研究室紹介

当研究室について

当研究室は、多岐にわたる分野での研究に挑戦している、非常に多様性に富んだ環境です。私たちは、看取りの研究からKDBを含むビッグデータの解析、地理情報システム(GIS)を活用した保健活動、災害対策まで、幅広いテーマに取り組んでいます。このように多岐にわたる研究領域は、私たちの研究室が他にはないユニークな視点で問題解決にアプローチできる理由の一つです。

研究室の規模は小さくとも、その柔軟性と開かれた姿勢が、他の研究室や機関との積極的な連携を促進しています。この協働により、さまざまな専門分野の知見を統合し、社会に対してより大きな影響を及ぼすことを目指しています。私たちは、異なるバックグラウンドを持つ研究者たちが集い、知識を共有し、新たな発見へとつながる協力の場を提供しています。

私たちの研究室は、学際的な研究に対する深い情熱を持ち、未来の保健活動や災害対策に貢献できる新しい知見を発見することを目指しています。新たな挑戦を恐れず、さまざまな分野の枠を越えて協力することで、社会的な課題解決に貢献する研究成果を生み出し続けていく所存です。

「地域包括ケア」と「つちのこ」について

在宅ケアの領域では「地域包括ケアシステム」の構築が目標とされています。当研究室の「地域包括ケア」はもちろんそこから引用したものです。ですがそれだけではありません。研究として様々な人たちと連携し、様々な取り組みに調整し、それを社会実装に、実際のケアにつなげていきたい!そんな思いが込められています。

皆さんはつちのこを見たことがありますか?みたことある人はなかなかいないでしょう。つちのこはそれほど珍しい生き物です。私たちは、とても珍しくて、誰もがびっくりするような研究を目指しています。つちのこにはそんな思いが込められています。ほんとはカタカナでツチノコと書きたかったのですが、地域包括ケアの「ケア」がカタカナで切れ目がわかりにくいのでひらがなにしました・・。

 

研究テーマ:看取り

本研究室の板谷研究員は、石川県羽咋市の専門職や住民、行政職員らと協力し、「看取り」に関する活動を推進してきました。これまでの調査から、多くの人が住み慣れた自宅での最期を望んでいることが明らかになりました。しかし、現実には約8割の国民が病院で亡くなっており、このギャップが課題となっています。2019年に羽咋市で実施した調査では、市民の多数が自宅での最期を望む一方で、実際に自宅で看取りを受けることの難しさを感じていることがわかりました。

この問題に取り組むため、私たちは専門職の協力強化やスキル向上に努めてきました。在宅での看取りを実現するには、在宅ケアを提供する専門職の力が不可欠です。さらに、地域住民自身が自分たちの人生の最終段階について積極的に考えることも重要です。しかし、自分の最期について具体的にイメージすることは難しいと感じる人も少なくありません。そこで、私たちは自分たちで看取りに関する動画を制作しました。演じるのは俳優ではなく、私たち研究室のメンバーです。この動画は羽咋市の公式ウェブサイトで視聴いただけます。ぜひご覧ください。

研究テーマ:KDB等ビックデータ解析

様々な社会課題が複雑に山積する今日、限られた行政資源の中で効果的に課題解決を行うためには、部局横断的な連携体制と客観的で科学的な根拠に基づいたエビデンス・ベースド・ポリシー・メイキング(EBPM)の実践が重要です。一方、専門分業に慣れ親しんだ自治体では部局を横断することのハードルが高く、その結果としてまだ多くの自治体でEBPMが適切に運用されていないのが現状です。私たちは石川県羽咋市と連携し、各部局が保有するデータの横断的な連結モデルを開発しました。また、健康分野のデータ解析例を通じて、行政データの連結の有効性について議論しています。本研究の成果は、横断的データ連結を構想する自治体のモデルケースです。連結システムには、仮想データ結合システムであるダイナトレックを使用しています。この取り組みは産官学連携による研究です。

かみ砕いて説明します。行政機関は様々なデータを保有しています。それらを横断的に結合し分析することで、データに基づく政策が可能になります。しかしながら行政は縦割りで、部署が変わればデータの記述方法すら変わってしまうことがしばしば、部署をまたいでのデータ結合はなかなか難しいのです。私たちはこれを解決するために、データの整理、結合のための暗号キーの付与などを行い、横断的結合を行う方法を構築しました。その過程においては、仮想的にデータを結合するシステム、ダイナトレックを導入しており、これは正に産官学連携のプロジェクトです。横断的に結合されたデータを分析することで、例えば健康課題に関連する社会的要因が見えてきたりします。この方法は全国の自治体で適応可能であり、非常に大きな可能性を秘めています。

 

 

研究テーマ:地理情報システム(GIS)を活用した保健活動

 調査の一例「ベトナムにおける枯葉剤散布と低体重出生時の関連性」

この研究では、ベトナム戦争時に散布された枯葉剤と低出生体重児の関連について検証しています。この調査は、金沢大学医薬保健研究域の城戸教授が長年にわたり取り組んできたプロジェクトの一部であり、JICAの支援を受けて行われています。具体的には、低出生体重児の疫学データと枯葉剤が散布された飛行機の航路(「ハーヴィマップ」に記録されている)との関係を、地理情報システム(GIS)を用いて分析しました。また、実地でのフィールドワークを通じて、現地の当事者から話を聞き、地形や生活環境を直接観察しています。

地理情報システムを使うことで様々な分析ができ、また地図上に落とし込むことで様々なデータが「可視化」されます。専門家でなくても「可視化」することで、誰にでも理解可能なものに変わる!というのが地理情報システムの強みです。ですが、地図を見るだけでは十分ではありません。実際に現地に足を運び、実際に目で確かめることで本当の保健活動につながります。

なお、この調査はJICA、ハノイ医科大学、フーカット医療センターの国際共同プロジェクトです。

 

 

研究テーマ:災害支援

 2024年3月8日~10日 能登半島地震・現地調査

岩手医科大学の佐々木先生、大阪医科薬科大学の堀池先生と共に能登半島地震の現地調査を行いました。今回は、主に仮設住宅の設置状況を確認する目的で珠洲市、輪島市、志賀町、穴水町、七尾市、内灘町を訪問しました。動画は同じ内容でふたつ、360度動画とリフレーム動画(通常の動画)があります。先送りボタンで次の動画に移動できます。動画の右上「1/26」となっているところが動画のリストです。

 

 当事者参画型災害備えシステム・K-DiPS(ケーディップス)

K-DiPS Soloは個人が自己情報を入力管理して、有事に備える個人版のスマホ用アプリです。医療的ケア児や難病、事故などによって医療機器やケアが必要な方など、災害時に支援が必要なすべての方と家族が、支援者と一緒に、自身の心身状態や必要な医療衛生材料などをアプリに保存しておくことで、有事の際にDMATや医療従事者に情報を開示して、迅速な治療や看護、搬送に役立てることができます。

K-DiPSは高知県立大学の中井先生がリーダーを務めるプロジェクトです。