病理学は基礎系でありながら、臨床とのつながりが極めて強い学問です。疾患の基本原則を追求し臨床医学に還元する学問であり、疾患における多様な生体現象を「形態」として網羅的に捕捉する領域でもあります。これからの個性と多様性を基盤とした医学の時代に、研究においても、臨床においても、本当に必要とされる領域だと信じて教室員一同がんばっています。お互い言いたいことが言い合えるフランクな研究室です。是非気軽に遊びにいらしてください。
片岡 寛章
開学以来、病理学系統講義(総論・各論)及び病理組織実習を三年次に、病材示説講義を五年次に病理学講座構造機能病理学分野(旧 病理学第一講座)および病院病理部と協力して行なってきた。平成14年度から五年次の病材示説講義は二週間の臨床実習(ポリクリ)に組み込まれ、また六年次におけるクリニカルクラークシップの受け入れ講座として、構造機能病態学分野、病院病理部と共に希望する学生を受け入れている。平成19年度から、系統講義のうち各論部分が四年次のカリキュラムに組み込まれた。三年次の系統講義では臨床医学の基礎たるべき病理学総論を重視し、同時に可能なかぎり最新の知見を取り入れて紹介することに努めている。
構造機能病態学分野および病院病理部と協力して、病理診断と病理解剖を隔週毎に担当している。地域の病院からの依頼に対しても外来組織診断部を構造機能病態学分野と共同で運営し、これに対応している。卒後教育としては、研修医の病院病理部へのローテーションに対して病院病理部をサポートする形で研修医教育に尽力している。また積極的に大学院生を受け入れ、学位取得後、病理分野のみならず臨床各科に送り出してきた。病理学を志す大学院生には病理専門医資格取得も目標として教育を行い、成果をあげてきた。
いずれの研究も既成の先入観にとらわれないこと、世界に発信できることを心がけている。また、できるだけ個々の研究者が独自の自由な発想に基づく研究が展開できるよう配慮してきた。開講以来の研究テーマは癌の浸潤・転移機構の解明である。特に癌細胞由来のプロテアーゼとインヒビターや癌細胞・間質相互作用に焦点をあてて研究を行ってきた。近年はプロテアーゼによる増殖因子の細胞膜上での活性化調節機構、そして細胞膜結合型プロテアーゼインヒビターの生理活性について精力的な研究を行なっている。これらのプロテアーゼや膜型インヒビターのノックアウトマウス作成と解析を通じて新たな生理活性を明らかにするなど、この分野では常に世界に新しい情報を発信してきたと自負している。またこれらの研究の過程で新たな生理活性蛋白を見出して消化管粘膜再生に関する興味深い知見を得るなど、教室の研究基盤と領域は確かに広がりつつある。より網羅的なアプローチを用いて、癌細胞浸潤に関わる(治療の分子標的になり得る)新規機能遺伝子を釣り上げる試みも行なっており、いくつかの興味深い遺伝子を見出している。
年月 | 出来事 |
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1975 | 宮崎医科大学医学部病理学第二講座として開講(河野正初代教授) |
2001.3 | 河野正先生退官 |
2001.8 | 片岡寛章教授就任 |
2003.10 | 宮崎医科大学と宮崎大学が統合 |
2004.4 | 宮崎大学が独立行政法人化(国立大学法人宮崎大学として創設) |
2005.4 | 「病理学第二講座」から、「病理学講座 腫瘍・再生 病態学分野」へと講座名変更 |
2005.10 | 伊藤 浩史助教授が福井大学医学部病理学講座(腫瘍病理学)に教授として転任 |
2006.8 | 当教室出身の鍋島一樹先生が福岡大学病理部教授に就任 |