食習慣に着目した生活習慣病の発症機構に関する研究

過食、偏食、早食いなどの食習慣を継続していると健康を害することは、古くから言われています。しかし、なぜ健康を害するのかについての全容は明らかにされていません。 当研究室では、栄養バランスの取れた食餌を水で軟らかくしラットに与えると、耐糖能異常やインスリン抵抗性、内臓脂肪型肥満といった生活習慣病を発症することを明らかにしてきました。咀嚼することによる脳への情報伝達、唾液分泌の担う役割、消化管からの糖質吸収とインスリン産生細胞の過形成との関連性など、軟らかい食餌の招く生活習慣病の発症機構を、in vivoおよびin vitroの実験を通じて解明していきます。

関連業績(論文一覧 参考文献:66, 60, 59

肥満制御に機能するマクロファージに関する研究

当研究室では、高脂肪食を摂取しても肥満にならない高脂肪食抵抗性ラットのマクロファージにおいて、生理活性ホルモン;グアニリンとその受容体であるGC-Cが高発現していることを見出しました。また、グアニリンおよびGC-Cをマクロファージ特異的に高発現させたラットも、高脂肪食抵抗性の表現型となることを示しました。さらに両分子を発現したマクロファージは抗炎症に機能すること、同マクロファージが産生するIL15が抗肥満にはたらいている可能性も明らかにしています。不飽和脂肪酸であるパルミチン酸刺激でグアニリンおよびGC-Cの発現が亢進することから、グアニリンおよびGC-C発現マクロファージには脂肪蓄積を制御する何らかのメカニズムが存在するものと考えています。 当研究室では脂質に対するグアニリンおよびGC-C発現マクロファージの生化学的・生物学的特性について検討を進めています。

関連業績(論文一覧 参考文献:69, 65, 64, 62, 61, 55, 54

臓器間クロストークにおける消化管ホルモンの役割

消化管は人体でも最大の内分泌臓器であると考えられており、消化吸収に関するホルモンだけでなく、インスリン分泌促進や空腹シグナルや満腹シグナルとして機能するホルモンも数多く産生されています。 当研究室では、特に満腹や空腹シグナルとして機能するホルモンが消化管に分布する迷走神経末端の受容体に結合し、神経電気活動を変化させることで、満腹感や空腹感を中枢に伝える仕組みを解明してきました。このように、血液循環を通じて遠隔臓器に情報伝達すると考えられてきたホルモンは、求心性神経を通じてダイレクトに脳に到達し、脳内ネットワークを動かすことで、エネルギー代謝調節に寄与することが明らかになりました。 今後はホルモンによる情報伝達だけでなく、栄養素や腸内細菌の産生する短鎖脂肪酸など、様々な因子の役割を臓器間クロストークの仕組みを通して明らかしていきます。

関連業績(論文一覧 参考文献:63, 58, 57, 53, 52, 41, 35, 34, 26
伊達だて  ゆかり(教授)

内科医(脳神経内科)としてキャリアをスタートし、大学院で初めて研究に従事しました。仮説を立てそれを検証し真実に迫っていくプロセスは、研究も臨床も同じだと思っています。ゴールは永遠に見えてこないのかもしれませんが、日々チャレンジャーとしてスタートラインに立ちたいと思います。

学位
1995年3月 博士(医学)
学歴
1987年03月 大分医科大学卒業
1995年03月 宮崎医科大学大学院医学研究科修了
職歴
1987年06月~1991年03月 宮崎医科大学第三内科
1995年04月~2002年03月 国立循環器病センター生化学部COE研究員
2002年04月~2004年03月 宮崎医科大学/宮崎大学医学部 COE研究員
2004年04月~2006年09月 宮崎大学医学部COE特任助教授
2006年10月~2010年09月 宮崎大学フロンティア科学実験総合センター
生理活性物質探索分野 教授
2010年10月〜2015年9月 宮崎大学フロンティア科学実験総合センター
生理活性物質機能解析分野 教授
2014年10月〜2015年9月 宮崎大学副学長(男女共同参画担当)
2015年10月~2021年9月 宮崎大学理事(女性活躍・人財育成担当)
2021年10月〜 宮崎大学フロンティア科学総合研究センター
所属学会 日本内分泌学会、日本肥満学会、日本神経内分泌学会、日本内科学会、日本神経学会他
専門分野 内分泌代謝学
専門医 内科認定医、神経内科認定医
研究テーマ 肥満・エネルギー代謝調節機構
研究手技 免疫組織化学、行動生理学、分子生物学
主要論文 研究業績ページに掲載
受賞歴
2001年
日本内科学会研究奨励賞

2004年
日本神経内分泌学会 川上賞

2006年
日本内分泌学会研究奨励賞

2007年
日本肥満学会学術奨励賞