センター長挨拶

竹島 秀雄

臨床研究支援センター長
竹島 秀雄

「根拠(エビデンス)に基づく医療」という言葉があります。皆様もテレビや新聞等で最近目にされたことがあると思います。これは、従来から行われていた医師の経験頼る医療に対して、科学的なデータから導き出されたエビデンスに基づいて、その時点で最善と思われる治療や予防法を医療に取り入れる考え方です。しかし、医療に必要とされる新たなエビデンスを生み出すことに必要なステップは複雑で、1)臨床試験のスタートとなる基盤的知識を得るための医学基礎研究、2)基礎研究の成果を臨床研究につなげていく研究(前臨床研究)の前段階を経て、ようやく3)客観的で科学的な臨床研究と疫学研究,そしてそれらを統計的に統合する解析の段階に入ります。そして、3)が広い意味での臨床研究、あるいは臨床試験とも呼ばれますが、この様なステップを経て、安全かつ有効な薬剤や医療機器が実用化されるわけです。

わが国の医学基礎研究は、ノーベル賞受賞者を輩出するように、領域によっては欧米と伍する高いレベルにありますが、残念ながら臨床研究の基盤整備に関しては周回遅れとなっている現状です。平成25年~26年にかけ、臨床研究に関する不適切な事案が相次いで生じたことは、報道等でまだ記憶に新しいと思います。それらの試験の中には、複数の大学機関が関連していた臨床研究においてデータの操作等の不正があり、試験結果の信頼性や研究者と企業とのCOIに関して大きな問題となりました。また、同意が取られていなかったり、個人情報の漏洩など被験者保護の欠如も明らかとなりました。これらのことが相まって我が国の臨床研究に対する信頼性が著しく揺らいでいます。

これらの研究不正等を教訓として、今後、臨床研究を適切に支援し、質の高い研究を実行できる十分な態勢作りが、研究機関と先進医療機関に求められています。倫理性をしっかりと考慮した臨床研究の計画立案と実行、そしてそれに対する適切なモニタリングと監査が強く要求されています。

これらの社会的要請をうけ、宮崎大学医学部においても、平成264月、宮崎大学医学部附属病院臨床研究支援センターが新たに誕生いたしました。

臨床研究や新薬の治験は,倫理性と科学性を担保した計画・プロトコル作り・データ管理とコーディネーション・統計解析・報告書作成、そして第三者によるこれらの過程の適切な監査・モニタリングという、専門知識と経験を要する多くのプロセスからなります。宮崎大学医学部附属病院臨床研究支援センターには、これらのプロセスに対応し、適切で質の高い臨床研究と新薬の治験に対応するために、五つの部門(研究倫理支援部門、データマネジメント部門、監査・モニタリング部門、治験部門、教育・研修部門)を設置しております。

更に、臨床研究の実施の手続、認定臨床研究審査委員会による審査意見業務の適切な実施のための措置、臨床研究に関する資金等の提供に関する情報の公表の制度等を定める臨床研究法が平成29年4月に制定・公布され、平成30年から実施されましたが(経過措置平成31年3月31日まで)、この臨床研究法にも対応すべく整備致しました。

このセンターの使命は、病気で苦しんでいる多くの患者さんへ安全で有効な最新の医薬と医療技術を、一刻も早く届けるための良質な臨床研究と治験を推進することです。支援のプロフェッショナルとしてさらなる研鑽とスタッフの充実を目指し、地域から世界に発信することが可能な臨床研究の支援と最新の医療の早期実現に役立つよう、今後とも努力していきますので、ご支援宜しくお願い致します。