3 薬   剤   部

【過去5年間の実績等】
1. 薬剤部の特色等
 薬剤業務は処方せんに対応した処方監査、 調剤、 監査、 交付、 服薬指導業務や薬品管理・供給、 医薬品情報、 製剤、 TDM および薬剤管理指導業務、 治験に関わる業務等、 多岐に渡っている。 これらの業務を確実にかつ効率的に行うことに加え、 医療チームの一員として薬剤師の専門性を発揮することが求められている。

(1) 調剤業務
 処方せん調剤に伴う業務については電算化により処方監査機能を充実させた。 さらに、 平成10年4月から薬剤情報文書も添付し服薬指導をさらに充実させた。 また、 電算化に伴い患者待ち時間も減少した。
一方、 注射薬については平成11年3月に自動調剤システムを導入した。 使用する注射薬は患者個人毎にセット調剤しており、 病棟での看護業務を軽減化した。

(2) 製剤業務
 一般製剤の調製および医師からの特殊製剤の調製依頼に積極的に対応している。 県内の他病院で使用される特殊製剤の調製についても本院施設を開放しており、 さらに、 本院薬剤師の指導により当該病院薬剤師が調製業務をおこなっている。

(3) 薬品管理業務
 医療費に占める医薬品費の割合は高く、 医薬品の適正購入を心がけている。 また病棟保管の医薬品についても毎月保管状況を調査し、 デッドストックを無くす努力を行っている。

(4) 薬品情報業務
 院内・院外からの質疑応答、 薬品採用に関する資料作成、 院内情報紙の発行、 医薬品集の作成、 医薬品情報の収集・整理を行っている。 院内情報として医薬品集 (3年毎) の発行および Drug Information Monthly (毎月) を発行しており、 また、 院内のネットワークを通じ副作用情報、 新採用薬品等の医薬品情報を提供している。 医薬品情報は従来の添付文書に加え、 インターネット等を利用することで質、 量供に充実した。 なお、 得られた情報については院内システムを利用し、 迅速に提供している。

(5) TDM業務
 診療科の依頼に応じ薬物の血中濃度の測定および投与設計を行っている。 薬物血中濃度モニタリングは、 患者の薬物動態特性を把握し個別の投与設計を行うために必要不可欠であり、 今後も依頼に積極的に対応したい。

(6) 治験薬管理業務
 平成9年5月より事務局として、 会議の開催および治験薬の管理や調剤を行っている。 また、 質の高い治験を行うために治験コーディネーターの育成に積極的に取り組んでいる。

(7) 薬剤管理指導業務
 各診療科のカンファレンス・新患紹介およびナースカンファに参加、 また回診に同行し患者情報や治療方針を把握し、 患者の服薬指導や禁忌・相互作用・副作用のチェックなどの業務をおこなっている。 当初6診療科で業務を行っていたが、 平成11年7月の全科を対象とした院外処方せん発行に伴い全科に拡大し、 指導件数を増加させた。

平成11年度 発行率 47.6% 服薬指導算定件数 1,133件
平成12年 (4〜8) 発行率 58.6% 服薬指導算定件数 1,161件 (5ヶ月)

(8) 試験研究業務
 医薬品の製剤学的評価、 あるいは特殊な薬物の動態学的な面に関する研究等を行っている。 医師との共同研究も増加している。
2. 人員構成
 部長、 副部長 (2名)、 常勤薬剤師 (15名)、 非常勤薬剤師 (1名) および非常勤職員 (4名)
3. 教育・研修
(1) 医学教育:医学部学生の薬剤処方学実習には技官も積極的に役割分担しており、 4日間にわたり実践的な指導を行っている。
(2) 薬学教育 (薬学生の卒前・卒後教育) :薬学部学生を対象に春と夏に実習を行っている。 さらに新卒薬剤師を対象とした6ヶ月あるいは1年研修生を積極的に受け入れ、 実践的な指導を行っている。
4. 地域活動・薬剤師会との連携
 地域活動としては、 主として宮崎県病院薬剤師会、 宮崎県薬剤師会及び宮崎市郡・東諸県郡の薬剤師会との連携、 協力により行っている。 一方、 病院薬剤師を中心とした研修会 (年間12回程度) は大学病院の薬剤部が中心となって計画・運営している。 また、 保険薬局の薬剤師に対しては研修生として受け入れ、 実践的な指導を行っている。 さらに、 行政と協力し地域医療への貢献に努力している。

【点検評価】 (取組・成果・課題・反省・問題点)
 処方せん調剤に伴う業務については電算化により処方監査機能を充実させた。 さらに、 平成10年4月から薬剤情報文書も添付し服薬指導をより充実させた。 また、 患者待ち時間も減少した。 医薬品情報は従来の添付文書に加え、 インターネット等を利用することで質、 量供に充実しているが、 「最良のエビデンス」 に基づいた情報を提供するために一層の努力が必要である。 注射薬については平成11年3月に自動調剤システムを導入しており、 病棟での看護業務が軽減化されている。 抗癌剤の混合業務については平成12年10月より開始することとなった。 一方、 IVH の混合については積極的に取り組む業務であると考えているが現有設備では対応出来ない。 診療各科から要望も出されており、 引き続き設備更新の要望を行っていきたい。 なお、 院内特殊製剤については積極的に対応している。 治験については、 治験申請件数や治験参加者が減少している。 治験申請件数の増加を図ると供に、 質の高い治験を行うために治験コーディネーターの育成に取り組んでいる。 薬剤管理指導業務は院外処方せん発行率の増加に対応し、 徐々に拡大させている。 それに伴い TDM についても測定だけではなく投与設計まで行う症例が増加した。

【今後の改善方策、 将来構想、 展望等】
 医療の高度化・専門化、 医療に対する国民の意識の変化、 高齢化社会に伴う医薬品の適正で安全な使用確保の高まり、 在宅医療の進展、 医薬分業や病棟活動等、 薬剤師を取り巻く環境が大きく変化している。 このような中で病院薬剤師は患者中心の良質で効率的な医療を提供するため、 医療チームの一員として積極的に医療に参画することが社会的に求められている。
下記の項目について重点的に取り組んでいる。
(1) 医薬品の適正使用の推進
(2) 病棟活動の支援・研究体制の充実
(3) 注射薬混注業務 (IVH 等) の拡大、 および特殊製剤の調製
(4) 電算化による医薬品の相互作用チェックシステムの構築
(5) 各診療部門への能動的、 効率的な医薬品情報の提供
(6) 治療医薬品の適正で安全な使用方法と未知の副作用、 有害性の監視
(7) 患者への情報提供についての医療薬学教育の確立
(8) 薬剤経済学的観点からの使用薬剤の分析
(9) 医薬分業の推進
 いずれの業務についても薬剤師には広範な知識や技術を基盤とし、 より高度で専門的な知識や技術を身につけることが要求されており、 それぞれの専門領域におけるスペシャリストの養成が急務である。

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