ハイブリッド手術室の紹介

 昨年度末より工事をしていたハイブリッド手術室が、平成27年11月19日に完成しました。ハイブリッド手術室とは、簡潔な表現をするなら、意のままにレントゲン撮影ができる高機能かつ可動性のよいレントゲン撮影装置を設置した手術室のことです。
 これまでは、C-アームと呼ばれる重たいレントゲン撮影機をベッドの横に沿わせ、可動域の狭いアームを手動で前後させながら撮影用のアームの位置を調整しつつ手術を行っていました。さらに、機械が高熱を発し短時間でオーバーヒートするため、撮影の許容量に気を配らなければなりませんでした。
 ハイブリッドシステムの透視アームは電動で繊細な動きができるため、素早くスムーズに目的とする画像位置へ動き、電気的容量が大きいため連続して長時間に渡りストレスなくレントゲンを撮影することができます。


 さらに、カーボン素材でできたベッドは、レントゲン透過性ですので、従来のベッドのようにベッドフレームが透視画像に映り手術操作の邪魔をすることがなくなり、全身のどのような角度、方向からでもフルに透視画像を得ることができます。このカーボンベッドは、ハイブリッド撮影装置と連動しており、アームの動きに合わせてベッドも自動で動くため、一定した視野の下で手術を行うことができます。無駄な動きが無くなる分、撮影に要する時間も短縮され、被爆量の削減が可能です。
 対象となる手術は、血管外科のステント挿入術、脳神経外科の血管奇形の塞栓術、脳動脈瘤のコイル塞栓術、整形外科の骨盤骨切り術などです。最近注目されている大動脈弁狭窄症に対する弁付きステントの挿入術(TAVI手術)に対応することもできます。
 先日の会議において、循環器内科も難易度の高い冠動脈ステント術やペースメーカワイヤの抜去術などでハイブリッド手術室を使用したいとの要望があり、ますます用途が広がりそうです。
 また、本院のハイブリッド手術システムの目玉として、移動式CT撮像装置O-armの導入があります。この装置は、広めの手術室ならどこでも術中のCT撮影が可能です。
 さらにナビゲーションシステムと連動させることにより、数ミリのずれも見逃さない正確な位置を掌握しながら手術を行うことができる画期的な機械です。
 CTの撮影は、手術前にO-armで撮影した画像をナビゲーションシステムに取り込み、赤外線ビームを用いて操作位置を確認するため、繰り返し透視を用いる必要がなくなり、被爆線量を大幅に減らすことができます。
 本装置は九州では初めての導入であり、整形外科の脊椎手術で威力を発揮すると期待されています。

 そのほかハイブリッド手術室には、クラス1000レベルの高機能ヘパフィルターや手術映像の自動記録装置、LED無影灯、経食道エコーなどの最先端技術が導入されており、大学病院として質の高いハイレベルな医療を提供できる手術室環境が整いました。平成28年4月からの本格稼働に向けて、人員の確保や訓練などソフト面の充実に向けて最終調整中です。

文責 手術部長 恒吉勇男

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