ご挨拶

yamaguchi 特別教授 山口 昌俊

 近年の遺伝学的研究の進歩は、これまで不可能であった遺伝子診断を、一般的な検査へ変化させてきました。今後、このような検査がどこでも行われるようになることが予測されています。
 遺伝子検査には、癌細胞の遺伝子診断のように、その本人だけに限定される検査もありますが、血縁関係者と共通する遺伝子の検査(生殖細胞系列の遺伝子検査と言います)も一般的になってきました。
 生殖細胞系列の遺伝子検査を行うと、病気の確定と同時に血縁関係者(たとえば、自分の子孫)が同じ病気になる可能性がわかってしまうことがあります。また、診断がつけば治療できると考えがちなのですが、遺伝性疾患の場合、治療法の見つかっていない病気も多いのです。その一方で、子孫が同じ病気になる可能性があるということがわかれば早期発見、早期治療へつなげることができるという、良いこともあるかもしれません。
 よく、「遺伝カウンセリングって何の役に立つの?」という言葉を聞きます。実際に病気になった方に対応するのは主治医の先生の義務ですが、その家族や子孫の方の対応も主治医の先生が対応してもらえるでしょうか?子孫が病気になるかもしれないとわかった時に、どのくらいの可能性があるのかとか、どのような対応法があるのかというような疑問に、対応してもらえるのでしょうか?もし、治療法がないとわかった時に、その事実を受け入れるために、心の葛藤が生じますが、主治医の先生が対応してもらえるでしょうか?
 そのような問題に対応するのが「遺伝カウンセリング」です。遺伝性疾患のケアを行う時に遺伝カウンセリングが絶対的に必要だと言われているのは、この様な問題があるからです。宮崎大学医学部附属病院では、早くから遺伝カウンセリングの重要性に注目して2004年8月に「遺伝カウンセリング部」を設立しました。主治医の先生からの遺伝カウンセリングだけではなく、一般の方からの遺伝カウンセリングも引き受けますので、遺伝に関して悩みのある方も、ぜひご利用ください。