● 旅費(航空券)
楽天トラベルで予約。福岡出発組、関西出発組がいた。予約ではFIXを確認すること(タイでの可能滞在日数)、福岡→バンコク→ハジャイの往復FIX30タイ航空で航空券代\70,000、空港使用税その他を含めて\86.115が一番安かった。ハジャイにはみんなで同じ便で着くように変更した。(変更や確認は電話が確実!)しかし、バンコクのスワナブーム新空港の利用発着本数制限に伴ってタイ航空の国内線の発着空港がドンムアン空港(旧国際空港)へ移管となった。予約した国内線は翌日の便に代替されてしまった。全員、航空会社の用意したバスで移動、バンコク市内の素敵なホテルで一泊。不幸中の幸い?
● ワクチン
タイへ出発する1週間前に三原内科(源藤)に打ちに行った。確かそこが一番安い。抗体が出来るのにはある程度の時間がかかるのでなるべく早くに行った方が良い。私は日本脳炎、A型肝炎ワクチンの2種類。A肝は3回(1回目を1週間前、2回目を出発直前にした。3回目は9月の予定)必要で、予算はだいたい\7,000。そこの内科医によると、ヨーロッパ・アメリカ以外の地方に旅行に行くなら打っておくべきだそうだ。本学のM山先生によると「必要ない」。各自の判断で。
● 海外旅行保険
必要かどうかは誰も知らなかったので、とりあえずインターネットで検索して個人で損保ジャパンの海外旅行保険に加入した。\6,240で、一般的な保障内容。「留学」という区分があって、他の区分より少し安かった気がする。しかし、本プログラムはクリクラの実習先なので、本来は学校側からの保険がおりるのでは?という疑問は未解決なので回答を求む。
● 教科書
もちろん各自の判断で。私はネッター解剖学アトラス、イヤーノート、harisson Principalを持って行った。ちなみに電子辞書なし。QBなし。教科書類(もちろん英語!)は大学図書館で借りられる。しかし、留学担当の事務の方は図書館秘書に連絡したといっていたが、図書館ではまだ私たちの貸し出し許可がおりておらず、結局最終日まで一度も本を借りることはなかった。
● 通信手段
私のvodafoneは国際電話もかけられたが、メール1通\100、通話1分約\350なので日本の携帯をそのまま使うのは勧められない。私も含めメンバーの半分くらいは近くのショッピングセンター等で携帯電話を購入した。価格はピンキリ、安いのは\2500くらいから。タイの学生とも簡単に連絡が取れるし、日本へも安くでかけられるので○。誰かタイの学生に連れて行って一緒に買って貰うと良い。日本の携帯事情とはだいぶ違う。携帯本体とUSIMカードというものを別々に買う。また、使用の際にはプリペイドカードを買って、シリアルナンバーにアクセスしてチャージしてからはじめて使える。USIMカードを他の携帯につっこむとそれを自分の番号の携帯として受けることができる。これは日本では違法でできないことになっている。問題は(私もそうだった!)英語で電話する、ということに抵抗があること。ほとんどの人はあまり経験したことがないと思われる。しかし。これも英語の勉強の一つだと前向きに!
● 服装
基本的には黒のパンツに白衣が良い。先生たちはかなり自由なスタイルだったが(完全に私服の人もいた)学生はだいたい黒のパンツだった。白衣は日本では1週間に1回の洗濯で良かったのに、タイでは毎日かなり汗をかくので毎日変えなくてはならなかった。私はケーシーと長袖白衣を1枚ずつしか持って行かなかったのでとても困った。白いシャツで代用した。初日にネームプレートが配られるのでそれを着けよう。実習以外ではたいてい半袖の服を着た。移動するバスの中などはエアコンがかなり効いていて(しかも調節できない)寒いこともあった。
● ドミトリー環境
 
私たち女4人は、看護師寮の様な棟の一室で生活した。もちろん大学構内にあって病院も近い。すぐ近くに小さな生協のような店があり、歩いて1分でセブンイレブン、歩いて5分でテスコという大きなショッピングセンターがあってとても便利だった。テスコに行けば食料品、衣料品、日曜雑貨、電化製品、ケンタッキー、携帯、ほとんどなんでも揃う。郵便局も近い。棟の名前はPra-Sarn-Jai1(プラサンチャイヌーン)という。「どこに住んでいるの?」とよく聞かれるし、タクシーで帰る時にも必要なので住んでいる場所の名前は覚えるべき。玄関から入るとトイレ(水洗!)と洗面台とシャワーが一つになった場所と、キッチンがまずある。流し台、冷蔵庫はあるがガスコンロはない。ほとんど自炊することはなかった。タイでは外食した方が安い。広いリビングがあって、テレビ、ソファー、食卓があった。そして部屋が2つでそれぞれにベットが2つずつあったので、分かれて部屋を決めた。どちらにもエアコンがあった。部屋にはクローゼットが一つあり、2人で使用。4人とも実習科が違っていたので朝出る時間も帰ってくる時間もバラバラだったのに部屋の鍵は一つしかなかった。許可を取って、近くの鍵屋さんで3つ複製してもらったが料金は自腹。蚊取り線香をほぼ毎日たいて蚊対策をした。コンセントの穴は日本のと同じだが、変圧器が必要。パソコンは不要(電源コードの途中についている黒い四角い箱は何と変圧器らしい)。滞在中に突然停電したことがあった。何年かに一度の定期検査のためだったらしいが、何の予告も無しにしかもかなり長時間だったのでかなり困った。構内の地図が頭に入っていないと迷う。事前に確認できれば良かったことの一つ。
隣の棟は医学部の学生の寮でほとんどの学生はそこに住んでいて、何か用があるときは近くて助かった。
学生寮の1階は机と椅子のある広いピロティになっていてそこでは無線のインターネットが使える。時間があればみんなそこに集まって情報交換。待ち合わせにも使う。うちの大学でいう「コーラ部屋+ヒポ前」みたいなものだった。
● 洗濯
寮には洗濯機がなく、一番困ったのは洗濯だった。部屋まで回収、仕上がったものを届けてくれる“洗濯屋さん”がいて、雇ったら良い、というアドバイスをもらったが料金が煩雑なのと誰も連絡先を知らなかったということでできなかった。近くに2軒、洗濯を請け負ってくれるランドリーがあった。しかし、だいたい朝9時から5時までしか営業していない上に水曜日は定休日、それ以外にも不規則に休むために、かなり苦労した。朝早い実習だと預けられないし、夕方帰るのが遅くなって受け取れないこともあった。また、預けた服にはペンで印がつけられ、紛失、他人の服との間違いも多々あり。唯一の救いは、洗濯のみとアイロンがけは別料金だが、かなり安かったということだ。たくさんあっても\500もしなかったかも。コインランドリーというものはないのでそこを利用するか、大切なものは各自で手洗いするしかない。
● インターネット環境
図書館や学生パソコン室があって、そこでインターネットを使える。使用できる時間が限られていて、日本語は使えない。私は自分のノートパソコンを持っていった。病院内にある、“communication center”のようなところにパソコンを持って行って設定してもらったら快適に使えるようになった。そのパソコンは後々の学生が使えるように留学担当者に預けたので、ぜひ活用しましょう。Skypeはとても便利。
● 食事
朝は、前の日に買っておいたヨーグルトなどを食べた。昼は院内で食べる。私はERを回ったがそこにはスタッフのために毎食事が用意されているので、朝食、昼食ともそこで食べることが多かった。夜は大抵は学生がどこかに連れて行ってくれる。構内、院内にも食堂はたくさんある。また、月・水・金曜日には構内で市場が開かれる。いろんな食べ物があるのでそこで済ませたり、買ったりした。慣れない食生活で私たちのほとんどは始めの週におなかを壊した。日本の下痢止めの薬が効くかどうかは分からないが、必要なら持って行った方がよい。
● 支給
大学側から生活資金が支給される。詳しい金額は忘れてしまったが確か6000バーツ(\18,000)ほどだった。
● 週末観光
ソンクラの近くにはとてもきれいで有名な観光スポットがある。着いたその日や週末には、ソンクラ出身の学生や、Dr.Vichaiに観光案内してもらった。ツアーの申し込みやホテルの予約など、すべてしてくれてかなりお世話になった。
● 実習
メモ帳必須。聞き取れない言葉や分からないことは紙に書いて、絵で説明してもらうとわかりやすい。自己紹介の時、その人の名前も書いて示してもらう方がいい。例えば「私はタンです」とその場で言われてもあとでまったく同じようにはなかなか発音できない。タイ語は微妙な発音が重要なので、カタカナで書いている音をそのまま発音しても通じないことが多い。アルファベットで書いてしかもアクセント記号も付けてもらえば、正しく失礼のないように記憶できる。
患者さんとのコミュミケーションはほとんどできなかった。タイ語でないと通じないからだ。それで、「痛いですか?」というタイ語を習って、ある患者さんに聞いてみたら通じた。ほんのささいなことだがとても嬉しかった。事前に少しでもタイ語を覚えるとよい。
● 実習日程と内容
タイへ行く前に希望の実習科を提出する。だいたいは希望通りにいくようだ。私は4週間のうち、最初に2週間ERで次の1週間を市中病院(6人一緒)、最後の1週間を感染症内科という日程であった。
【ER】救急診療部内見学、救急車内見学、レジデントのレクチャー(呼吸器挿入テクニック・癌救急)、レジデントの勉強会(小児二次救命処置、腹部大動脈瘤破裂)、6年生のレクチャー(手の外傷、二次救命処置)などに参加させてもらった。また、患者の身体診察(血圧測定、聴診、触診etc.)、処置(傷の縫合、胃洗浄、心肺蘇生)などをした。前年に宮大で実習をしていたJameが同じ時期にERで実習していた。彼に本当に助けてもらった。ERで出会った症例
・SLE(全身性エリテマトーデス)の急性脳症
・交通外傷(motercycle acident)
・熱性痙攣の小児
・関節炎(敗血症)
・凝固障害による歯肉出血
・酸熱傷
・蛇咬傷
・下肢静脈瘤による潰瘍
・結核
・脳梗塞
・ESWL後の背部痛
・眼内異物
・心不全
基本的に、ER内には常時10人くらいの患者がいた。まずは、6年生が問診をとり、診察をする。近くにいるレジデントに症例を見せる。治療を引き継ぐ、もしくは学生が処置まで施す。というような流れだった。6年生はほとんど医師と同じような働きをしていた。薬剤のオーダーも電子カルテで実際に行っていた。看護師、看護助士が多かったが中堅の医師は2,3人しかいなかった。レジデントの方にもいろいろなことを教えて頂いた。遠くにいる私を手招きして呼び、症例の説明をしてくれた。そして、たくさんの質問も。患者がいれば必ずそこに行った方がよい、何か勉強になる。ついでに何も言われなくてもグローブをはめて待っていると、縫合や処置の助手が近くでできる。それを発見してからは、よく待機して待っていた。
【Sichon Hospital】PSUから車で約4時間、ナコンシータマラートという場所にあるシーチョン病院で1週間実習した。大学病院とは違って、少し小規模の地域病院。最先端技術を使った治療ではなく、プライマリーヘルスケア、全人的医療を目標としている病院。内科、ICU、外科、整形外科の病棟見学、ER、手術参加、プライマリーケアユニット見学、往診などをした。宿泊の手配や移動バス、病院での食事はすべて用意されて、手厚いもてなしをしていただいた。最も印象に残っているのは、往診である。12歳の時にバイク事故を起こし、頸椎骨折で寝たきりとなった24歳男性の家庭では家族が介護をしていたが、小さくてエアコン設備のない家屋で、豚・鳥・犬・猫などの動物が周囲でたくさん飼われているという状態であった。タイの田舎での人々の暮らしと医療の関係を間近でかいま見ることができて、衝撃を受けた。Family folderというものを知った。ただの患者のカルテではなく、住んでいる場所や環境、家族構成、家族のカルテもまるまる書いてある、まさに全人的な診療録。日本ではほとんど見ないAIDS患者も多くいた。死亡率は急上昇中ということだ。院内では理学療法として「タイマッサージ」を行っている。私たちも体験して、マッサージ方法を習い、実際に試した。
 
【感染症内科】
最後の1週間は感染症内科を回った。基本的に回診・外来・レクチャーだった。回診では特定の病棟ではなく、各科の病棟の感染症関連の患者を回るというスタイル。階段や廊下をひたすら歩く長い回診であったので体力が要求された。私たちは薬学部の学生数人と一緒に、感染症内科の教授について行動した。ほとんどの患者は、各科から感染症疑いでコンサルトされてきたものだ。熱型表を見て、検査を出し、抗生剤の決定、投与、効果判定のくり返し。多種多様の抗生剤の種類と使い方を知らなければなかなかついて行くのは困難。せめて基本的なことは覚えておくべきだったと後悔した。「ホスホマイシンはどうやって使う?」という質問に全然答えられなくてかなり落ち込んだ。タイでは学生のうちから薬剤のオーダーをするので、日本の学生よりはよほど詳しい。また、胸部X線写真の所見を述べよ、という質問も多くされたが難しかった。外来では、見学や患者の診察もさせてもらった。レクチャーは「細菌の薬剤耐性について」、「寄生虫概論」だった。私たち宮大の学生のためだけの講義だったので質問しやすく、とてもためになった。
☆知らないとはずかしい(知らなくて恥ずかしかった??)単語集☆
jaundice:黄疸、respirator:人工呼吸器、cyanosis:チアノーゼ、Chief Complain(CC):主訴、Present Illness(PI):現病歴、Patient History(PH):既往歴、Physical Examination(PE):身体所見、bleeding:出血、swelling:腫脹、dressing:包帯を巻く、medication:薬、vertigo,dizziness:めまい、ST dipression:ST低下、Psoriasis:乾癬、Hemophilia:血友病、syncope:昏睡、cirrhosis:肝硬変、spider angioma:クモ状血管腫、investigate:検査する、febrile seizure:熱性痙攣、convulsion:痙攣、septic arthritis:敗血症性関節炎、aspiration:吸引、peritonitis:腹膜炎、lavage:洗浄、intracostal dranage(ICD):胸腔内ドレナージ、coagulopathy:凝固障害、abdominal colic:腹部疝痛、tong dipresser:舌圧子、thermometer:体温計、stethoscope:聴診器、opthalmoscope:眼底鏡、guaze:ガーゼ、saline:生食、scrub:消毒、sterilize:消毒する、forcep:鉗子、AVM:動静脈奇形、miliary TB:粟粒結核、pleural effusion:胸膜浸潤、numb:感覚麻痺、epilepsy:てんかん、ascites fluid:腹水、avian flu.=Bird influenza、cytopenia:血球減少、myoma uteri:膀胱の筋肉腫、arrythmia:不整脈、dementia:ぼけ、autopsy:剖検、acromegaly:先端巨大小、exophthalmos:眼球突出、actinomycosis:放線菌、hoarseness:嗄声、multiple myoma:多発性骨髄腫、bronchiectasis:気管支拡張症、reticular infiltration:網状浸潤、anorexia:食欲不振、afebrile:無熱性の、aseptic meningitis:無菌性髄膜炎、infectious endocarditis:感染性心内膜炎、broad spectrum antibiotics:広域スペクトラム抗生剤、cholecystitis=gallbladder inflammation:胆嚢炎、dyspepsia:消化不良、indicaion:適応
・どうしても聞き取れない単語は薬剤名だったりした。
・薬剤名の発音は正式な英語で覚えよう。例)ジアゼパム=dyazepamはダイアゼパム
・日本語で分かっていても英語で答えられなければ分からないのと同じ
・疾患名はもちろん英語で覚えていないとだめでした
・聞き取れないのものは書いてもらう
● 最後に
どこに行っても関係者の方がとても親切だった。私の質問には必ず丁寧に答えてくれた。自分の英語力を考えて尻込みすることもあったが(例えばタイの救急制度について詳しく聞きたかったがなかなかできなかった)今ではそれを後悔していて、どんなに時間がかかってもいいじゃないか、つきあってくれるまで質問をし続ければ良かった、と思っている。もう一つの反省は、臨床講義が始まって疾患名をたくさん覚え始めるときに英語でも同時に覚えておくべきだったということ。低学年の学生はぜひそれを実践すると良い。タイで心がけていたことは、とりあえず積極的に何でもやってみるということだ。ERでは昼より夜間の方が忙しい。実習時間ではなかったが、夜間救急というものを体験したくて、参加した。また、レジデントの人たちが昼食によく誘ってくれたのでそれにもなるべく行くようにした。仲良くなれば質問もしやすくなる。講義などは、出てもいいし、どちらでもいいよ、といわれたが、すべて参加するようにした。また、PSUには他の国からのも多くの留学生が集まる。私たちとちょうど同じ時期に台湾から3人の学生が来ていた。しばしば一緒になることがあったが、彼らはとても優秀だった。英語能力だけでなく、医学的知識も豊富だった。話をしていると「日本の病院ではどうなの?」ということになる。そういうときに私は、今ここでは私は日本の代表なんだ、という気持ちになった。または宮崎大学の代表だという気持ちで、身が引き締まる思いがした。PSUを去るときにERレジデントのみなさんから手作りの製本された教科書をおみやげにいただいた。「Study Hard」というメッセージとユーモアのある暖かい表紙に涙が出るほど感動した。
英語の能力がどの程度必要かという質問には、自分のことを振り返り、肩の力を抜いて「ある程度」と答えたい。コミュニケーションをとろうとする努力が大切で、その気があるなら、ある程度の能力はカバーできると信じているからだ。そしてこのプログラムが、単に病院実習の延長線にあるのではなく、宮崎大学医学部とPSUとの交流であって、人と人との繋がりを作るためのプログラムであるということを考えると、そういう答えに行き着いた。池ノ上先生によると「ある程度のcompetitionは必要」ということだが、私は「行きたい」と純粋に思う学生なら誰でも参加できればいいな、と切に願っている。学生のうちにこのような体験ができて本当に良かったと思う。一生忘れられない体験になった。EMPの先生方、学務課の方々、またPSUの先生方、学生達、関係者の方々に感謝したい。そして、1ヶ月間、合宿のように毎日一緒に過ごした仲間達へ、楽しい思い出をありがとう。
後輩のみなさんへ。聞きたいことがあればどうぞ遠慮なく連絡をください。
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