研究室紹介

生理活性物質・ペプチドに関する探索研究
および病態生理学的解析研究

当研究室では、生理活性物質・ペプチドをキーワードに、
基礎から臨床まで幅広い分野の研究が行われています。

1.基礎研究

 多くの生理活性物質・ペプチドが、生体機能の恒常性を維持するために、重要な役割を担っています。なかでも、私達は、血圧や心血管機能を調節している生理活性物質・ペプチド(循環調節因子)の研究を行っています。循環調節因子は、血圧異常や心血管疾患の病態と密接に関連しており、その関連を探索して明確にすることが、高血圧および心臓や血管の病気の治療手段開発につながります。
 循環調節因子は、血圧・体液量への作用より、昇圧系と降圧系に大別されます。私達の研究対象の一つは、アドレノメデュリン(AM)やナトリウム利尿ペプチド(ANP、BNP)等の降圧系循環調節因子であり、これらは本学で発見させた生理活性ペプチドです。降圧系循環調節因子は、血圧下降、心臓や血管障害の抑制等の臓器保護的作用を発揮することから、これらの因子の作用を増強することが、高血圧および心臓や血管の病気の治療になる可能性があります。また、最近の血圧関連のトピックとして、血圧動揺が大きくなる血圧変動性増大が、新たな心血管疾患のリスクとして注目されています。私達は、血圧変動性増大に関与する生理活性物質・ペプチドを明確にして、変動性増大の病態を循環調節因子の観点から解明する研究を行っています。一方で、循環調節因子の心臓や血管以外への作用も注目されています。たとえば、AMには抗炎症・組織修復作用があることが判明し、現在、炎症性腸疾患の治療薬としての臨床治験が行われています。このように、循環調節因子の作用機序や病態との関連を探索することにより、幅広い疾患に対する新たな治療手段の可能性を提示していきたいと思います。


2.臨床疫学研究

 生理活性物質・ペプチドの病態生理学的役割を解明する手段の一つとして、種々の疾患の患者さんの血液中の生理活性物質・ペプチド濃度を測定して、疾患の重症度や病態の変化と比較する方法があります。たとえば、前述のAM、ANP、BNPの血中濃度は、健康なヒトと比較して、高血圧や心不全の患者さんで上昇します。このような臨床データと基礎研究で得られた結果を、対比して考察することにより、それぞれの疾患における生理活性物質・ペプチドの病態生理学的役割を解明することが出来ます。私達は、地元自治体(宮崎市清武町)のご協力のもとに、健診を受診される住民の方のAM、ANP、BNP等の血中濃度を測定しています。比較的健康な方の血中濃度と種々の臨床パラメータを比較解析することにより、疾患の患者さんを対象にした解析では得られない、新たな知見を得ることが出来ます。たとえば、AMおよびANPの血中濃度は、それぞれ高血圧や慢性腎臓病の発症前より上昇していることが明らかになりました。疾患の患者さんのみでなく、健康な方々の血中濃度の解析により、生理活性物質・ペプチドの未知の役割を探索することが可能かも知れません。このような臨床疫学研究をとおして、生理活性物質・ペプチドの新たな役割および疾患マーカーとしての有用性を解明していきたいと考えています。


研究室紹介資料

ひと・健康・未来、第2号:ページ27、2014年 (PDF 672KB)