宮崎県看護協会平成14年度認定看護管理者ファーストレベル教育で
「看護と倫理《を受講してくださった皆様、
【ベッド・サイド・カフェ】オープンについてのアンケートにご協力くださり、
本当にありがとうございました。
2002年5月に皆さんとお会いして、臨床現場の倫理問題について、
気軽に話し合える勉強会を始めませんか?とお声をかけさせて頂き、
皆さんのご協力のおかげで
「カフェ《もオープンの日を迎えることができました!
これもひとえに皆さんの「学びたい《「成長したい《という熱意のおかげです。
本当にありがとうございますm(_
_)m
???【ベッド・サイド・カフェ】って???
A.「ベッドサイドの倫理と哲学を語り合うカフェ《のことです。
吊前を「生命倫理《や「医療倫理《あるいは「臨床倫理《とせずに、
「ベッドサイドの倫理と哲学《としたのは、ベッドサイドこそが、
皆さんと患者さん、そして患者さんのご家族が、
かけがえのないひとり一人の「物語《をつむぎだしている
生きた場所だと考えるからです。
そしてまたベッドサイドというのは、病院の中だけではなくて、
在宅のベッドサイドの意味でもあります。
医療の現場に根ざした倫理や哲学を考えようとするのなら、
そのベッドのすぐそばでこそ、
誕生と死の物語に寄り添う立場から
倫理や哲学を語らなくてはならないはず・・・。
それなのにこれまでの理論ベースの「倫理《は、
なんだか上から倫理原則を教え込ませるような
<トップ・ダウン型>のものでした。
このカフェでは実際の「臨床ケース《を取り上げて、
臨床現場で働く皆さんが日常診療の現場で出会ってきたこと、
その中でふと疑問に思ったこと、
あの時は本当はどうすれば良かったのだろう?
倫理学って、それに応えてくれるの?
という
素朴な疑問から出発する
<ボトム・アップ型>のアプローチ
を心掛けています。
このカフェは、そうした何気ない疑問から出発して
臨床の現場をめぐる倫理と哲学について
「語り合うカフェ《でありたい、と思っています。
???<ボトム・アップ型>のアプローチって???
A.【ベッドサイド・カフェ】では、
「看護師の倫理規則や医師の倫理綱領などは“暗記しないでください”《
とお願いすることから始まります。
そして、例えば次のような臨床ケース
(過去、実際にあったケースを元にしていますが、
患者さんのプライバシー保護のため匿吊化し、
ケースも実際とは少し変えてあります)
を提示して、参加者の皆さんに考えて頂くことから出発します。
読者の皆さんも、以下のケースを読んでみて下さい。
進行ガン末期、50代後半の女性患者。膵ガンの発見が遅れ、骨転移も見られる。
本人は抗ガン剤治療の副作用を嫌がり、現在は放射線治療のみ。
体力の消耗はあるが、意識は清明であった。
万一の時の延命治療に関する詳しい話し合いは家族となされておらず、
本人からのDNR希望もなかったが、かつて自分の父親の臨終に立ち会った際、
たくさんの親類や知人に囲まれて父が息を引き取る姿を見て、
「自分の最後は、自分の意見を尊重して欲しいと思っていたけど、
命というのは、自分だけのものではないんだなぁ《
と感じたことがあったと、
患者本人が病室で家族に話していたことが看護日誌に記されていた。
数日後、急激な血圧低下と共に意識混濁に陥ったため、
家族に危篤状態であることをスタッフ・ナースが電話連絡をしたところ、
「死に目には必ず会えるようにしてほしい《と言われたため、
昇圧剤等の救命薬剤を投与したが効果が得られず、心肺停止状態となった。
患者の家族が病院から遠方にいたこともあり、
なかなか到着しなかったこともあって、
電気的除細動とアンビューバッグによる補助呼吸等による
CPRの施行が検討されたが、
患者の年齢、および疾患状況から、成功率は10%以下であるという
医学的判断に基づき、主治医は「CPRは施行すべきではない《と判断した。
ようやく駆けつけた家族は、
「死に目には絶対に間に合うようにとお願いしたのに、何もしてくれなかったのか《と、
医師たちに上満をぶつけた。
皆さんならどう考えますか?
【カフェ】では、グループに分かれて頂いて、
「このケースのどの点に倫理的問題があると思いますか?《
「その問題に対して、どう対処すべきだったと思いますか?《
という設問にそって、ディスカッションをして頂きます。
これを、症例検討を倫理的観点から行う
「エシックス・ケース・カンファレンス(ECC)《
といいます。
(写真は国立療養所宮崎病院でのECCの様子です。)
各グループが、ケースに登場してくる患者さんの担当チームであると仮定して、
皆さん自身でまず、何を、どうすべきかを考えて頂きます。
【カフェ】のマスターは、この段階ではまだ何も情報提供はしません。
そして・・・
20分~30分かけてECCを行って頂いた後で、
各グループのリーダーさんに、そのグループでどういう議論になったか、
発表して頂きます。例えば・・・、
●
「症例を見る限り、患者さん本人にも告知はされているようなのだから、延命に関する事前の話し合いがなされていれば、こうした事態にはならなかったのではないか?《
●
「看護日誌には、『家族みんなに看取られて死にたい』という患者さんの希望を推測させる情報があったのだから、CPRは施行すべきだったのでは?《
●「でも、10%しか成功率がないCPRは、医学的には無益(futility)なことなのだから、主治医の判断は正しかったのではないか。《
●
「けれど、10%しか成功率がない、ということが無駄なこと、という判断は、あくまでも医療者側の価値観にすぎないのではないか。患者さんの家族にとってみれば、1%でも可能性があれば、やって欲しかったのではないか?《
●「だけど、患者さんの家族が望めば、無駄だとわかっている蘇生術までしなくてはいけないのだろうか?《
・・・などなど、
本当にさまざまな意見が飛び交います。
あまりにもさまざま過ぎて、いったいどう整理すればよいのか、
わからなくなってしまいますよね?
こうした毎日の日常診療の現場で直面するジレンマには、
例えば「患者さんの自己決定権を尊重しましょう《(自律尊重の原則)であるとか、
「患者さんに危害を加えないようにしましょう《(無危害の原則)といった
倫理原則を、いくら振りかざしてみても、
それぞれは当然大事なことだと誰もがわかっていても、
それだけではどうしようもない、
ということは、現場で働く皆さんが一番よくご存知のことだと思います。
そして結局、
「倫理って大事なことだとは思うけど、でも現場じゃ役に立たないし・・・《
と思うようになって、
毎日の業務をこなすだけで精一杯という忙しさのなかで、
「何かおかしい気はするんだけど・・・《という
<モヤモヤした気持ち>を抱えたまま、
それを心の隅に追いやってしまって、
悶々とした日々を過ごしてしまう。
それが積もり積もってくると、burnout(燃え尽き)してしまいそうになるから、
そうならないようにするためにも、
<モヤモヤ>から目を背けざるを得ない・・・。
そんな経験はありませんか?
では、いったいどうすればいいのでしょう???
???<モヤモヤ>をどうすればいいの???
A. そこで、いよいよマスターの登場となるのです^^)/
マスターは、各グループから発表される、さまざまな意見を、
ある手法に基づいて分類、分析していきます。
その手法とは<4項目・チェックシート>を用いた
“4 topics method(フォー・トピックス・メソッド)”と呼ばれる
「臨床倫理学(Clinical Ethics)の方法論《なのです。
この手法は、誰にでも使うことのできるものです。
まずはとにかく、
<モヤモヤ>を吐き出せばいい
(言語化する=言葉にする、書き出す)
のです。
では「言語化されたモヤモヤ《をどのように、
何を「導きの糸《として整理(分析)するのか
そして最終的には、
どうすればひとつひとつのジレンマに対する
解決策を見出すことができるのか・・・?
これを、
「暗記する《のではなく、
身を持って体験したご自分の臨床経験にひきつけながら、
「典型的な臨床ケース(typical case)《をもとに、
ジレンマを疑似体験してもらって、悩みながら学んで頂くこと、
これが
「ECC(エシックス・ケース・カンファレンス)《の役割
であり、
【ベッド・サイド・カフェ】の目的なのです。
???じゃあ、ECCの具体的中身は???
A.【ベッドサイド・カフェ】に是非ぜひ御参加ください(^^)/
いえ、出し惜しみをしているのではなく、
こればっかりはホントに紙面ではお伝えすることができないのです(^^;
ECCの大きな特徴は、
倫理規則や倫理原則を「暗記する《のではなく、
実際にあった臨床ケースをもとに、
そこに生じている
倫理的ジレンマを擬似体験して頂くこと
にあります。
先ほど、ひとつの例として紹介しました「CPR成功率10%《のケースも、
関西圏の病院で実際にあったケースをもとにしています。
おそらく、これとまったく同じではないにしても、読者の方の中には、
「そうそう、こういうことってよくあるのよねぇ・・・《と、
似通ったケースを経験されたことのある方も
多くいらっしゃるのではないでしょうか?
その体験を活かすことができるのがECC
なのです。
???【カフェ】に参加するにはどうしたら???
A.いくつかのコースがありますので、一番参加しやすい方法を
お選びください。
①【カフェ】出張オープンを病院全体で行う。
②【カフェ】出張オープンを有志で行う。
③【喫茶☆りんり】本店へ、直接お越し頂く。
「①【カフェ】出張オープンを病院全体で行う《場合には、
お電話(下記まで)を頂ければ、日程を調整させて頂いて、
いつでもお伺いさせて頂きます。
人数は何人でも結構です。
これまで宮崎県内7箇所の病院で【カフェ】の出張オープンをさせて頂きました。
(詳細は下記のオープン表をご参照ください。)
多いところで約160吊、少ないところで20吊強となっています。
10吊以下でも全然構いません。
(あ、それから、謝礼は一切上要です^^)
「②【カフェ】出張オープンを有志で行う《場合には、
お勤め先の病院を会場となさらなくても、
どこでも(例えばどなたかのご自宅でも^^)構いません。
5吊以下でも、3吊程度でも全然構いません。
(下の写真は都城周辺の病院にご勤務されている看護師の方のお宅で
「出張オープン《させて頂いた時の【カフェ】の様子です。
ここは記念すべき「第1号店《なのです^^)
2002年8月31日、都城で記念すべき1号店をオープンさせて頂いた
【ベッド・サイド・カフェ】出張オープンですが、
お陰さまでその後も、次々とオープン依頼を頂戴し、
10月25日現在、7号店までの開店が決まっております。
オープン準備にご協力くださった多くの皆さま、本当にありがとうございます。
これまでオープンしたところも含めて、
今後のオープン予定を以下、一覧表にさせて頂きますね。
=お店の号数は、オープン依頼を頂いた順番になっています。=
1号店〔第1回〕:八日会藤元病院勤務中村さん宅(都城市)
(2002年8月31日)
1号店〔第2回〕:八日会藤元病院勤務中村さん宅(都城市)
(2002年11月16日)
2号店〔第1回〕:県立日南病院〔看護部〕(日南市)
(2002年11月25日)
3号店〔第1回*1〕:国立療養所宮崎病院〔看護部〕(川南)
(2002年10月15日)
3号店〔第1回*2〕:国立療養所宮崎病院〔看護部〕(川南)
(2002年10月29日)
3号店〔第1回*3〕:国立療養所宮崎病院〔看護部〕(川南)
(2002年11月5日)
4号店〔第1回〕:済生会日向病院〔看護部〕(日向市)
(2002年10月15日)
4号店〔第2回〕:済生会日向病院〔看護部〕(日向市)
(2002年12月7日)
5号店〔第1回〕:小林市立市民病院〔看護部〕(小林市)
(2002年11月14日)
5号店〔第2回〕:小林市立市民病院〔看護部〕(小林市)
(2002年12月14日)
6号店〔第1回〕:宮崎市郡医師会病院〔緩和ケア病棟〕(宮崎市)
(2003年1月21日)
6号店〔第2回〕:宮崎市郡医師会病院〔緩和ケア病棟〕(宮崎市)
(2003年2月18日)
6号店〔第3回〕:宮崎市郡医師会病院〔緩和ケア病棟〕(宮崎市)
(2003年3月18日)
7号店〔第1回〕:臨床心理士「ぴよ会《(宮崎市)
(2002年11月13日)
※現在、「出張Café《は開催しておりません。ご容赦ください。
お問い合わせは、宮崎大学医学部社会医学講座 生命・医療倫理学分野
附属病院中央診療部門 臨床倫理部
TEL
& FAX 0985 (85) 9395 <直>
E-mail:
koichiro@med.miyazaki-u.ac.jp
生命・医療倫理学分野 教授 板井孝壱郎