企業訪問記

企業訪問記特別編~九州・タイヘルスケアミッション2023に参加しました~


2023年2月8日から11日まで、九州経済国際化推進機構が主催する「九州・タイヘルスケアミッション2023」に出張して参りました。経済団体、官公庁、九州内企業、JETRO、JICA、大学関係者と多彩な業種の集団からなる旅でした。

私はこの旅を通して「東九州メディカルバレー構想」を紹介し、タイの医療経済事情を垣間見ることを目的としました。タイベドジェット航空の固い座席に辛抱して約6時間、バンコク・スワンナプーム国際空港へ到着しました。宮崎の冬から夏日へ一変しました。タイと日本は―2時間の時差があります。

タイ医療機器市場の概要をJETROバンコク事務所のコーディネーターから聞きますと(門外漢ながら感じたことは)、様々な法律上の障壁があり、適切なアドバイス(導き)がないとタイでの医療機器の認可、販路の確立は難しいと感じました。海外進出を考える場合、JETROやJICAが支援してくれるようです。

タイで利用される医療機器は欧米製品が大多数を占める中、パラマウントベッド(PARAMOUNT BED THAILAND)は病院や利用者(介護者)の信頼を勝ち得ているようです。同社のショールームでは、病院や自宅で利用されるベッドやベッド周辺の機器について説明がありました。利用者が過ごす自宅の空間をショールーム内でシミュレーションし、製品の使いやすさを説明していることの事でした。バンコクの労働者は地方出身が多く、親の介護を真剣に考えて同社を訪れる方が多いようです。

パラマウントベッド(PARAMOUNT BED THAILAND)
ショールーム
視察の様子

高齢者施設(The Senizens)は、タイの中流~富裕層を対象とした施設で、急性期疾患の治療後の回復期医療およびリハビリテーションを行っています。また、高齢者の健康増進のための脳ジムや認知リハビリテーション、緩和ケア、褥瘡ケアなど広く活動しています。何より驚いたのは、CEOが38歳の医師であることでした。タイでは医師免許を取得後、企業を経営する人が少なからずいるそうです。その手腕とビジョンに大変共感しました。約20年後にタイも日本と同様の高齢化社会になる中、これから準備していかなければならないことの中に「ビジネス・チャンス」があると話していました。

高齢者施設(The Senizens)
意見交換会の様子

3日目はタイ モンクット王ラカバン工科大学(King Mongkut’s Institute of Technology Ladkrabang)を訪問しました。同校は宮崎大学と協定を結んでいます。私たちは東九州メディカルバレー構想の概要や医工連携に関する研究発表を行い、意見の交換を行いました。タイの教育制度は日本と同じで6・3・3制ですが、裕福層は高校生までに母国語以外に2か国語以上の言葉を使うことが出来るようになり、大学卒業後は欧米に留学する人が多いと聞きました。出席者からも出身大学名に米国の大学(MITやボストン大学)が聞かれました。大変手厚くもてなして下さり感激しました。宮崎大学の学生にはぜひ同大学を訪れて、刺激を受けてほしいと思います。

タイ モンクット王ラカバン工科大学(King Mongkut’s Institute of Technology Ladkrabang)を訪問
東九州メディカルバレー構想の概要について発表
製品紹介

視察以外に懇親会の場で交流できたことが何よりの収穫でした。九州経済会、タイ日本国大使館員、タイで活躍する日本人企業者や医師など、普段、接することのない人達との情報交換は大変話が弾みました。

タイは貧富の差が非常にある国です。裕福層上位1%の資産がタイ全土資産の67%を占めます(2018年、Global Wealth Report)。COVID-19感染流行以来久しぶりの海外旅行でしたが、街中の腐敗臭、交通渋滞、スラム街など体内の第6感が目覚めました。しかし、タイ人の眼差しは鋭く、日本より果たしてエネルギッシュな国かも知れないと感じました。当初、宮崎からタイへどんな医療機器を海外展開できるかを考えて旅を始めましたが、日本がタイと良きパートナーとなりWin-Winの関係になるためには何が必要かを考えるようになりました。私は医療者ですが、12年経過した東九州メディカルバレー構想もそろそろ転換点を迎え、新たな発想を吹き込む必要があると感じた旅でした。


2023.02.14. 企業訪問記