医学生/研修医/入局希望者向け Q & A #17 「炎症性腸疾患診療のやりがいと大変だと思うことを教えてください。」
医局員ブログ
Answer
炎症性腸疾患では特定疾患である潰瘍性大腸炎、クローン病を中心に、腸に炎症を生じる病態の診断、治療を行っています。細菌やウイルス感染、薬剤、腸管の虚血や自己免疫など、様々な原因で腸炎は発症します。原因によって治療法が大きく異なる場合があり、他の消化器分野と同様に正確な診断を付けることが重要です。胃や大腸、必要時は小腸まで内視鏡検査を行い、内視鏡の所見と患者様の情報を照らし合わせて、診断、治療を行うのが炎症性腸疾患診療の流れになります。
活動性の腸炎では腸管安静のために食事を止めることが多々あります。生きることの楽しみの一つである食事がないことは患者様に多大な負担を与えます。もし誤診をすれば、炎症が長引くことで更なる負担に繋がります。診断を誤らずに適切な診療をしなければならない、というのは医療では当たり前のことですが、診療において大変なことだと思います。しかし、それと同時に適切な診断、治療が患者様の負担を緩和できるというのは、炎症性腸疾患診療のやりがいの一つだと感じています。
私たちが診療する機会が特に多い潰瘍性大腸炎、クローン病は発症の原因が明確にわかっておらず、完治することが難しい疾患です。しかし、内服薬や点滴治療、栄養療法を適切に併用することで、炎症を抑えることができます。炎症が再燃する可能性があることから、この状態を完治ではなく、寛解と呼びます。寛解状態であれば病気がない方と同様の生活を送ることができます。患者様と二人三脚で寛解状態を目指すこと、そして寛解状態を維持することが潰瘍性大腸炎、クローン病診療の目標であり、やりがいだと思います。
執筆 消化器内科 医師(宮崎大学医学部 2019年卒)