2 中 央 診 療 施 設 等

周産母子センター

【過去5年間の実績等】
1. 施設の特色等
 平成10年に増改築なった周産母子センターが完成し、 同年4月から NICU:3床、 GCU:13床で診療を開始し、 平成11年4月から NICU:6床、 GCU:10床となった。
 周産母子センターでは分娩前の妊婦、 胎児、 出生後の新生児を一連のユニットとして取り扱っている。 産科では、 一般的な産科診療に加え、 妊娠中毒症や妊娠糖尿病などの妊娠合併症、 内科的外科的合併症を持つ妊娠、 多胎、 胎盤−臍帯異常、 胎児異常などのハイリスク妊娠が対象である。
 胎児では先天異常、 感染症 (ウイルスから細菌まで)、 胎内治療 (穿刺吸引、 シャント術、 臍帯穿刺、 胎児輸血、 薬物投与など)、 超音波を用いた胎児発育や胎児血流動態や胎児行動の評価、 胎児心拍数モニタリングによる評価などが行なわれている。 新生児では NICU を中心に、 未熟児医療、 新生児外科疾患、 循環器疾患、 先天異常などを取り扱っている。
 周産母子センターは母児に関する救急医療の現場であり、 24時間体制で作動している。
 また、 医学部生や看護学生はもとより、 現場で働いている医者や看護婦の再教育の場としても機能している。
2. 診療体制
(1) 外来患者診療
 入院患者のみの診療である。
 ただ、 退院患者のフォローとして小児科の発達外来とともに神経学的な観察や発育段階の確認を行なっている。
(2) 入院患者診療
 月から金までは、 毎日1〜2名のスタッフ、 3名前後の研修医、 1〜3名のローテイターで診療に当たっている。 土日と夜勤帯ではスタッフ1名、 研修医1名である。
 新生児入院数は平成7年122人、 平成8年133人、 平成9年103人、 平成10年134人、 平成11年146人であり、 周産母子センター建設に伴う仮設 NICU での診療となった平成9年を除き、 着実に増加している。 入院の内訳をみると、 1000g 未満の超低出生体重児をはじめ、 重篤な合併症をもつ新生児の入院が増加している。 県内外の NICU 施設からの新生児搬送も増加している。
 年間分娩数の推移は平成7年275人、 平成8年247人、 平成9年262人、 平成10年274人、 平成11年244人である。 ほとんどが何らかのハイリスク因子(切迫早産、 前期破水、 妊娠中毒症、 糖尿病などの内科疾患合併妊娠、 胎盤異常、 多胎、 胎児奇形、 胎内感染、 先天異常など) を持っている。 また、 母体搬送症例も増加しつつある。
3. 高度医療
 胎内治療 (臍帯血採取、 臍帯血管内輸血、 胎児への薬物直接投与、 胸腹水の穿刺排液、 胎児へのシャント術など)
 超低出生体重児(1000g 未満)に対する中心静脈栄養
 胎児水腫症例など出生直後に挿管困難が予測される症例に対し、 帝王切開時に臍帯循環を維持したまま気管内挿管を試みる治療法

4. 地域医療への貢献
 NICU を持つ4施設 (宮崎、 延岡、 日南の3県病院と宮崎市郡医師会病院) には、 平成9年まではそれぞれ1、 2、 3、 1名の派遣であったが、 平成10年からはそれぞれ4、 3、 4、 3名と大幅に増員し、 県内の周産期医療の多くをカバーしている。 毎年、 11〜13施設に約25名前後の医師を派遣しており、 地域医療へも多くの貢献をしている。
 また、 県内外から周産期医療に関するコンサルト、 患者紹介がある。 逆にわれわれからのアプローチとして周産期医療に関する研究会、 医療従事者に対する講習会などを毎年定期的に開催している。
 このような地域との密接な連携の結果、 平成11年度の宮崎県の周産期死亡率は (3.9/千分娩あたり) 全国で第一位となった。

【点検評価】 (取組・成果・課題・反省・問題点)
 過去約10年間で宮崎県における周産期医療の新機軸を作成することができ、 日々、 成果をあげつつあるところである。

【今後の改善方策、 将来構想、 展望等】
 今後、 宮崎県における周産期医療の新機軸をもとに、 周産期医療の地域化をますます定着させる。 限られた NICU を有効利用するために、 患者の搬送システムを再構築する。 宮崎医科大学の周産母子センターは、 面積からみると NICU の増床が可能であり、 周産期医療の地域化の観点からも、 医療経済の観点からもその利点は大きい。

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