は じ め に
学 長  森 満   保
 ここに1995(平成7年度)から1999(同11年度)までの5年間の宮崎医科大学、自己点検・評価結果を報告いたします。
 本学は1974年(昭和49年)に開学されて以来、1999年までに4半世紀の歴史を重ねました。この間、天災・失火等による施設の大損害を受けることもなく、また特筆すべき管理運営面での過誤を犯すこともなく、医学教育・研究そして臨床の3領域において、然るべき成果を上げながら順調な発展を成し遂げて参りました。その間の経緯は、先ず1995年「宮崎医科大学・20年の歩み」として報告し、その後は各年度毎に年報として報告して参りました。
 しかしながら平成11年秋に大学設置基準が改正され、新たに大学評価に関する規程が定められました。そこで学外有識者による外部評価委員会を設置すると共に、1995年以降5年間の総体的な自己点検・評価が、本学総合評価検討委員会のもとに立案・実施され、本報告となったものであります。
 この5年間を顧みますと、世界的にはソ連消滅による東西冷戦構造が消滅した余波も収まり、人々は国際間紛争から人類対地球という観点を否応なく意識させられるようになりました。国内的には阪神淡路大震災、地下鉄サリン事件、諸金融機関破綻、そして前例を見ない多くの少年凶悪犯罪などが次々に起こりました。医学的にはO-157集団食中毒、エイズ薬害事件、脳死臓器移植法成立とその実施、遺伝子研究とその応用問題等々があり、真に激動の5年間でありました。
 また、大学を巡る諸情勢も急激な展開を見せつつあります。最大の課題は、当初国の行財政改革の一環として始まった国営諸機関の独立行政法人化を行政行為ではなく専ら高等教育・研究を行っている国立大学へも適用しようという問題であります。
 しかし、その通則法は、最も根本的特性である大学の独立を無視し、行政の管理のもとにおこうとするものであり、大学には不適切な法であるとの批判が、国大協はもとより、自民党からも強く出されました。今や国立大学の独法化問題は、21世紀の日本の運命を決する重大課題として文部省や国大協で真剣に検討されているところであります。大学人の知恵を結集した、21世紀の世界をリードできる新大学制度が創出されることを心から期待しています。
 一方、急激な少子化は教育界全体の変化を招きつつあります。初等中等教育での行きすぎたゆとり化と強制的進学指導は青少年の著しい学力低下と、自主的モチベーションの発揚を阻害し、大学全入時代の到来は、益々その傾向に拍車をかけるのではと危惧されます。
 しかしながら、法人化問題や社会状況の変動の如何にかかわらず、本学の医師養成という使命は不変であると思っています。新たに発足した大学評価・学位授与機構や本学外部評価委員会等からの厳しい評価を頂き、また、本学教職員の相互点検・評価をも加えながら、医師養成の使命達成のために、教育・研究・診療水準の一層の向上及び活性化を図りたいと考えています。さらにまた、本学の諸活動状況や成果を社会に分かり易く示し、社会的責務をあきらかにすることによって、特色ある大学づくりに活かしたいと念願いたしております。

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