バイオメディカル電顕リサーチサイト  BioMedical EM Research Site

CLEM観察法
Correlative Light and Electron Microscopy

宮崎大学医学部解剖学講座 超微形態科学分野
Department of Anatomy, Ultrastructural Cell Biology
Faculty of Medicine, University of Miyazaki



グリッド支持膜作製法
Grid Supporting Membrane


 超薄切片を拾い上げるグリッド(光学顕微鏡観察におけるプレパラート)には、メッシュ型やスリット型、単孔型等があります。それぞれに長所と短所がありますが、メッシュ型は格子枠に視野が邪魔されることがあり、単孔型グリッドに支持膜を張った上に超薄切片を載せて観察しています。

【 前段階 】
 はじめに、グリッドが新品の場合は念のためアセトンで洗浄して使用します。



 次に、グリッドに支持膜が付着し易くなるよう濾紙の上でネオプレンW2%溶液を滴下、乾燥させる前処置を加えておきます。






フォルムバール0.5%溶液は、ゴミ等の混入を未然に防ぐため、3〜4回の使用ごとに予め濾過しておきます。



 支持膜作製装置は市販品もありますが、自製品(右上写真)でも十分に綺麗な膜を作製できます。


【 支持膜作製 】
 支持膜作製の基盤となるスライドガラス(プレクリン水切放)をガーゼで4〜5回擦って汚れを拭き取り、ブロワーで埃を飛ばします。






 スライドガラスを支持膜作製装置のシリンダー部に挿入し、排出口をクリップした状態でフォルムバール溶液を注入します。スライドガラスの上端から約1 cm下まで充填した後、スライドガラスを軽く揺すり、スライドガラス面に付着した泡を浮かび上がらせます(泡が付着した状態では支持膜に孔が形成されます)。




 排出口の先にフォルムバール溶液のビンをセットした状態でクリップを外し、シリンダー内のフォルムバール溶液を排出させます




 完全に排出した後、スライドガラス面に付着した余分なフォルムバールが下降するまで約10秒間静置した後、スライドガラスをゆっくりと(秒速約1cm)引き上げます

 スライドガラスに形成された支持膜を剥がれやすくするため、まずは長辺のエッジ部分をカミソリで擦り、続いて支持膜の下端部と上端にカットを入れます支持膜はスライドガラスの両面に形成されているため、この工程を両面に施します。





 スライドガラス長辺と短辺、それぞれの2倍以上長く、長辺より深いタッパーウェアなどに綺麗な蒸留水を満たし、スライドガラスに付着した支持膜の下端から垂直にゆっくり挿入すると、スライドガラスの両面から支持膜が剥がれながら水面に浮かんできます





 完全に剥がれた支持膜に光を当てた反射色がシルバーからシルバーゴールドであれば、支持膜の厚さは理想的な70〜80 nm(超薄切片と同等の厚さ)であることを示しています。

 シルバーやシルバーゴールド以外の色を呈していたり、厚さが不均一もしくはプツプツとした孔が多数見受けられる場合には再度、支持膜を作製します。

 良好な支持膜が得られた場合には、予め接着性を高める処置を加えたグリッドの表側が支持膜に付着するように並べていきます。






 グリッドを並べ終わった後、支持膜の幅より少し大きめにカットしたパラフィルのカバー紙面側を、支持膜の一方から静かに載せるように付着させます。パラフィルムに支持膜の全面が付着したところで、そっと水面から引き上げ、余分な水滴をブロワーで軽く吹き飛ばします(強く吹き飛ばすとパラフィルムから支持膜が剥がれてしまうので注意)。





 出来上がった支持膜付きグリッドは濾紙の上に載せて、埃が付着しないようシャーレ等に入れて保管します



 参考)均質で良好な支持膜(左)と無数の孔が形成されて不良な支持膜(右)



親水化処理法へ

CLEM観察法トップページへ