一緒に病棟回診を行います。その後のカンファレンスでは、インターンの先生が特定のテーマについて発表を行い、みんなでディスカッションを行います。すべてタイ語で行われるので、学生が通訳をしてくれました。

・その他、学生や先生方は私たちの予定を常に気にして下さっており、空き時間があるとレクチャーや手技の見学などに誘ってくれました。

●小児科に行く人へのアドバイス

・病棟ではなかなか手洗いができないので、携帯用の手指消毒薬を持っていくと便利です。

・私は日本語の小児科の教科書を持っていって寮に置いていました。その日見た症例を帰ってから日本語で復習すると、さらに理解が深まると思います。


小児科ヴィシャイ先生と

ハジャイタウンの中華料理屋さんにて

・USBを持っているとレクチャーのスライドがもらえます。

☆整形外科

●こんな人におすすめ

・整形外科に興味がある

・タイならではの交通外傷が見たい

・手術を見学したい/手伝いたい

・体力には自信がある/体育会系のノリが好きだ

●整形外科で見られる疾患

椎間板ヘルニア、脊椎カリエス、外傷(交通事故、拳銃事故、爆弾テロ)、半月板・靭帯損傷、大腿骨頭壊死症、肩関節周囲炎、先天性足変形、ペルテス病、ブラント病、くる病、オスグッド‐シュラッター病、先天性股関節脱臼など

●実習内容

実習初日の朝、International Affair Officeのスタッフに案内されて医局に伺いました。主任教授の先生にご挨拶した後、2週間のスケジュールについて話し合いました。整形外科は小児、脊椎、外傷、スポーツ、上肢の5グループに分かれていて、バランスよく見て回れるように予定を組んでいただき、2週間ちょっとずつ変更を加えながら実習が進んでいきました。

最終的なスケジュールは以下の通りです。

第1週 月 火 水 木 金

8:00-9:00 オリエンテーション 教授講演会

(スポーツ栄養学) モーニングカンファレンス

9:00-12:00

小児外来 脊椎回診

カンファレンス スポーツ外来 脊椎外来

13:00- 手術室

(小児) 脊椎回診

第2週 月 火 水 木 金

8:00-9:00 モーニングカンファレンス レクチャー(英会話) モーニングカンファレンス

9:00-12:00 手術室

(スポーツ) 上肢外来 カンファレンス スポーツ外来 脊椎外来

13:00- 小児外来 手術室

(外傷) 脊椎回診

・毎朝8時から医局でカンファレンスがあり、みんなで朝ごはんを食べながら症例検討が行われます。ディスカッションはタイ語で行われますが、学生や先生が通訳してくれます。

・私が実習を行った外来は再診・紹介専用の外来で、ギブス交換や抜糸、包帯交換などを行う処置室も兼ねています。その日にお世話になるチームの先生に付いて、 問診やカルテ記載を見学し、診察をさせてもらったり、処置を手伝わせてもらったりします。5年生が一緒の時もあり、一緒に英語でディスカッションする場面もありました。 

・手術室では術衣に着替えて手術の見学をします。見に行くとだいたい手洗いをして、助手として糸切りや吸引などをさせてもらえました。

・回診はその日にお世話になるチームの先生方に付いて一緒に病棟を回ります。主治医の先生が英語でプレゼンをしてくれて、ほぼ英語でディスカッションが行われます。回診では診察はあまりなく、患者さんや付き添いの家族の方と話した後、X線やMRI画像を見ながら進めていきます。


医局のカンファレンスルーム 外来処置室

・水曜日は1日中カンファレンスです。朝の1時間は英語の先生が来て英会話のレクチャーがあります。内容はビジネス英会話で、特に発音練習に重きが置かれているようです。私が参加した回は電話での対応についてでした。みんなでCDを聴いて穴埋めしたり、2人1組で会話の練習をしたりと、高校の英語の授業のような感じです。9時からはインターンの先生方のプレゼンが始まります。1人1つずつテーマを決めて、スライドを使って発表し、みんなでディスカッションするという形で、1例約1時間かけて午前と午後2, 3例ずつ行われます。これも学生や先生が通訳してくれました。

・整形外科では、ベテランの先生は英語が流暢で知識も豊富、若手の先生方はとても明るくて社交的な印象でした。外来や手術は時間が長く、実習はハードですが、その分先生方ととても仲良くなれます。


整形外科ガンジガー先生、ウー先生と

講演先のクラビにて 大学病院の渡り廊下

●整形外科に行く人にアドバイス

・小児チーム、外傷チームの実習は夜中までかかることがあります。食べられるときにしっかりごはんを食べておきましょう。体力的にきつい場合は学生や若手の先生に相談して休憩させてもらったり早めに帰らせてもらっていいと思います。みなさんとても気をつかってくれるので、ご好意に甘えましょう。

・X線やMRI画像を見る機会が多いので、診断はできなくても、何か所見を言えるとディスカッションに参加できます。「〜に骨折線が見えます」「〜が○○側に偏位しています」「T2強調画像で高信号の病変が○○の××側に見られます」などなど

・わたしは図書館で英語の薄めの教科書を借りて使っていました。内科系と違って整形外科の用語は聞きなれない言葉が多いので、知らない言葉はメモしておいて、それを空き時間に教科書でチェックする形で勉強しました。2週間経てば、よく出てくる単語や疾患くらいは覚えられます。



■Prince of Songkla University研修報告書■

看護学科4年 Y.A(第5期生)

【研修先】

■Prince of Songkla Universityの看護学部(Faculty of Nursing)(以下ソンクラ大学と記す)

<住所>Facurty of nursing, Prince of Songkla University

Karnjanavanich road, Hatyai, Songkhla 90112, Thailand

■Songklanagalind Hospital (ソンクラ大学敷地内)

■Hat Yai Hospital(ハジャイの街中にある)

<看護学部最高責任者>Ladawan Pateepchaikul(今回は中国に出張中で会えず)

<看護学部研究&国際交流部門責任者>

(Associate Dean for Research and International Affairs)

Assoc. Prof. Urai Hatthakit, RN., Ph.D.(ウライ先生)

<看護学部国際交流事務職員>Ms. Nongpanga Dasom

(何かとお世話をしてくださる方。愛称Tong [トン]さん)

International Relations Officer (Room.1301B←看護学科の2nd buirdingの3階)

<その他、今回物凄くお世話になった方々>

・Ms. Ging:看護学部3年生。学生の中でお世話をしてくれた人。初日に夕食に連れて行ってくれたり、土曜日は観光に連れて行ってくれるなど、面倒を見てくれました。ただ、彼女自身、実習やその他の活動に忙しい様子だった事や、私のプログラムとの都合が合わなかったりした事で、常に一緒にいた訳ではありませんでした。でも、道ですれちがった時などはいつも声をかけてくれ、気遣ってくれました。)

・Mr. Peter(医学部国際交流事務職員):

医学科の学生がソンクラ大学で実習をする際、いつもお世話になっている方。とても話しやすい方です。医学部の国際交流担当の方ですが、私のこともとても気遣ってくださり、また気を回してくださいました。

・福崎和代さん(医学部の日本文化の先生):

日本文化(日本舞踊、日本料理、三味線等)を教えている先生。タイ在住5年目。医学部棟5階、“International Affair”のお部屋。(エレベーターを降りて右に曲がり、まっすぐ行った突き当たり右。)医学科生の方は毎年訪問時に挨拶に行っている。また宮崎にも、学生を連れて何度か訪問しておられる。セントラルハジャイを案内してくださったり、タイマッサージの事を教えてくださったり、滞在が延長になった後もインターネットを使わせてくださったり、ご飯を一緒に食べてくださったり、沢山の明るくて面白い話をして元気付けてくださったりと、大変お世話になった先生です。

【期間】

H20年11月17日〜11月28日 (13日間)

(実際はPADによるバンコクの空港閉鎖により、滞在期間が延長)

※当初は、宮崎大学の夏休み期間(H20年9月8日〜9月19日)に行く予定だったが、PADによる交通機関閉鎖があり、Tongさんに問い合わせた結果、この時は延期となった。

【ソンクラ大学看護学部の留学生受け入れ態勢について】

ソンクラ大学看護学部の留学生受け入れ態勢について、私の分かった範囲で書きます。ソンクラ大学は、すでに中国やイギリス等のいくつかの大学と提携を結んでいること、また正式な留学プログラム(5ヶ月間程のショートプログラムと大学院)が確立されていることから、沢山の国から留学生が学びにやって来ています。皆出身国がバラバラですので、共通語は英語です。そしてソンクラ大学の看護の先生方の内、留学生を教えていらっしゃる複数の先生方は、すでに沢山のクラスと沢山の留学生を受け持っていらっしゃいます。(私の場合、1プログラムに1先生が付きっ切りで付いてくださったのですが,それは私が宮崎大学医学部看護学科からの第1号生だった事と、教授(鶴田先生)が同行してくださった生徒なので、特別に、ということのようです。)(ある先生が冗談めかして言ったことなので、要確認。)

【研修を希望した動機】

看護が唱えている「全人的医療」の視点は、国籍や生活環境に拠らず、全ての人間の全ての背景を、看護の対象としているものである。したがって看護師は、病院や地域の人々、外国の方に対しても、身体・精神・社会的安寧を提供することが求められる。しかし私は、自分の国際感覚の乏しさ、言語への不安を持っていた。もし自分の働く場所に外国人の対象者が来られても、将来自分が全人的な視点に立ったケアを提供できるのか不安であった。よって、看護学生の間に、日本とは違う国に行き、その文化の中で行われている看護について学んで、自分の看護観を深めたいと思った。また、私は事前に得たタイの文化の情報により、日本人とタイ人のもつ精神性には、通じる所があると感じた。文化は違うが、精神面で私達日本人と共通する所があるタイならば、初めて国外研修を経験する私の動機に適い、十分に学びが得られると考え、プリンス・オブ・ソンクラ大学での研修を希望した。

【目的・目標】

タイは日本とは異なる国、しかし同じアジア諸国である。同じアジアの中で、しかし日本とは異なる文化とはどういったものなのか、人々とのコミュニケーション、大学やタイの日常生活の様子を見ることによって学ぶ。そしてその中で、看護と看護教育がどのように行われているのか、日本との共通点・相違点を比較することで、今後自分が看護師として働く上での看護観や、よりよいケア技術について検討するための知識を深めたい。

また私は国際協力にも興味があるため、世界の共通言語である英語でのコミュニケーション技術を、日常生活や授業の中で磨きたい。また、日々出会う人々とのコミュニケーションから国際感覚を磨いて、人と人との繋がりの大切さを学び、今後の自分の活動に生かしたい。

◎興味のある看護分野:がん看護、災害看護、精神看護、地域看護

<私にとって初めての経験、また看護学科も初の試みだったので、何が可能で何が不可能なのか分からないことが多く、詳細な目標は挙げませんでした。>

■事前に送られてきていたスケジュール■

私の動機や目的を鑑みて、ソンクラ大学看護学部の学部長(Dean)が作ってくださいました。詳細については後に記載。

Date Activities Note

Sunday 16 November 2008

3.10 PM. Ms. Yasuko Asogawa arrive at Hat Yai Airport TG 1233

4.00 PM. Check in Dormitory of Faculty of Nursing Room 2728

Monday 17 November 2008

9.00 - 9.30 AM. Meet Associate Dean for Research and International Affairs

9.30 - 12.00 AM. Faculty Tour Nongpanga Dasom

1.00 - 2.00 PM. Prince of Songkla University and City Tour

Tuesday 18 November 2008

8.00 - 10.00 AM.

10.00 - 12.00 AM. Respiratory Care Unit of Songklanagarind Hospital

Female Medical Ward of Songklanagarind Hospital Assist. Prof. Dr. Ploenpit

Thaniwattananon

1.00 - 4.00 PM. Free Time

Wednesday 19 November 2008

10.00-12.00 AM. Orientation to Library Librarian

1.00 - 4.00 PM. Free Time

Thursday 20 November 2008

8.30 - 9.30 AM. Chemotherapy Unit of Songklanagarind Hospital Assist.Prof.Dr.

Ploenpit Thaniwattananon

9.30 - 11.00 AM. Radiology Unit of Songklanagarind Hospital

11.00 - 12.00 AM. Cancer Center of Songklanagarind Hospital

1.00 - 4.00 PM. Free Time

Friday 21 November 2008

9.00 - 10.30 AM. Introduction to Reiki Ajarn Preeya Kaewpimol

10.30 - 12.00 AM. Reiki Practice

1.00 - 2.00 PM. Reiki Practice

1.00 - 4.00 PM. Reflection and Conclusion

Saturday 22 November 2008

9.00 AM. - 3.00 PM. Sightseeing to the Institute for Southern Thai Studies and Songkla

Sunday 23 November 2008

3.30 PM. Prof. Tsuruta and Ms. Saki Ishikawa arrive at

Hat Yai Airport TG 1233

Monday 24 November 2008

9.30 - 11.00 AM. Health Promotion and Rehabilitation Center for the elderly, Faculty of Nursing

1.00 - 3.30 PM. Meet the Dean and Others

4.00 PM. City Tour and Welcome Dinner with the Dean and Others

Tuesday 25 November 2008

8.30 AM. - 4.00 PM. Visit to Community Health Service Assoc.Prof.

Usanee Petcharatachat

6.45 PM. Prof. Tsuruta and Ms. Saki Ishikawa depart Hat Yai Airport TG 1236

Wednesday 26 November 2008

9.00 - 10.00 AM. Orientation and Setting the Learning Objectives Assoc. Prof. Dr. Praneed Songwathana

10.00 - 11.00 AM. Discussion ? Overview Concept of Disaster Nursing Dr. Hathairat Sangchan

1.00 - 3.00 PM. Presentation Japanese Experience in Disaster Management Miss Yasuko Asogawa

Thursday 27 November 2008

9.00 - 11.00 AM. Discussion-Learning from Scenario- Tsunami’s Report Assoc. Prof. Dr. Praneed Songwathana

11.00 - 12.00 AM. Visit Hat Yai Hospital ? EMS Services for Disaster Management

1.00 - 2.00 PM. Interview Nurse’s Experience in Tsunami Management

2.00 - 4.00 PM. Visit Hat Yai Municipality ? Hat Yai Disaster Plan and Management

Friday 28 November 2008

3.50 PM. Ms. Yasuko Asogawa depart Hat Yai Airport TG 1234

【情報収集】

ソンクラ行きが決まったら、何はともあれ、まずはタイについての情報収集から。インターネットでも調べられますが、私はガイドブックを1冊購入することをお勧めします。貴方が気に入ったものを購入するのが一番ですが、私は「地球の歩き方」が一押し。気候や歴史、簡単なタイ語など大体のことは満遍なく書いてあるし、何といっても地図、交通機関の利用方法、各種料金がとても分かりやすいからです。他、「ロンリープラネット」も持っていきました。これは外国で有名なガイドブックです。バックパッカー向け?読んでいてとても楽しい。英語版と日本語版があります。

(ただし、大抵のガイドブックでハジャイについてのページはとても少ないです。)

【現地に行くのに使った手段】

私のソンクラ大学までの全移動行程をざっと書くとこんな感じです。

★スワンナブーム国際空港着→空港バス→(空港近くのバスセンターまで行く)→バス554番線ドンムアン行き(1時間半くらい。チケットは車内で女性乗務員に行き先を告げて買う。)→ドンムアン空港(バスは道路脇ギリギリに留まる。そして空港は陸橋を渡って道路を跨いだ向こう岸にあるので、重い荷物だと、上り下りがちょっと大変。)→ハジャイ空港→トンさんが車で送迎に来てくれている→ソンクラ大学へ★

日本からは、まずバンコクにあるスワンナブーム国際空港まで飛び、ついで何らかの手段でハジャイまで行く必要があります。

 ちなみに私は、全行程飛行機での移動にしました。チケット手配はインターネットの旅行会社で、格安航空券を探しました。(クレジットカードを持っているなら、各種航空会社のHPから自分で予約も出来るはずです。正規料金ですが。)スワンナブーム国際空港とドンムアン国内線空港は、なんだか成田と羽田の関係に似ていますね。約1時間半離れています。ハジャイ空港まで到着すると、トンさんが車で迎えに来てくれています。また、バンコク−ソンクラ間の往復には、最初列車やバスも検討していました。ガイドブックかHPを参照してみてください。ちなみにバスのHPは、タイ語表記のみでした。

【参考】私が使ったHPです。

・SkyGate:http://www.skygate.co.jp/index.html(国際線)

・シンダイ(バンコク発着専門):http://www.shindai.co.th/index.html(国内線)

・State Railway of Thailand:http://www.railway.co.th/English/index.asp#(列車)

【健康管理について】※医学科の先輩の報告書も参照してください。

・暑い→ソンクラー県の平均気温は29〜32℃と、大変暑いです。無理せず、疲れたら休息を取るようにしましょう。水分補給も。

・建物の中は極寒→建物の中のクーラーは、大抵ガンガンにかかっています。極寒。普段の服装はいわゆる夏服で十分ですが、羽織るものを一枚持っていった方が良いかもしれません。

・食べ物に香辛料がよく使われている→全ての食べ物が辛いという訳ではありませんので安心してください。ただし、私達は普段、香辛料を食べ慣れていませんので、人によってはお腹がびっくりすることがあるかもしれません。また屋台などで焼き物を買う場合は、肉や魚、貝などの生焼けには注意。ちなみに私はよく屋台を利用しましたが、食事でお腹を壊すことはありませんでした。注意しつつ、でも神経質になり過ぎず…位で良いのではないかと思います。

・生水→水道水は日本と水質が違うので、直接飲まない方がいいと思います。(ルームメイトは持参のポットで必ず沸かしてから飲んでいた。)後は屋台の氷やフルーツを洗った水などだと思いますが、私はあまり気にせず食べて、特に体調を壊すことはありませんでした。また寮の廊下にはウォータークーラーがあります。滞在中よく飲みましたが、特にお腹は壊しませんでした。気になる人はミネラルウォーターを買ってください。

・予防接種→医学科の先輩や先生の報告書を見ると、必要・不必要と人によって意見が分かれていました。個人の判断で。私は結局何も打たずに行きましたが、特に何事もなく帰ってきました。医学科の島元先輩によると「タイへ出発する1週間前に三原内科(源藤)に打ちに行った。確かそこが一番安い。抗体が出来るのにはある程度の時間がかかるのでなるべく早くに行った方が良い。私は日本脳炎、A型肝炎ワクチンの2種類。A肝は3回(1回目を1週間前、2回目を出発直前にした。3回目は9月の予定)必要で、予算はだいたい¥7,000。そこの内科医によると“ヨーロッパ・アメリカ以外の地方に旅行に行くなら打っておくべき”だそうだ。」とのこと。渡航先でかかる恐れのある感染症については、以下のHPで調べることが出来ます。(一例)

・FORTH:http://www.forth.go.jp/index.html(厚生労働省検疫所)

【治安】

 現地では自分で責任を持って行動することになりますので、治安については事前に分かる範囲できちんと把握しておきましょう。出発が近づいて来たら、総務課の石川さんにお願いして、トンさんに現地の最新情報を逐一確認してもらうことも出来ます。また2008年に大規模集会があり政治情勢が不安定ですから、今後も注意をした方がいいでしょう。(私の時は帰国が6日間遅れました。)以下で調べることが出来ます。

・海外安全ホームページ…http://www.anzen.mofa.go.jp/index.html(外務省渡航情報)

・Bangkok Post…http://www.bangkokpost.com/(新聞社のサイト。)

【大学の環境】

ソンクラ大学に来て最初に思ったのは「とにかく広い!」ということでした。ハジャイキャンパスは14学部+大学院があります。テニスコートや体育館、セブンイレブンや屋台の広場、湖も構内にあるため、一つの小さな街のようです。構内を全部歩こうとすると1時間以上かかります。

■看護学部の建物■ 全部で3つあります。

写真 番号 内容


1st 各事務部屋、教室、リーディングルーム(インターネット有)。

このビルの1階にウライ先生のオフィスが、3階にトンさんのオフィスがあります。夕方4時にドアが施錠され、パスワードを入力しないと入れなくなります。そのパスワードは、留学生は使えないようです。2ndBuildingと渡り廊下で繋がっています。

2nd 各講義室、先生方の部屋等。1階部分にHealth Promotion and Rehabilitation Center for the elderly.

上階へは常時パスワードを入力しないと入れませんが、留学生は教えてもらえません。

3rd Center for Holistic Health and Eastern Wisdom.

実技練習室や看護学ビデオの視聴覚室、“東洋医学”に関する授業やレクリエーションで使う部屋があります。

■学校内と周辺の設備■

建物 説明

リーディングルーム

(ナーシングライブラリー) PC4台に、看護の蔵書が少々。

曜日によって開いている時間が違う。月-水8:30-18:30、木8:30-16:30、金8:30-19:30、土8:30-20:00、日9:00-17:00


図書館

<メディカルライブラリー> 医学・看護に関する蔵書。2階建て。1階にはインターネットルームがあり、1人1日3時間まで使える。殆どの本は2階にある。「総蔵書数は分からないが1万冊以上はある」とのこと。タイ語と英語の本が半々位。蔵書検索のPCが随所にある。キーボードは、最初はタイ語入力になっている。確かF1キーを押すと英語入力になったと思います。図書館に入るときは、まず入って左側に、学部生ごとの利用者人数をカウントしているパソコンがあるので、該当番号を入力します。(英語表記もあるので分かります。)また、鞄をもって入れないので、入り口にあるロッカーに預ける必要があります。ロッカーの鍵は、利用者人数をカウントしているPCの後ろのカウンターにて、学生証と引き換えに渡してくれます。私は宮崎大学の学生証しか持っていませんでしたが、ちゃんと引き換えてくれました。



売店 朝7時から夜1時まで。水やおやつ、食べ物から日用品まで何でもある。菓子パン1個10バーツ前後、水500mlペットボトル1本7バーツ。


学食 売店の隣。色んなタイの食事やデザート、フルーツ、飲み物などがある。開店時間が不明だが、朝7時くらいから。夜8時にはもう閉まっていた。1食20〜30バーツ位。



セブンイレブン 大学敷地内。寮から歩いて3分。24時間OPEN。隣には本屋さんと、食べ物の屋台が密集した小さい広場あり。


テスコ ロータス(大型スーパー) 寮から歩いて10分。営業時間は7:30から夜11時まで。食料品、衣類、食器、化粧品などなど何でも揃う。外食も出来る。ここと売店があれば日用品に関しては無敵です。日本で買い揃えていき、重い思いをしなくても大丈夫ということです。


新聞スペース 寮の入り口と売店の横で、新聞が読めるスペースがある。が、日付が古いことが多い。


コピーサービス コピーは有料。係の人に原本を渡し、コピーするページをメモに書いて原本と一緒に渡し、コピーしてもらって後で取りに行く。きちんとホッチキスで閉じてくれる。コピー専用係の小部屋ですると1枚1バーツ、図書館は0.5〜0.8バーツ。また、印刷機器や用紙も大変高価なものです。(先生方の部屋などにしかない。)だから可能ならば、プレゼンテーションの資料等、印刷の必要な沢山の資料やデータファイルがあるならば、事前に日本で出来るものについてはやっていく方が良いと思います。(←ただ、あちらで大量印刷が可能かどうかは事前にメールで確認してください。)



【寮の環境】

看護学部の寮。目の前に学食、売店があります。

入り口ドアはパスワード制。出るときは扉左のスイッチを押して開錠します。

門限はありません。

エレベーターに乗り、自分の部屋がある階へ。私は7階でした。

これは廊下の様子。

各階廊下には、寮生がよく利用しているウォータークーラーがあります。冷たい水が飲めます。試しに何日か飲みましたがお腹を壊すことはありませんでした。どうしても心配な人は下の売店でミネラルウォーターを購入しましょう。

部屋の鍵。自己管理です。ルームナンバーが書いてあるので忘れないようにしましょう。部屋のドアと洋服ダンスの鍵が付いています。部屋から出るときは、必ず内鍵を閉めて出ます。その際、中に鍵を忘れたまま出ると当然締め出しを食らってしまいますので注意。

自分のスペース。ベッドと勉強机、小物棚。この後ろに洋服箪笥があります。靴やスーツケース等、何でも沢山入ります。

調理設備はありません。(タイは外食が主の文化です。)どうしてもという場合やお湯が欲しい場合、同室の人が長期滞在の学生なら調理器具を持っていますので、好意で貸してもらえるかもしれません。

部屋は、1スペースに2人。向こうに見えるのがルームメイトのベッドと机。それぞれのスペースに照明とスイッチがあります。となりの部屋と、洗面台・トイレ・シャワー共同。通路で繋がっています。つまり実質4人で1つの空間を共有する形です。

身近な異文化体験その1、シャワー。水しか出ません。また洗濯を自分で行う場合、ここで行うと良いでしょう。1階に洗濯屋さんがあるようですが、医学科生の評判が良くなかったので私は使いませんでした。(システムがよく分からない・衣類にマジックで印を付けられる…等。)洗ったものは、ベランダがあるので、そこに干せます。ハンガーは友達になった学生さんやルームメイトにお願いして、貸してもらいましょう。

身近な異文化体験その2、トイレ。紙を使いません。(紙をうっかり流すと詰まるそうです。要注意。)用を足したら、写真の向かって左側にかけてあるシャワーで、洗い流します。水気が気になる人は、水分拭取り用のタオルを持って入りましょう。

部屋で出たゴミはスーパーの袋などに纏めておき、廊下にあるゴミ箱部屋に、好きなときに捨てに行きます。分別はなし。

【研修内容】

■はじめに

詳細については、報告会時の配布資料と、スケジュール表を併せて見ていただければ、と思います。単位互換が叶うことにより多少の変化が出るかもしれませんが、どちらにせよ学生の姿勢として変わらないことだと私が思うのは『事前・現地入り後に関らず、自分が学びたいと思ったことは、遠慮なく先方に伝える』方が良いということです。学部長も各先生方も、学生の学びたいことを叶えようと最大限動いてくださいます。ちなみに私が事前に提出した、興味のある看護分野は、がん看護、精神看護、災害看護、地域看護の4つでした。1つに絞るも欲張ってみるも、貴方の判断次第だと思います。



■研修時の服装

 私は実習で使っている白衣2セットとナースシューズを持っていきました。しかし現地で病棟に連れて行ってくれた先生に、「私服で良いよ〜(笑顔)」と言われました。しかし私は気が引けたので、あるときは上下ユニフォームで、あるときは上だけ白衣+下は黒ズボン(医学科生の格好みたいなもの。)などで病棟に行きました。病棟以外の場所に行くときは完全に私服。この話や医学科生の報告書を読む限り、あまりにも奇抜な格好でなければ制約はゆるいようです。ちなみに一応…と思い、スーツ上下とフォーマル靴なども持っていきましたが、荷物のスペースをくっただけで、まったく必要ありませんでした。(例えフォーマルな場に招待されたとしても、よっぽどの超高級レストランなどでない限り、少し小奇麗な服装・身なりで十分。)

・病院について

訪れさせていただいた病院は、大学敷地内にある「Songklanagarind Hospital」と、街中にある「HatYai Hospital」でした。

Songklanaralind病院は、タイ南部の医療の中心的役割を担う大病院です。私はここでは、呼吸器病棟(男女別)訪問、化学療法室訪問、放射線科外来の集団療法参加、がんセンターの看護師さんへのインタビューをさせていただきました。以下、私が特徴的だと思ったことについて、抜粋でレポートします。※ココがもっと知りたい!というものがありましたら、最後に私の連絡先を載せておきますので、いつでも遠慮なく!連絡をください。

病棟訪問の際は看護師長さん自ら、病棟の簡単な説明、電子カルテの説明をしてくださいました。また患者さんへのケアや手技を見せてくださったり、実習中の2年生や3年生の様子にも触れることが出来ました。特に驚いたのは、まず病室に、壁という区切りがないということ。病棟はまず、男女別に分けられ、次に容態が安定した患者と急性期(ICU扱い)の患者の病棟の2つにしっかりと区切られています。しかし、「何号室」と部屋になっているのは手厚い治療が必要な方や特別料金で個室に入室している方のみ。後は低い仕切りで区切られているのみでした。基本チームナーシングで、1チーム(8人前後)につき8人の患者を担当することになるそうですが、看護師さんがいつでも全体の様子を把握できるようにこの作りになっているとのことでした。呼吸器病棟ではターミナル期の方も、一箇所に集められては居たものの、個室ではないスペースにいらっしゃいました。もう1つはユニフォームについて。タイの看護師さんは、ユニフォーム+ナースシューズ姿のまま、出勤や外出をしています。日本では厳しく禁じられていることなのに!と、とても驚きました。しかしそれで、劇的に悪影響が出ているというわけでもないようです。そういった違いは、良いとか悪いという問題ではなく、国が違えばそのやり方や良しとする事に違いが出てくるし、またそれは当然のことなのだなあと思いました。…という訳で掲載した写真でも、私は白衣とナースシューズのまま、先生方と外にごはんを食べに行っています。これはさり気無く、日本にいたら中々出来ない経験の1つに含まれていると思います!他にも色々ありますが、あまり詳しく述べることは避けようと思います。是非自分自身の目と耳で確かめて来て下さい。

放射線外来では、患者さんとボランティアのスタッフ、そして地元の高校生による『音楽療法』が行われていました。これは、皆で持ち寄ったお菓子を和やかに分け合いつつ、皆で歌を歌ったり民俗楽器の演奏を聴いたりして楽しんだ後、患者の中で話したい人が自由にマイクを取って自分の闘病体験や日常生活について語り、その場の皆でその体験を共有する…というものでした。語られる体験の中にはとても重いものもありましたが、堅苦しさは全くなく、とても開かれたいい場だなと思いました。

HatYai Hospitalは市内の病院です。私が訪れさせていただいたのは『EMS』(Emergency Medical Service)の、緊急時対応システムを勉強させていただくためでした。トリアージ済の患者をエリア別に分けておくのは、日本のERでも行うことだと思うのですが、ここでびっくりしたのがそのエリアの色が、「RED」「Yellow」という風に、ひと目見ると誰からも(当然患者や家族にも)分かるように大きく表示されていたことです。日本はこういうあからさまな表示をとても嫌いますよね。でもタイの人達は、どうなんでしょうか?Songklanagarind病院でも、そう感じた出来事がいくつかありました。諸々のことを国の違いととるか、医療者主体ととるか…、とても興味深く思いました。『違いを認め合いつつ議論する』姿勢が何故必要なのか、少し分かったように思いました。

・『霊気』について

 これは、2年生で必修の『Eastern wisdom』の中のひとつです。これは日本が発祥ですが、現在は欧米の方が盛んだそうです。宗教や超能力ではなく、簡単に言えば“宇宙にあふれているエネルギーを。自分の手を通じて他者と分かち合うことで、自分も相手も元気になる”という考え方で、誰でも出来るものです。先生はPreeya(プレヤ)先生といって、助産師です。先生の部屋には希望者がやってきて、その方に実際に霊気を行ったり、また病棟の希望者にも霊気を行っています。また週に1回、生殖器疾患病棟の説法部屋に、近くのお寺からお坊さんが3人いらっしゃる、患者・病棟スタッフ、誰でも参加自由の集まりがあります。そこでは皆で祈りを捧げたり、お坊さんの話を聞いたりするのですが、その会が終了した後、希望者は霊気を受けることが出来ます。私は講義を聞いて大変興味をもった旨を先生に伝えました。すると、教室にやってきた人と友人、そして病棟のがん患者とERに運び込まれた患者に直接霊気を行う経験をさせていただくことが出来ました。病棟訪問は毎日のようにされているので、先生の電話番号にかけて連絡をとれば大抵一緒に訪問させてくださいます。また霊気を学ぶ際、演習時には先生から上下白っぽい服装が良いですと言われますので、出来れば着ていってください。現地で買ってもいいと思います。

・地域看護の授業で村を訪問

4年生の地域看護の授業にも参加させてもらいました。今回は地区診断の授業のようです。実践の色合いがとても強く、大変楽しい授業でした。まず小グループに分かれて、ある村に行きます。皆は既に前何回かの授業で、自分たちで本やインターネットから地区情報を集め、また自分たちの足で歩いて自分たちの担当地区の詳細な地図を作っていました。私が参加させてもらった授業では、地域の診療所にいってデータを貰ったり、村人や村長さんに、村の出来事や盛んな産業についてのインタビューをしました。これらを元に、学生は、この地区に今後起こりうる健康問題を考え、そしてどうすればそれが解決するかを村人と一緒に考え、実行に移すのだそうです。実際に村人と一緒に、その問題について取り組むのです。凄く面白そうだ!と思いました。ちなみにタイでは、特別に『保健師』という資格はありません。日本でいう“保健師の業務”は看護師という職業の中に含まれる。という考えのようで、看護師の免許を取れば、地域保健の業務を主にする役職につくことも出来ます。

・災害看護


津波に関する経験を持つスタッフへのインタビューや、先述したEMSサービス訪問、消防署訪問(タイの主要災害は洪水)など、沢山の興味深い体験をさせていただいたのですが、私の中での一番は、タイの学生・インドネシアと中国の留学生たちの前で、プレゼンテーションをさせてもらえた事でした。プレゼンテーションの内容については、私の場合、事前にメールで『日本の災害についてプレゼンテーションをしてください』と課題が出ていました。そして個人的にENPの時間枠で先生方の協力をいただき、自己紹介と宮崎大学医学部看護学科の紹介スライドを作っていきました。その3つを、全てさせていただいくことが出来たのです。そして当日、ふたを開けてみたら、私のルームメイトとその友人達(インドネシアの看護の先生たち)や中国からの留学生、タイの学生が、そろって私のプレゼンテーションを聴きに来てくれたのです。質問や意見もいただき、また外国の方に英語でプレゼンテーションをする場なんて、中々得られないと思います。大変貴重な経験となりました。災害看護に限らず、プレゼンテーションについては準備していくととても喜ばれると思います。事前に先方に「○○について私もプレゼンテーションをさせていただきたいのですが、お時間をとっていただけるでしょうか?」と確認をとればいいと思います。※ちなみに自己紹介のプレゼン+パワーポイントのプリントは、様々な人達との日常会話時にも、大変大変役立ちました。ENPの先生に協力をお願いして、是非作成することをお勧めします。

【研修以外のこと】

・看護学生について

図書館の蔵書がタイ語と英語半々ずつくらい…ということからも分かるように、英語を読んだり使ったりすることが「手段」として認識されているように思いました。授業で普通に英語の教科書も使います。(友人に「今授業で使っている教科書を教えて」と言ったら、分厚い英語の教科書を何冊か差し出されました。)私が行ったときはひと学年130人前後でしたが、今年から200人に増員するそうです。そして男子学生は200人中4〜5人。超レアな存在です。また、実習は2年生の後学期から。病棟に行く前に、学内できちんと戴帽式があるそうです。また、週に2回が病棟実習。2年生は病態が安定した疾患、3年生以上は外科、急性期の患者を受け持ち、1グループ学生8人に対して教員が1人という仕組みです。情報収集→アセスメント→看護計画→実施→評価というプロセスや、記録を毎朝提出して赤字だらけで返却されてくるところなど、私達と一緒でした…。

・毎日17時から、色々なアクティビティが、構内の様々な場所でやっています。誰でもいきなり行って、いきなり参加できます。抜けるのも自由。2ndビルディング1階で太極拳(Tai-chi)、病院の方に抜ける建物の1階で(←すみません、詳しくは教えてもらってください)エアロビクス、3rdビルディング1階で医学部の先生がヨガ(ヨガだけは週1回のみ。金曜日だったかな・・曜日要確認)をやっています。(ヨガの時は希望したら、参加者の事前事後の血圧測定をさせて貰えました。)

・タイマッサージ

3rdビルディングにて。看護科の先生でタイマッサージの資格を持っている人が、場所を借り、人を雇って自分でやっています。たっぷり全身に施行してくれて1時間150バーツでした。安くてしっかりした技術。お勧めです!(ちなみにセントラルハジャイでは足マッサージ30分で150バーツだった。)ちなみに頼めばアロママッサージもしてくださるそうです。

・観光


スケジュールにも載っていますが、週末はGingさんが観光に連れて行ってくれました。サミラビーチ、ハジャイ国立博物館、各所のお寺などです。(大抵のガイドブックには載っています。)他にも学生さんの時間があいているとき、また先生方の好意で、買い物や食事に連れて行ってくださった方もいました。ちなみにタイではバイクが主要な交通手段で、2人乗りも禁止されていません。近場に行くときはGingさんがいつも二人乗りで、街中を飛ばしてくれました。気持ちよかったです♪)

【通信手段】

・インターネットについて

タイのインターネットは、基本的に日本語フォントは表示できません。また、時々繋がりにくいことがあります。学生が構内でネットを使えるのは、リーディングルーム(ナーシングライブラリー)と図書館。(どうしてもの場合は、トンさんのオフィスに行けば使わせてくれると思います。)

大学の外の100A(タイ語発音ヌングロォーイ・エー)通り、寮から歩いて7−8分の所に「X-net」と呼ばれるインターネットカフェがあります。学生のGingさんがオートバイで連れて行ってくれました。1時間24バーツ位。ここは日本語ホームページも文字化けせず表示されます。しかし日本語入力は出来ません。

・携帯電話について

携帯電話は、Tongさんや友人、先生方と連絡をとるのに必須。しかし買うと高い!とのことで、本体はTongさんが貸してくれました。携帯電話の画面表示は最初タイ語になっているかもしれないので、誰かに頼んで英語にして貰うといいでしょう。(※石川さん曰く次回からは何台か、ピーターさんが用意して貸し出してくださるとのこと。要確認)こちらのシステムは変わっていて、コンビ二(セブンイレブン)やスーパーマーケットで、本体に差し込むSIMカードというものを購入し、それを本体に差し込んで使用します。会社はTrueやTH GSMなど色々あります。カードによって電話番号が定められています。またカードによってチャージ額が決まっており、チャージが切れたまま一定期間が過ぎると、そのカード に記された電話番号の使用権利がなくなってしまいます。購入時に、使えるようになる為の操作が、再チャージの時は、お店での入金(セブンイレブンのレジで出来ます。)と再度の操作が必要になります。各操作のやり方は会社によって違うようなので、買った際にお店の人に聞くのが良いと思います。(私はセブンイレブンで質問しましたが、全て親切に教えてくれました。)

← 携帯電話&SIMカードのパッケージ

【終わってから思うこと】

・各アクティビティーで実施させてもらえる具体的な看護技術を、出国前に事前に確認していけば良かった。

→例えば、高齢者への健康教育のところでは、会が始まる事前に血圧測定をやっていました。事前に分かっていれば、聴診器を持っていって参加させてもらえたかもしれなかった。

・自分の学びたい事を何に絞るか?

  →貴方の興味があることを貴方自身で決める…と言ってしまえばそれまでですが…。何か参考になるかもしれないと思ったことを書きますね。私がタイについて特徴的だと思った事項は、“国王を大変崇拝している国”“旧政権の問題(タクシン)が非常に表に出てきている”“日本と同じアジアの国”“仏教色が強い国”“人柄が日本人と通じるところがある”“アメリカレベルの医療水準を目指している点が日本と似ている”“津波の経験がある”“エイズ問題が深刻”といったことです。タイという国について事前に学ぶと、おのずと絞り込めてくるのかなと思います。ソンクラ大学看護学部の留学生受け入れ態勢は、すでに中国やイギリス等のいくつかの大学と提携を結んでいること、また正式な留学プログラムが確立されていることから、沢山の国から留学生が学びにやって来ています。そしてソンクラ大学の看護の先生方の内、留学生を教えていらっしゃる複数の先生方は、すでに沢山のクラスと沢山の留学生を受け持っていらっしゃいます。(私の場合、宮崎大学医学部看護学科からの第1号だった事と、教授(鶴田先生)が同行してくださった生徒だということで、特別に1プログラムに1先生が付きっ切りで付いてくださったようです。←次回からの研修体制については要確認)だから、あちらの大学は、先生も学生も、留学生の受け入れに慣れています。心配する必要はありません。また、簡単な挨拶だけでもタイ語をはなせれば、患者さんがとても喜んでくれます。(タイ語については各種ガイドブックにも簡単な会話集が載っています。個人的には[旅の指差し会話帳]シリーズが、楽しくてお勧め。タイは?です。)また、Tongさんやお世話をしてくれる学生さん、先生方に、やりたいことを積極的に自分から言えば、それが叶えられるよう最大限努力してくれます。そしてこれはどの場面でも、ですが、もし英語が拙くても、一生懸命伝えようとすれば、皆さん丁寧に聞いてくれますし、また必ず分かってくれます。

【英語について】

私は高校時代、まともに勉強をしていなかっただけあり、当初の英語力も、英語を使うということについても、はっきり言って「・・・。」(お話にならない)レベルでした。しかし英語科の先生にアドバイスをいくつかいただき、それを自然な形で日常生活に取り入れるようにしました。また先生方が時間を割いて、学習に付き合ってくださいました。それが結果的に、大きな成果となったように思います。そんな立場から、私が事前にしていったことを書かせていただきたいと思います。

1、 医療単語や、よく看護で使う言い回しを頭に叩き込む。⇒何はともあれ、これ。医療単語が理解できなければ、学習のための会話・意見交換・質問が出来ません。実りが少なくなってしまいます。私はテキストを1冊終わらせていきました。『看護師たまごの英語40日間トレーニングキット』というものです。看護分野単元別に分かれていたので、1単元ずつ学習し、横山先生の部屋でその単元の内容についての口頭チェックやセッションをしていただきました。※お勧めのテキストについて迷った場合は、横山先生に尋ねてみるといいと思います。

2、 日頃から英語を身近に置く。⇒英語になれることが必要だからです。(例:聴く音楽を洋楽にする、ENPで貰ったERのDVDをともかく流しておく、部屋の家具に単語のタグを貼る、英語のWEBサイトを閲覧する、考え事を英語で行うようにする、一言日記を英語で書く)

3、 英語科の先生にお願いし、空いた時間は英会話のセッションをしてもらう。⇒英語を発し、また聴くことが出来なければ、やっぱり実りは少なくなります。その為には英語で会話する機会をより多く持っていた方が良いです。これは、私が大変実感したことです。南部先生が主として受けてくださるかと思いますが、お願いすれば横山先生や玉田先生、ゲスト先生やホワイト先生も時間を設けてくださいます。私はプレゼンテーションの原稿や予行演習を、この時間を使用して先生の協力をいただき、作成しました。

4、英英辞書を使う⇒同じく英語に慣れるためです。最初は先入観で敬遠して「ひーっ」と思っていましたが、中々慣れると面白いです。また辞書の表現は簡潔で万人に分かりやすく書いてあるのが特徴です。学習に合っていると思います。

【ギフトについて】

・絶対ではありませんが、小さなギフトを沢山もっていくことをお勧めします。タイの方々は、本当に手厚くそして友好的にもてなしてくれます。沢山の人にお世話になるので、ちょっとしたギフトが沢山あると、感謝の気持ちを伝える最適な手段になると思います。私は絵葉書70枚(玉田先生からいただきました。)、宮崎のお菓子(ゴーフレット30枚)1箱、自分で買った小物1箱を持っていきましたが、色々あってすぐに足りなくなりました。(鶴田先生と石川さんが持ってきていた小物類のあまりをいただきました。)医学科の先輩のレポートも参考にしつつ、高価でなくて良いので少し気の利いたものを、多めに持参することをお勧めします。日本らしいものが喜ばれたなあ、という印象です。


【この研修で得たもの】

違う国、しかし同じアジアであるタイで私が学んだ一番のこと、それは「人と人との繋がりが持つ力」についてでした。この言葉は、今まで何度も、色々な物語や誰かの話の中で出てきたもので、過ぎて行く日々の中、私はそれがどういう事なのかを忘れかけていました。ですが今回の留学で、私はその言葉の意味を、具体的な出来事を伴って知ることになりました。留学中に沢山の親切をくれたルームメートと他の留学生の皆さん、お世話になったソンクラ大学の皆さん、先生方。そういった沢山の方々と、“連絡先”と“心”を通じて、決して無くならない2つの繋がりを持つ事が出来ました。これからは住む所が離れていてもいつでも、看護についての情報交換や議論も出来ます。勿論心の繋がりは一生消えません。私の世界は一気に広がりました。「看護に国境は無い」という事実に学生の間に触れることが出来たのは、幸せなことだと思います。海外研修は、先生方や職員の方々を始めとして、沢山の方々の尽力によって、実現されているものです。ソンクラ大学で学ばれることが、皆さんにとってきっと、より良いものになると信じています。他の資料や写真については、南部先生にお渡ししていますので、良ければ閲覧してみてくださいね。