祝      辞


 皆さんおはようございます。県医師会の秦でございます。本日は、第24回卒業証書・学位記授与式に参列させていただき、大変光栄に存じています。
 皆さん、ご卒業或いは学位取得おめでとうございます。その間、立てば歩めの親心で、ご苦労を共にされたご父兄の皆様方にも心からお慶びを申し上げます。また、精魂込めてご指導をいただきました教官の先生方に心から感謝を申し上げます。
 さて、米国によるイラク攻撃が今日にも始まるという状況、隣国・北朝鮮の問題、予断を許さない国際情勢であります。国内では急速な少子・高齢社会の到来に伴う制度上の歪みが顕著になって来ています。企業倒産・デフレ・株安・雇用不安など三月危機説が現実のものとなりつつあります。
 皆さん方は、この内外共に大変困難な時期に旅立たれようとしています。皆さん方の母校、宮崎医科大学も大学の統合、独立行政法人化、研修医制度の義務化等により大きな転換期を迎えています。幸い、松尾学長先生以下の諸先輩の輝かしい業績により、単科医科大学では唯一「21世紀COEプログラム」の拠点校に選ばれ、存在感のある大学として全国に認知されている事は御同慶の至りであります。
 医療制度におきましては、医療提供体制、診療報酬体系、高齢者医療制度、保険者の統合などを柱とした医療制度抜本改革が進められようとしています。また、医療費抑制の観点から、混合診療、株式会社参入、医療費の総枠管理など、世界に冠たる我国の国民皆保険制度の根幹をゆるがす提案がなされています。
 医療の現場では、従来のパターナリズムの医療から、患者中心の全人的医療への転換が期待されています。
 Informed Consent,Evidence Based Medicineの重要性が強調されています。医療事故を防ぐ、安全・安心の医療が求められています。 さらに、21世紀のポスト・ゲノムの医療、テーラーメイドの遺伝子治療や再生医療の実施には、厳しい倫理性や幅広い社会性が問われる事になります。
 しかし、時代や制度がどう変わろうとも、医療の原点は変わらないと考えます。医師と患者の人間的信頼関係が基本であります。皆さん方は、どうぞ患者さんの全幅の信頼に応え得る医師になるように、今後も精進を続けてください。
 先日ノーベル物理学賞を受賞されました小柴東大名誉教授は、平成13年度東京大学卒業式の祝辞で「これまでの成績が良かったから、これからも大丈夫だろうというのは通用しない。今日は卒業式というより英語のCommencement Ceremonyと考えた方がふさわしい」と卒業生のこれからの頑張りを期待しておられます。私も宮崎医科大学の名前での最後の卒業生となる皆さん方が、誇り高く、やれば出来るの志を持って、世界中に羽ばたいて行かれますよう祈念いたしまして祝辞といたします。
 ご静聴ありがとうございます。

                                     平成15年3月20日

                                              宮崎県医師会長  秦  喜八郎 


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