2 中 央 診 療 施 設 等

輸 血 部

【過去5年間の実績等】
1. 施設の特色等
 輸血部では、 血液製剤の予約・保管管理、 血液型や交差適合試験等の輸血検査に加えて、 自己血採血・末梢血幹細胞採取などの採血業務や、 血液製剤の適正使用の推進、 卒前卒後教育などを行っている。
(1) 血液備蓄管理
 日赤血液センターへの血液製剤の予約・発注・検品、 備蓄製剤・自己血製剤の保管管理等を行っている。
(2) 輸血検査
 ABO式・Rh式・およびその他の各種血液型判定、 直接・間接クームス試験、 抗赤血球抗体スクリーニングと同定、 および交差適合試験等の検査を行っている。
(3) 採血業務
 自己血採血は、 輸血部での貯血式自己血採血、 手術室での希釈式自己血採血を行っており、 自己血小板等の成分採血や同種血採血も行っている。 採取した自己血漿より自己フィブリン糊の調製も平成10年より開始している。 難治性造血器腫瘍や固形腫瘍に対する根治療法として末梢血幹細胞移植術が行われているが、 輸血部内において、 診療科 (第二内科、 小児科) の協力の下に末梢血幹細胞採取を行い、 専用超低温フリーザーで移植日まで保存・管理を行っている。
(4) 適正輸血の推進
  血液製剤の過剰な請求や不適切な使用に対して指導を行うなど適正輸血の推進に努めている。
(5) その他の業務
  輸血用血液の放射線照射や小児用輸血のための少量分割などを行っている。
(6) 教 育
 卒前教育では、 医学部第4学年から第5学年にかけて臨床検査医学の一部として輸血医学の臨床講義と実践的輸血検査実習を、 卒後教育としては研修医等を対象に輸血検査実技講習会を定期的に開催し、 輸血過誤防止に努めている。
2. 診療体制
(1) 人員構成:部長 (併任)、 副部長、 臨床検査技師2名、 看護婦1名
(2) 業務実績:過去5年間の業務量の推移を以下の表に示す。
区     分 7年度 8年度 9年度 10年度 11年度
輸血検査件数
 ABO式血液型  (件)
 Rh式血液型   (件)
 抗赤血球抗体検  (件)
 その他      (件)
 交差適合試験   (本)

6,149
6,149
6,149
615
11,917

6,145
6,145
6,145
614
12,045

5,866
5,866
5,866
586
10,575

5,736
5,736
5,736
573
10,240

5,705
5,705
5,705
571
8,861

29,601
29,601
29,601
2,959
53,638
30,979 31,094 28,759 28,021 26,547 145,400
日赤製剤
 全血製剤  (200換算数)
 赤血球製剤 (200換算数)
 血漿製剤  (200換算数)
 血小板製剤 (200換算数)

3
6,030
10,394
13,756

0
6,055
11,619
13,035

36
5,521
11,084
10,970

25
5,954
10,237
10,550

0
5,240
7,864
11,045

64
28,800
51,198
59,356
30,183 30,709 27,611 26,766 24,149 139,418
自己血採血
 件 数   (件)

 全血製剤  (200換算数)
 赤血球製剤 (200換算数)
 血漿製剤  (200換算数)
 血小板製剤 (200換算数)

338

66
1,172
1,170
152

363

98
1,237
1,248
179

358

171
1,120
1,118
230

309

197
757
756
25

280

165
695
668
0

1,648

697
4,981
4,960
586
2,560 2,762 2,639 1,735 1,5281 1,224
末梢血幹細胞採血  (件数) 25 18 18 18 20 99
院内採血
 全血製剤  (200換算数)
 成分採血

4
0

0
0

26
0

0
0

0
0

30
0
3. 高度医療
 高度先進医療である末梢血幹細胞移植のための末梢血幹細胞採取・保存を輸血部内で行っている。

4. 地域医療への貢献
 地域医療機関からの輸血検査に関する問合せや精査依頼に対して常時協力をしている。 宮崎県臨床衛生検査技師会研究班等での講演など検査技師教育や技術指導を行っている。 また認定輸血検査技師制度指定施設として平成9年よりこれまでに6名の県内医療機関の検査技師に指定研修を行っている。

【点検評価】 (取組・成果・課題・反省・問題点)
 輸血部では、 平成8年4月より血液製剤の放射線照射を開始し、 平成10年12月より自己フィブリン糊の調製を開始するなど年々業務の拡大を続けている。 平成11年3月には輸血部運営委員会の下に輸血療法連絡協議会を発足させ院内での適正な輸血治療の推進に努めている。 合計4名と少ないスタッフながら相互にカバーし合い業務を維持している。 輸血検査に関しては、 技師2名のみで他大学と比較してマンパワー不足のため赤血球系検査のみで手一杯の状態である。 また採血業務に関しては、 平成4年より自己血の赤血球製剤と血漿製剤への分離製造を開始し、 自己血採血は順調に増加していたが、 ここ数年間は増加がみられない。 また末梢血幹細胞採取は年間20例前後で例数は必ずしも多くない。 今後は診療科の積極的な協力が必要と考えられる。 時間外の輸血検査が安全に行えるように定期的に輸血実技講習会を開催しているが、 十分に安全な体制とは言い難い。

【今後の改善方策、 将来構想、 展望等】
 輸血検査に関しては、 輸血検査自動化機器の導入がすでに他大学では進んでおり、 当院でもマンパワー不足を補い業務の効率化を図り、 また検査結果判定の標準化を図るためにも早急な導入が必要と思われる。 自動化機器による業務の効率化により、 診療科から要請のある抗血小板抗体検査などの新たな検査業務拡大が可能となる。 また赤血球や血小板型の高感度抗原検査として新たな遺伝子検査の導入も可能となり、 現在その導入に向けて準備を開始している。 自己血採血や末梢血幹細胞採取に関しては、 これまで依頼の少なかった診療科に積極的に働きかけ適応拡大と症例増加を図りたい。 今後は輸血部は単に輸血検査と自己血採血を行う部門に留まらず、 移植免疫治療や細胞療法などの高度先進医療を推進する上で病院全体のセンターとして機能できる部門になれるように設備やスタッフの整備を含めて働きかけていきたい。

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