宮崎大学 医学部 医学科 平成15年度 クリニカル・クラークシップ要項
哲学・倫理学〔臨床倫理〕
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●1月15日の説明会でお見せすることができなかった症例と、
国家試験の過去問題の例をアップしておきます。
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1.同一実習期間内の最大受け入れ学生(6年生)数: 8名
2.実習期間: 2週間
3.実習の到達目標
臨床倫理学の目的は、日常診療の現場で生じた倫理的問題を同定、分析し、具体的な解決策を提示することを通じて、医療の質を向上させることにある。その際、倫理原則や倫理綱領と言われるものを、ただ単に「暗記」し、それを現場に「当てはめる」ような方法で行うのではなく、過去、実際に生じた典型的な臨床ケースをベースにディスカッションを行うこと(倫理的症例検討会 ethics case conference:以下ECC)を通じて、日常診療の現場で直面するであろう倫理的ジレンマを擬似体験し、もし自分が主治医であったなら、どのように対処するか、という視点から、実践的な解決策を導き出すための倫理的分析力と倫理的判断力を身に付けることを目標とする。
4.実習の行動指針
@日常診療の現場で生じている倫理的問題に、どのようにすれば気づくことができるのかを学ぶこと。
*忙しい診療の現場であっても、「どうでもいい」と片付けないようにするためには何が必要なのかをしっかり学んで欲しい。「モヤモヤした感じ」を大切にすることの倫理的意味について理解する。
A臨床倫理学の分析手法を用いて、具体的な問題点を挙げ、なおかつ最も重要なポイントを分析し、何が本当に悩むべき「倫理的問題」であり、一見すると倫理問題であるように見えるがそうではないものとを、しっかり区別できるようにする。
B問題の解決策を導き出すにあたっては、決して倫理原則を「押し付ける」のではなく、患者及び患者家族を中心に据え、様々な医療職種と連携しチーム医療の一員であることを自覚しつつ、多くの意見に耳を傾け、最終的には主治医として、どうするべきなのかを悩みながら判断していくこと。
C医療実践にとって必要な「倫理」や「哲学」は、個人の<心構え>や<優しさ>といった性格に由来するものももちろん重要ではあるが、それだけでは何故駄目なのか、ということを具体的な臨床ケースを通じて学ぶこと。
5.実習に当たっての注意事項
最近、医師国家試験に出題される問題の中に「医の倫理」に関連するものが増加する傾向にあり、またいわゆる“禁忌問題”と言われるものに「医の倫理」に関するものが含まれるようになってきている。こうした動向は、臨床現場において医師の高い倫理性が益々求められていることを表していると言えるが、しかし倫理に関する「知識」だけをいかに増やしてみても、それを臨床の現場で活かすことができなければ全く意味がない。他方でしかし、医師に求められる倫理性ということを「高潔なる人格性」ということのみに期待するだけでは、臨床現場における倫理問題に対処することは、やはりできないことにも留意する必要がある。それは、「優しさに溢れる医師」が、いつでも正確無比な倫理的判断ができるとは限らないからである。むしろその“優しさ”ゆえに、倫理的判断を誤ってしまうことは、終末期医療の様々なケースが教えてくれている。患者に「善かれ」と思ってなす行為が、医療者側の価値観のみに基づいてなされるなら、たとえそれが善意からであっても、倫理的判断としては正当化できないことを、実際の臨床ケースを通じて学んで欲しい。
6.診療科等の週間スケジュール
哲学・倫理学研究室に所属する教官は、現在1名のみであるため、医学科・看護学科、および大学院修士課程医科学専攻における担当講義(哲学・倫理学・論理学・生命倫理・医の倫理ほか)の来年度スケジュールが確定するまでは、はっきりとしたことは言えないが、講義時間を自習時間としつつ、基本的に倫理的症例検討会(ECC)を毎日行うことを軸に、以下のようなタイム・スケジュールで行う予定である。
午前 朝9時ミーティング(その後、午後まで自習) 午後 倫理的症例検討会(ESC)
*ただし、午後に担当講義がある場合は、午前中にECCを行い、午後を自習とする場合もある。
*また、ECCの実施にあたっては、学内で行うことを基本とするが、平成14年度より哲学・倫理学研究室が取り組んでいる臨床倫理セミナー(【ベッドサイドの倫理と哲学を語り合うカフェ】)を通じてネットワークのある病院の看護部・各診療科の協力のもと、それぞれの病院に勤務する医師、看護師、臨床心理士、その他のコメディカルと共に、ECC実施に参加してもらうことも検討中である。
〔協力病院の一例:宮崎市郡医師会病院(緩和ケア病棟)、〔以下、看護部〕県立日南病院、
国立療養所宮崎病院、済生会日向病院、小林市立市民病院、ほか〕
7.初日の集合時間と集合場所
集合時間:午前9時
集合場所:哲学・倫理学研究室(福利施設棟3階)
8.実習のための準備、携帯品等
筆記用具、白衣、名札
9.参考書等
A.R.ジョンセン、他著(赤林朗、他訳)、臨床倫理学、新興医学出版社、1997
福井次矢、浅井篤、大西基喜監修、臨床倫理学入門、医学書院、2003
浅井篤、服部健司、大西基喜、大西香代子、赤林朗著、医療倫理、勁草書房、2002
10.当該診療科における、許容される基本的医行為の例示
基礎教育系の研究室であるため、なし。
しかし、症例については「過去」のものであるが、ECCに用いる臨床ケースは匿名化されているとはいえ、実際にあったケースをベースにしている。そこには「生きた患者さんと患者の家族」がいたことを忘れずに臨んで欲しい。また協力病院の診療科、看護部へ赴く際は、失礼のないように留意すること。