2 中 央 診 療 施 設 等

集中治療部

【過去5年間の実績等】
1. 施設の特色等
 各診療科は、 診療科長のもとで独自の診療を行っている。 しかし、 患者の病気が重篤になると、 病態はひとつの臓器に限局せず、 多臓器に及び、 診療は一診療科の限界を越える。 そのようなとき、 いろいろな診療科の力を借りて、 チーム医療として治療に当たろうとするのが集中治療の目指すところである。 縦割り診療の中に横割り診療を組み込んだものである。 呼吸、 循環、 代謝、 そのほかの重篤な急性機能不全の患者を収容して、 強力かつ集中的に治療・看護する。 患者監視装置、 人工呼吸器、 補助循環装置、 血液透析装置、 持続血液濾過装置、 特殊熱傷ベッドなどを駆使して高度な医療を提供する。 濃密な看護体制がとられ、 看護職員は最低でも患者2人に1人、 ときには患者1人に1人の割合で配置されている。
 集中治療部は、 平成2年度に改装し、 それまでの4ベッドを5ベッドに増床し、 平成3年度からさらに1ベッド増床して6ベッドにして運営している。 毎年300〜340人を収容する。 当集中治療部では、 院外からの患者の収容が少なく、 院内の各診療科からの収容、 中でも大手術後の集中治療管理の依頼が多い。 すなわち、 外科的集中治療の色合いが強い。
2. 診療体制
 外来患者診療は行っていないので入院患者診療についてだけ記す。
 集中治療部の教員は3人で、 これに医員2人が配置されて、 合計5人で24時間の診療体制を組んでいる。 最近5年間の年間平均収容患者数は320人である (図)。 この中の75%は術後患者で、 残りの25%が院内または院外からの緊急入室患者である。 緊急入室患者の院内と院外の比率はおよそ半々である。 収容患者の疾患は、 心・血管疾患が圧倒的に多く、 次は胸部疾患である (表)。 転帰をみると、 ほとんどが軽快して退室するが、 悪化して死亡退室することもある。 死亡率は、 平成7年度4.0%、 平成8年度7.0%、 平成9年度4.7%、 平成10年度4.3%、 平成11年度6.5%で、 5年間の平均は5.5%である。
 病院運営審議会の決定により、 平成11年10月から、 集中治療部6ベッドのうちの1ベッドを救急部専用ベッドとして運用している。


表 入院患者の疾患分類
  平成
7年度
平成
8年度
平成
9年度
平成
10年度
平成
11年度
中枢神経疾患
心血管系患
胸部疾患
消化器疾患
泌尿器疾患
その他
8
149
93
45
7
37
10
149
93
38
3
36
20
156
84
30
7
24
17
128
98
22
1
34
26
122
98
17
7
40
339 329 321 300 310
3. 高度医療
 設備して、 バイオクリーンルームを1室保有する。 この室は外部に対して陽圧にも陰圧にもなる。
 高価な医療機器を用いて、 緻密な看護体制のもと、 高度な治療技術を駆使して、 最高の治療を施すことができる。 例えば、 急性呼吸不全に対して各種人工呼吸器を用いた人工呼吸管理、 急性心不全に対して経皮的心肺補助装置や大動脈内バルーンパンピングを用いた循環管理、 急性腎不全に対して人工透析装置を用いた血液透析、 急性肝不全に対して持続血液浄化装置を用いた血液浄化療法、 広範囲熱傷に対して熱傷ベッドを用いた急性期熱傷管理などを、 いつでもただちに開始できる。

4. 地域医療への貢献
 三次救急医療体制をとる本院として、 二次救急医療施設からの要請があれば、 いつでも受け入れる体制を整えている。 また診療業務および教育研究業務に支障のない範囲で、 県内の主要病院で医師の指導を行い、 県内医療レベルの向上に努めている。

【点検評価】 (取組・成果・課題・反省・問題点)
 年間320人の重症患者を収容し、 集中治療部としての役割ははたしている。 内容は外科系集中治療で、 ややマンネリ化しているようにもみえる。 しかし、 集中治療部の主力は、 教員3人と医員2人の総員5人で、 人的パワーに乏しい。 5日に1日の当直、 月に8回 (土曜日、 日曜日、 祭日をそれぞれ2回として計算) の当直は負担が大きい。 どうしても、 3交代制を組む看護職員のパワーに頼らざるをえない。 高度な医療機器が多いにもかかわらず、 臨床工学技士の配置がなく、 ほかの施設に比べて見劣りする。 また、 医療機器も少しずつは更新しているが、 患者監視装置などの本体は平成2年度に整備したもので、 老朽化が激しい。

【今後の改善方策、 将来構想、 展望等】
 今後の方針として、 3次救急患者を積極的に受け入れて、 外傷患者など、 院外からの救急患者の比率を増やすべきであろう。 そのためにも、 救急部の積極的な活動を期待したい。 宮崎県内において、 県立宮崎病院、 県立日南病院、 県立延岡病院のいずれもが集中治療部を整備充実させているので、 当部でも努力が必要と思われる。
 労働環境が悪いため、 教員に長年の勤務を期待することはできない。 短期間の交代もやむを得ない。 それによって医療レベルの低下を招くが、 副部長の手腕で乗り越えたい。 長期的には、 医員のポジションを増やして増員しなければ、 質の高い集中治療部の維持は困難であろう。

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