麻酔科 指導医インタビュー

2022.02.09


石山先生インタービュー動画

 

石山 健次郎(いしやま けんじろう)先生 プロフィール

職歴経歴 神奈川県出身
出身大学:宮崎大学
初期研修:宮崎県立宮崎病院
初期研修修了後、宮崎大学医学部附属病院麻酔科に入局。都城病院(現:都城医療センター)、本院で集中治療部、ペインクリニックを経験し、都城市郡医師会病院でICU副室長を務め、現在、本院の麻酔科医局長として診療・後進育成にあたっている。

 宮崎大学医学部附属病院の特徴をお聞かせ下さい。

大学病院の特徴は2つあります。1つは県内唯一の大学病院であり、特殊な症例が集まるのは勿論ですが、一般的な症例 common diseaseも多く集まっており、幅広い症例を経験できることと、もう1つは、大学病院特有の診療科間の垣根、敷居の高さが低い病院かなと思っています。

 先生が所属されている麻酔科の特徴をお聞かせ下さい。

麻酔科と言うと手術室で麻酔をかけるだけというイメージが有るかもしれません。しかし宮崎大学麻酔科の場合、手術部、集中治療部、ペインクリニックという3つの部門から成り立っています。
部門毎に患者さんとの関わり方が大きく異なります。手術部では状況が瞬時に変化しますが、集中治療部では数時間~1日毎に状況が変化し、ペインクリニックでは1週間とか1ヵ月という単位で診療を行っていきます。医局の中でダイナミックな変化を好む先生もいれば、気の長い先生も居て、多様な価値観、多様な働き方が許容されている診療科だと思います。
専攻医の先生は順番に、この3つの部門を勉強していき、最終的にどの領域を専門にしていくか選択していくことになります。
また、オンとオフがはっきりしており、自分の趣味を持っている先生が比較的多いかと思います。

 先生が麻酔科に進まれたきっかけをお聞かせ下さい。

学生時代に患者さんの急変に立ち会ったケースが3回あったのですが、唯一、手術室で起こった急変だけは一命を取り留めたのが強く印象に残りました。その時に対応していたのが麻酔科の先生で非常に格好良いし、こうなりたいと思いました。その後、初期臨床研修医のマッチングで県立宮崎病院を受験した際、面接で麻酔科に興味があると話したところ、当時の院長先生に「宮崎県は麻酔科医が少なくて大変だから是非なって欲しい」と言われました。こんな私でも役に立てるのであれば…と思って麻酔科医になろうと思いました。

 先生が患者さんとの対応で特に気をつけていること・意識していることをお聞かせ下さい。

あくまで手術部で麻酔をかけるという前提の話しですが…
麻酔前と麻酔中で2つポイントがあります。麻酔前の場合、患者さんにとって手術を受けるというのは特別な機会なので、その気持ちを汲んであげながらも、我々にとって日常的に行っている行為なので安心なんですよという安心感を与えてあげることが大事だと思っております。
先輩の受け売りですが、麻酔中の場合には患者さんのことだけを考えるというのは二流で、手術室スタッフ全員、外科医も看護師も含めてすべてのスタッフの感情や状況に目を配ってコントロールすることが求められていると思います。私の場合はまだ半人前なので努力目標ですが…

 日々の中でやりがいを感じる瞬間はどんな時ですか。

3つあります。1つ目は自分が思う通りに患者さんの状態や手術室の状況を完璧にコントロール出来たという感覚が得られた時です。これは実際に麻酔した人でないと理解出来ないと思います。2つ目は外科医から信頼を勝ち得た時です。麻酔科医にとっての顧客は患者だけでなく外科医も含まれます。ですから、外科医から信頼されるというのはかけがえのない喜びです。3つ目は、指導していた後輩の上達に気が付いた時に苦労が報われたなと思います。

 これまでの後期研修と新しく専門医制度になってからとで変わった点などありますか。

当科の場合、専門医取得前に県外での研修が可能になりました。制度的には九州の主要な病院での研修が可能です。入局前に相談して頂ければ応じることが可能です。具体的にどの病院で研修可能かは当科のホームページで確認して頂ければ幸いです。

 先生は研修時代どのようにお過ごしでしたか?今の研修医を見ていて「ここが違うな、変わったな」という点があれば教えて下さい。

時効だと思いますので話しますが、時間外が最大200時間ありました。当然時間外の給与はほとんどありません。今の研修医は守られていて羨ましいです。麻酔科入局後で言うと、手術器具が今ほど便利でなかったため、出血量も多くて手術時間も長くて本当に大変でした。3L~4L位出血する症例が頻繁にありましたが、今では1年間で数えるほどしかありません。
ただ、長時間働くことで身に付いたことも多くありますし、大量出血に対処した経験が自分の自信につながった部分もありますので、本当に今の方が良い研修なのか?と問われれば多少の疑問は残ります。

 

 研修医(または専攻医)に指導をされる際にどのようなことに気をつけていますか。

麻酔科を回る研修医が求める技術的指導に関して言えば、昔ながらの「見て盗め」という指導からいかに脱却するかということに腐心しています。上手な人のビデオを見せて、ポイントやコツを解説する。大幅な矯正が必要な時にはビデオで自分のフォームを確認させる…というのを指導の柱にしていますが、もっと良いコーティングがないか?日々勉強しています。
知識的な指導に関して言えば「人から聞いた話を鵜呑みにするな。自分で必ず調べろ。」という話を何回もします。知識の指導は嘘を教えている場合があって、1つ目は教える側の知識不足、2つ目は指導される側の理解力が追い付いていない場合、3つ目は常識が後から変わってしまうという場合です。ですから、教えれたことを鵜呑みにしないこと、自分で確認することが非常に重要で一生大事な姿勢だと思っております。

  病院を巣立っていく研修医(または専攻医)をご覧になってどう思われますか。また、どんな医師になってほしいと思われますか。

宮崎大学の研修医は比較的守られた環境で研修していて、どの診療科も「お客さん」として扱っているケースが多いと感じています。そうした環境のためか大学7年生、8年生という雰囲気の研修医が多い印象です。ですから、研修医に対しては早く自分が患者を診療している「お医者さん」という自覚を持って働いて欲しいと思っています。
専攻医の場合は逆に「自分はお医者さんで特別」という態度になってしまうケースが稀にあります。宮崎県は医師数が相対的に不足しており、特別扱いされるケースが多いと思います。しかしながら、現実的に他の診療科の先生は勿論、周囲のメディカルスタッフや患者さん自身の生命力に助けられるケースがほとんどです。自戒を込めて申し上げるならば、いつまでも謙虚でありたいですし、専攻医の皆さんもいつまでも謙虚さを失わないで欲しいと思います。

 

 今まで指導されてきた中で、特に印象に残っている研修医(または専攻医)はいらっしゃいますか。

当科で後期研修を受けた専攻医は全て覚えていますし、特別な一人を挙げるのは難しいです。
あえて選ぶとすれば、先ほどインタビューを受けた押川先生を挙げます。彼は一度も麻酔科を回ってないのに入局したという特殊ケースです。最初は本当に教えられるかこちらが不安で正直「どうしよう」と思っていました。しかし今では本当に頼りになる存在になったと思います。彼の努力が有って成立した話なのでお勧め出来ませんが、麻酔科をたくさん回らなかったけど大丈夫かな?という先生でも当科の指導体制で成長可能だと思っております。気軽に門をたたいて頂ければと思います。

 これから専門研修先を選ぶ初期研修医に向けてメッセージをお願いします。

これかの時代がどうなっていくか、私には分かりません。少子高齢化、人口減少、AIの進化によって淘汰される診療科があるかもしれません。未来はいつでも予測困難です。
ですから、あまり未来を見据えて…ということではなく、今現在、自分が楽しい、興味がある、と感じることを習得していくべきだと思います。
一つでも多くの機会を得て、自分の出来る武器や引き出しを少しでも増やすことが、未来予測困難な時代を生き抜くために必要なのではないかと考えます。

 最後に病院のPRをお願い致します。

当院での研修メリットをまとめると①幅広い疾患を経験できる、②診療科間の垣根が低い、③人口当たりの医師数が少なく多くの経験を積めるということだと思います。宮崎県は良い所ですので、是非研修を検討してみてください。

(左:指導医 石山先生、右:専攻医 押川先生)