巻頭言
学報第90号の刊行に当たって

学 長  松 尾 壽 之

 1974年に開学した宮崎医大は、その30年の歴史を、一応閉じて、新しく創設される宮崎大学の医学部として生まれ変わることになります。今秋10月に迫った統合を間近に控えて、あわただしい毎日です。3月末、平成14年度第24回の卒業生を送り出し、今新たに新入生を迎える準備をしながら、これが、宮崎医大としての最後の卒業式なのだ、そしてこれが最後の入学式なのだと、思わず感慨にふけるこの頃です。90号を重ねてきたこの学報も、7月刊行予定の91号が、宮崎医大学報最後の一冊なのだと思ったりします。
 しかし、統合それに続く法人化の波は、もう秒読みの段階で、そんな感傷に浸る状況ではありません。うち続く経済不況を背景にした大学の統合・再編であることは否定出来ない事実ではありますが、これを機会に、21世紀にふさわしい大学を造り上げたいものと、教職員一体となって、模索しながらも、懸命に頑張っています。
 ヒトゲノム解読完了の知らせに象徴されるように、21世紀の医学は大きく様変わりすることは疑いもありません。21世紀の医学は、他の領域との緊密な協調なくしては、成立しなくなるでしょう。目前に迫った統合を、そのための絶好のチャンスとして捉えるべきだと思います。4つの異なる学部が互いに連繋し、生命科学というキーワードの下に、独自の特色を持った新しい大学を創りたいものです。
 今年度新しくスタートする宮崎医大医学系大学院の修士課程は、4年制大学卒業生を医学の世界に迎える第一歩です。また、4月1日付けで、フロンティア科学実験総合センターが設立され、新しい生命科学の展開を目指す基盤が出来上がりました。昨年秋、文部科学省「21世紀COEプログラム」に採択された宮崎医大の蓄積された実力と将来に向けての可能性を、新しい大学においてより強力に推進したいものです。
 一方、大学附属病院は、昨年度実施された日本医療機能評価機構による厳しい評価に耐えて、日本における最高ランクの優秀な病院であると認定されました。また、宮崎医大同窓生の活躍も目覚ましく、教育、研究、診療を3つの軸とする宮崎医大創立の理念が、30年の歴史の中に息づいています。この基盤の上に、宮崎医科大学は、統合・法人化の後も、さらに新しい医学部として、成長し、発展するもであります。
 巣立っていく卒業生も、そして、希望に満ちた新入生も、それぞれが胸を張って誇れるわれわれの医学部を、あとに続くより若い世代のために残そうではありませんか。


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