病理部の仕事

病理診断科・病理部では主に患者様から採取させていただいた体の一部(組織検体、細胞診検体)を顕微鏡で観察し、癌かどうかなど診断する仕事です。単なる検査とは異なり、様々な情報から”最終診断”といわれる病理診断を行い、これをもとに臨床の先生方は治療方針等を決定します。検体は臨床検査技師が、以下の過程でガラス標本を作製し、病理医はガラス標本を顕微鏡で観察し診断していきます。

主な仕事として、組織診断、術中迅速診断、細胞診断、病理解剖が行われています。

組織検体からガラス標本まで

(左:パラフィンブロック。茶色の部分が組織、その周囲の半透明、白色の部分はパラフィン。右:染色したガラス標本)

患者様から採取された組織は、そのままでは顕微鏡で観察できません。以下の流れで作製しますが、組織のホルマリン固定、切り出し、パラフィンブロック作製、薄切、染色まで最低でも数日かかり、さらに病理医が作製した標本を顕微鏡で観察し診断します。このような理由で病理診断は通常の血液検査などと比べて結果がでるまで時間がかかります。また標本作製は、主にトレーニングを受けた病理の臨床検査技師が行います。

1.組織のホルマリン固定

組織はそのままにしておくと酵素の働きで変性・壊死をおこします。これを防ぐため、採取された組織はなるべく速やかにホルマリンという液体へ安置します(ホルマリン固定)。

2.切り出し

(切り出しの様子。病理医が診断で必要な部位を判断し、標本作製のため、小さく切り取る)

大きな手術材料などは、ガラス標本を作製するために、必要な部位を、決められた大きさに切り取ります。これを切り出しといいます。生検などの小さなものは、切り出しは必要なく、次のパラフィンブロック作製へ進みます。

3.パラフィンブロック作製

(パラフィンブロック作製の様子)

ガラス標本を作製するおおもとの塊”パラフィンブロック”を作製します。”パラフィン”は皆様ご存じのろうそくの”ろう”で、溶かしたろうに組織を入れ、これを冷やすとパラフィンブロックが作製されます。パラフィンブロックは半永久的に組織を保管でき、数年後に別の部位に腫瘍が出てきたときに転移かどうかの確認、最近では遺伝子検査も行われています。宮崎大学病理部では病理診断後も大事にパラフィンブロックを保管しています。

4.ガラス標本作製

パラフィンブロックをおよそ数μmと非常に薄い厚さで切り(薄切)、これをガラス標本に張り付けます。薄く切った組織は、無色ですが、核を青紫、細胞質を赤く染めることで、細胞の形態がみえてきます(染色)。

組織診断

(診断の様子)

患者様から採取された組織が複雑な工程を経て、ガラス標本が作製されます。病理診断は、病理専門医の資格を持った病理医が診断することが法律でも定められています。患者様の病歴や画像所見などの臨床情報とあわせて、ガラス標本を観察し、病理診断します。病変部を実際にみることにより、病気の本質を見極めます。炎症か腫瘍か、癌であれば手術で取り切れているか、抗がん剤や放射線治療の必要性など、治療方針に役立つ情報を臨床医に提供します。

術中病理診断

(術中病理室)

手術中に行われる特殊な病理診断で、採取された検体を凍らせて標本作製し、10-20分程度の短時間で執刀医へ報告します。全ての手術に必要ではなく、手術前に検体採取が難しい卵巣腫瘍、脳腫瘍や、画像で判断できない癌の広がりなどを判断します。術中病理診断の情報も含めて手術の方針が決定されていきます。

細胞診診断

(細胞診の顕微鏡像)

子宮頸部や喀痰、尿、胸水・腹水などに含まれる細胞をガラス標本に塗抹(ぬりつけること)し、染色して顕微鏡で観察します。はじめに細胞検査士が観察(スクリーニング)し判定後、細胞診専門医(当院では資格を有する病理医)と一緒に細胞診断を行います。悪性や癌になる前の病変(前がん病変)の有無を判定・診断します。

病理解剖

不幸にして亡くなられた患者様に対し、ご遺族の同意の元に、患者様の死因や病態究明のため病理解剖が行われます。