放射線科 指導医インタビュー

2022.10.19

東先生インタービュー動画

東 美菜子(あずま みなこ)先生 プロフィール

職歴経歴 鹿児島県出身
2008年3月 鹿児島大学医学部医学科 卒業
2008年4月 熊本赤十字病院 初期臨床研修
2010年4月 熊本赤十字病院 放射線科 医員
2012年4月 熊本大学医学部附属病院画像診断・治療科 医員
        熊本大学大学院医学教育部 博士課程
2016年4月 宮崎大学医学部附属病院 放射線科 助教
2020年2月 宮崎大学医学部病態解析医学講座放射線医学分野 講師
2021年8月 宮崎大学医学部病態解析医学講座放射線医学分野 教授

 宮崎大学医学部附属病院の特徴をお聞かせ下さい。

宮崎大学の印象は、各診療科の先生が、お互いを尊重・尊敬しながらコンサルトしあっている、相談をされている姿は素晴らしいと思っています。若い先生がそういう姿を見ていたら、それが当たり前だと思って、若い先生も同じように尊敬し合って、その文化が引き継がれるんだろうなと思うので、そこは宮崎大学の良いところだと思います。
また、私自身、診療科の先生方に色々ご指導いただくことがとても多いのですが、本当にありがたいと思っております。
病院全体で若い先生を育てるっていう雰囲気があり、診療もそうですし、教育という面でも宮崎大学病院は良い環境だなと思っています。

 先生が所属されている放射線科の特徴をお聞かせ下さい。

宮崎大学の教育熱心の文化と繋がっているのかもしれませんが、放射線科の先生方は教育熱心で人材育成ということも業務の一つだと自然に思われている雰囲気があります。診療の時間、例えば全部の診療の時間を読影に使えば、もっと早く帰れるはずなのに、あえて診療時間の一部を必ず若い先生を指導する時間に充てています。放射線科はいくつか専門分野のグループに分かれて、各グループのリーダーの先生が、その日にあった症例を夕方に若い先生を集めてレビューする時間を必ず設けていています。もちろん若い先生のために行っていますが、専門医にとっても常に悩むし、分からないこともあるので、専門医同士もお互いに相談をする時間にもなっています。見落しとかのダブルチェックの時間にもなるので、結局、若い先生向けの教育の場ではあると同時に、専門医にとっても大事な勉強の場で、お互いに間違いを指摘し合ったり、教え合ったりするので、その時間を毎日設けている宮大の放射線科ってすごいなって、初めて来た時に思いましたし、それはずっと続けていきたいなと思っています。 あとは医局の中には、お子さんを育てる方もいるので、それ以外にも本人の体調不良だったり、いろいろな事情があるので、うちの医局員はそれを職員同士で把握していて、仲が良いというのもありますが、だからできることを精一杯、それぞれがやるっていう空気があるので、何か事情があった場合に、早く帰っても別に、それを何かおかしいなと思う人はいないし、お互いの置かれている状況をお互いに理解して、お互い様みたいな気持ちがあります。優しいと言ってしまえばそれまですけれども、お互いを尊重しているからこそ、そのような行動ができるのかなと思っています。

 先生が放射線科に進まれたきっかけをお聞かせ下さい。

私が学生の時は、そもそも放射線科が何をするのかもあんまりよく分かっていなくて、当然興味もなかったです(笑)。クリクラも適当にまわってしました(笑)。 初期研修医で入った市中病院の放射線科には優秀な先生達が集まっていて、話しやすくて良い先生ばかりで、研修医として救急、内科、外科とかをまわるたびに、自分の指導医の先生が画像で分からないことがあると電話ではなく、直接、読影室に相談、質問しに行くのが当たり前でした。その病院の指導医の先生たちは、放射線科の先生達のことを非常に信頼していて、実際に指導医の先生について行って放射線科の先生の話を聞くと、さすがだな、格好いいなあと思いました。 初期研修医1年目に小児科をまわっていた時、自分が担当した患者さんは顎の骨の病気で、おそらく歯科口腔外科の病気かなというので、歯科の先生に相談してCTを撮ったのですが、CTの所見が歯科の先生と放射線科の先生で全く違う所見で、私としては歯科の専門の先生が合っているだろうと思っていたのですが、小児科の指導医の先生が私に放射線科の先生にどうしてこういう疾患と思われるのかを聞いてこいって言われて、放射線科の読影室に行って理由を聞いたら、いろいろ説明してくれて、患者さんを実際に診ているわけでもないのに、カルテや臨床情報をインプットした上で読影しているのですけれど、画像所見を理路整然と話されているのがすごいなと思って、さらにその疾患が載ってある本を拝見したとき、全部がその疾患に当てはまっていて、あっ!画像診断の世界がすごいな!と感動しました。 それが感動した始まりで、初期研修医2年目で放射線科をまわってみて、画像の世界の面白さが深まり、いろんな診療科の先生達が読影室に相談に来られて多くの先生とコミュニケーションがとれて、さらに間接的だけれども自分が勉強して得た知識が患者さんの役に立つことを実感でき、それで放射線科にしようかと。ただネックだったのは一日中、ずっとパソコンの前に座っているのが大丈夫かなと心配していましたが、午前中は読影、午後からIVRのスケジュールだったので、バランスよくできるかなと思って放射線科に決めました。

 先生が患者さんとの対応で特に気をつけていること・意識していることをお聞かせ下さい。

放射線科では、患者さんと検査時にお会いすることが多いので、検査方法の説明だったり、検査時に使う薬の説明をするのですが、どうしても医療関係者は、医学用語を使用して、相手の方は分からないことがたくさんあると思います。そこで、自分の親に話すような感じで、特に私の父親は全く医療関係者ではないので、父親に話す時にどのような言葉を使えば理解してもらえるかを考えるようにしています。例えばMRI検査だったら、体の中に金属があるかを調べるのは重要なことで「クリップありますかとか。」と聞いても患者さんは、多分、自分の頭とか体の中に何か入れているっていうのは知っているけれども何かが分からない、中には入っていることを忘れている方もいるので、「何か手術したことありますか。」「入院したことはありますか。」などから聞き始めて、その当時のことを思い出せれるように、入りやすい言葉で質問をして、患者さんの記憶をたどりながら情報収集するのを心がけています。

 日々の中でやりがいを感じる瞬間はどんな時ですか。

自分で読影レポートを作成するときです。私が導き出したものが診断や治療に上手く結びついたりした時は、私の読影レポートでも役に立ってたんだなって嬉しく思います。

 これまでの後期研修と新しく専門医制度になってからとで変わった点などありますか。

放射線科はあんまり変わったところは… もともと2階建てみたいなものだったので、あんまり違和感なく、放射線科に関してはスムーズに新制度に移れたと思いますけど、事務的なことが煩雑になったのと専門医を取るにあたって求められる項目が増えたなとは思います。

 先生は研修時代どのようにお過ごしでしたか?今の研修医を見ていて「ここが違うな、変わったな」という点があれば教えて下さい。

コロナの影響もあるかもしれませんが、勉強の仕方がオンデマンドになって、勉強しやすくなったし、あと自分は多少アナログ的な勉強の仕方をしてたのですが、今のタブレットをスクロースしながら勉強しているところを見ると、さすがだなって思います。自分だったら、本とかにこう書き込んだりするのですが、今はデータで管理して、勉強の仕方も変わったなと感じます。 勉強する内容は変わらないですけれども、勉強の仕方や色んな情報を利用するのが一昔前よりも上手くになっているなと感じます。

 研修医(または専攻医)に指導をされる際にどのようなことに気をつけていますか。

私が育ってきた環境が雑用を振られてばかりで(笑)、でも雑用という仕事はなくて、全ての仕事が大事ですが、仕事の中でも記録に残るような目立つ仕事とそうじゃない、でも誰かがしないといけない仕事が絶対、どの業種でもあると思います。記録に残ったり、みんなの目に付くような仕事をやっている人ばっかり仕事をやっているように見られがちですが、見えないところでやってくれてる人ってすごく大事で、その人達がその仕事をしてくれてるからこそ全体が回っているので、若い人たちの中でも目立たない仕事をしてる人のことは必ず把握するようにして、折に触れてお礼を言ったり、ねぎらったりは必ずしてかつスタッフの先生達にも、こういう仕事をこの人がしてくれていますってアピールしています。目立たない仕事も凄く大事です。自分がその目立たない仕事を結構たくさんやってきて、あんまり日の目を見ず、悔しい思いをしてきたので、頑張ってくれてる人にはちゃんとお礼を、もちろん目立つ仕事をしてくれてる人にもですけど、影で頑張っている人には「私がちゃんと見てますからね」と伝えるよう心掛けるようにしてます。 あとは、何回メールしても返信してくれない人がいて、何で返信してくれないのかなと、でも怒ることでもないし…その人にメールをみんなに送る仕事を与えたところ、最初は抵抗があったみたいですが、気付いたら普通にメールの返信をするようになってました。苦手なことは誰にでも何でもあると思いますが、それを改善するのに怒ってもダメなのかなと。それよりもそれが得意になったり、好きになったりするように、本人もできることに気づいていないだけかもしれないんで、それを気付かせるような仕事を与えてみたり、一緒にやったりすると本人も自信がついたりして、怒らなくて済むし、良い方向に進むなと思うことが最近ありました。 そういう方法で、任せても大丈夫かなと思うことがあっても、敢えてやらせてみると上手くいって、指導をするというのはこういうことなのかなと、私自身まだ指導者としてヒヨッ子なので分からないことがたくさんありますが、試行錯誤しながらやっていっているところです。

  病院を巣立っていく研修医(または専攻医)をご覧になってどう思われますか。また、どんな医師になってほしいと思われますか。

大学で一生懸命働いてくださってる先輩方のようにどこに行っても、どういう病院に行っても、どの地方に行っても同様に自分の仕事に誇りと責任を持って頑張ってもらいたいです。 放射線科は、例えば放射線技師さんや看護師さんがいないと、本当に何もできないんです。もっと言うと主治医の先生が検査とか治療をオーダーしてくれなかったら仕事がないんです。だから、コメディカルの方、診療科の先生方、もちろん患者さんもそうなんですけど、そういう方々のおかげで仕事ができている、勉強させてもらっているから、そういう方々への感謝は絶対忘れないような先生になってほしいんです。

 今まで指導されてきた中で、特に印象に残っている研修医(または専攻医)はいらっしゃいますか。

医学部を卒業して初期研修も終わって、しばらく育児して完全に仕事しなかったのに、また放射線科に入って今も専門医になってバリバリ働いてくれてるんですけど、すごい真面目な女の子で、この根性はすごいなと思います。子育てしながら先生するのは、どの科の先生もすごいなと思います。もちろん子育てしているお父さんもすごいんですよ。時間の使い方を工夫しているのかなと思ってます。 家庭の事情や本人の健康状態とかを乗り越えて、がんばる人って意志も強いし、そういう方を見ていると、お手伝いしたいと思うし、私が自分の世話でいっぱいなのに、偉いなと思います。

 これから専門研修先を選ぶ初期研修医に向けてメッセージをお願いします。

私は放射線科を選ぶが結構、後になりましたが、診療科を決める際、色んな選び方があると思います。それぞれの人生があるので、人生にとって一番大事なのは何かを優先するべきだと思うのですが、また男性も女性も、いろんなライフイベントがあると思うのですけども、どういう形であっても、できれば一生、医者をしてほしいです。 今はだいぶ働き方改革が進んで、どこの診療科に行っても、いろんなライフイベントがある中でも続けてられるし、またできるようになったらバリバリ働いて、そういう人生設計は一昔前に比べたら、だいぶできるようになったのではと思います。 だから選ぶ診療科に関しては、自分が興味のある、楽しいと思える診療科を是非選んでほしいです。どうしても自分のライフイベントを加味して選ぶ人もいますが、それでも全然良いと思いますけども、少し前に比べたら、ライフイベントに関しての配慮は、各診療科の先生方も理解してくれてようになったし、これからどんどん進むと思います。私自身が管理する側なので進まないといけないと思っています。 だからライフイベントとかを考えつつも、一番は自分が興味のある、楽しいと思う診療科を選んでもらって細々でも良いから一生、お医者さんをやってほしいなと思っています。

 最後に宮崎県、病院のPRをお願い致します。

私は宮崎に来て6年目で、まだそんなに長く働いているわけではないですが、働きやすい、学びやすい環境で良い病院だなと思っています。あとは臨床系だけではなく、基礎の先生方もいろんな研究をされていて、これからは基礎と臨床の先生方々とで、臨床に役立つ研究が進めやすくなる時代になっていくと思いますし、進めるべきだと思います。私自身も興味があるので、宮崎大学だったらそれが可能だと思います。先生とのコミュニケーションも取りやすいので、宮崎大学全体でいろんなことを協力してできる雰囲気があるのは、働く場所としても学ぶ場所としても良いところなので、ぜひ一緒に頑張りましょう。

(左:指導医 東先生、右:専攻医 中村先生)