2 中 央 診 療 施 設 等

検 査 部

【過去5年間の実績等】
1. 施設の特色等
 検査部の業務は、 患者からの生体材料を分析する検体検査と患者自身を検査対象とする生体検査に大別される。
(1) 検体検査:検体検査部門では、 より質の高い診療を支援するために日々の精度管理を徹底し、 高精度の検査結果をより早く診療側に報告するとともに異常値に対して適切なコンサルテーションが出来る体制づくりに努めている。 平成6年の検体前処理装置の導入により検査の迅速化、 省力化、 試薬の低減化を行った。 高精度の分析を維持しつつ分析装置の効率的運用と検査の経済効率の向上に努め、 検査業務全般に亘って多角的な見直しと改善も精力的に行っている。 また宮崎県における生化学検査データの施設間差是正を目的にコントロールサーベイを当検査部が中心となり実施しデータの統一化を進めている。 平成11年度は43施設が参加し、 着実な成果が得られつつある。

(2) 生体検査:心電図、 肺機能、 超音波、 脳波検査などの生体検査部門では、 患者に直接接するため病む人の視点にたち、 より良い検査環境の確立に配慮している。 また負荷試験等では生命の危険を伴うことから突発事故を未然に防げるよう万全の体制を整えている。 平成9年には経食道的心臓超音波検査装置、 血管内超音波検査装置の導入により高度な診断が可能となっている。

(3) 緊急検査:開院当初より当直日直制により24時間体制で緊急検査に対応しており、 救急医療に貢献してきた。 過去5年間にも緊急検査項目の拡充および報告時間の短縮を行ってきた。 現在、 通常の検査も迅速に報告できるよう具体的に取り組み患者サービスの向上に努力している。

(4) 感染症対策:検査部の最も重要な業務のひとつとして感染症対策を位置づけ、 平成8年度には病原性大腸菌O−157の遺伝子検査、 平成11年度には結核菌を迅速に検出するため最新の液体培養システムおよび結核菌群遺伝子検査を導入し、 迅速診断に寄与している。 また、 血液培養検査のための全自動血液培養システムを導入し、 迅速な陽性検体の検出が可能となった。 休日も当日直者により鏡検および薬剤感受性試験を実施して治療のタイミングを失しないよう結果報告を行っている。 院内感染で社会問題となっているMRSAをはじめ、 まだ本学病院で検出例のないバンコマイシン高度耐性腸球菌などの出現にも備え、 注意深くスクリーニングを実施している。 そのほか臨床材料分離菌、 菌種別MIC分布などの疫学的情報を提供し診療の支援に努めている。

(5) 輸血部のバックアップ:大量輸血等の突発的事態や輸血部職員の休暇時には輸血部へ検査部技官を派遣し、 輸血業務の円滑な運営を支援している。 夜間・休日の輸血部の保守点検および器具等の洗浄も行っている。

(6) 教育および研究:医学部学生の臨床実習には技官も積極的に役割分担しており、 毎週3日間9分野について実践的な指導を行っている。 さらに外部からの研修生の教育および臨床診断・治療に密着した研究にも積極的に取り組んでいる。 当該期間の研究の主なものは論文発表33報 (欧文21、 邦文12)、 学会発表49題 (国際8、 国内41) である。
 また診療科の意見を検査業務に反映するため、 随時アンケート調査および検査部運営委員会等に諮り要望を聴取し、 可及的速やかにその要望に対応するよう努めている。
2. 診療体制
(1) 人員構成:
 部長、 副部長、 助手 (各1名)、 臨床検査技師19名、 行政職1名、 非常勤職員4名
(2) 
 一般検査部門 (検尿、 尿沈査)、 血液検査部門 (血球計数、 白血球分類、 骨髄像、 凝固線溶、 細胞表面形質、 細胞診)、 細菌検査部門 (菌種の同定、 薬剤感受性)、 血清検査部門 (抗原検査、 抗体検査、 血漿蛋白、 ホルモン、 腫瘍マーカー)、 生化学検査部門 (酵素、 蛋白、 電解質、 脂質、 金属、 結石)、 生理検査部門 (心電図、 心音図、 呼吸機能、 脳波、 筋電図、 サーモグラフィー、 各種誘発電位、 超音波、 神経眼科、 血液ガス)、 内視鏡検査部門 (消化器、 呼吸器、 その他)  総156項目
過去5年間の業務量の推移は以下のようにほぼ横這いであるが、 検査内容は高度化複雑化している。

   平成7年度   平成8年度   平成9年度   平成10年度   平成11年度 
総検査件数 1,648,592 1,369,174 1,419,512 1,616,864 1,614,828
総診断報酬点数 63,226,550 52,864,748 60,119,556 62,575,400 61,016,319
3. 高度医療
 Dipeptidyl peptidase IV (DPP IV) をマーカーとした甲状腺癌の診断法は当検査部で開発したもので、 細胞診の日常業務の中に補助診断として実施しているが、 国内はもとより海外からもその有用性について評価を得ている。 また、 先天性甲状腺機能低下症の一因である甲状腺ペルオキシダーゼ分子異常症については基礎的研究を含め症例の解析を行い着々と成果を上げている。 さらに、 アジアで第一例目として報告したTangier病を中心とした脂質代謝異常症の解析、 酵素抗体複合体の証明、 コリンエステラーゼの変異遺伝子の解析等も実施している。

4. 地域医療への貢献
 当検査部が主体となり、 宮崎県臨床検査懇話会を設立し、 県内の医師および技師が一体化した研究会として学術・研究に大きく寄与している。 また、 県内外の臨床検査技術の向上のため当検査部職員が中心になって講演会・実習も行っている。 平成7年〜11年に当検査部職員が担当した活動 (学会発表を除く) は講演27回、 実技指導・コントロールサーベイ37回、 標本等のコンサルテーション124症例、 研究会等への症例呈示61例を数えている。

【点検評価】 (取組・成果・課題・反省・問題点)
 現在可能な限り迅速な検査結果報告を行っているが、 今後外来患者の診療に必要な検査結果を即座に報告出来る体制が要望されている。
 また、 これまでも必要に応じて検査項目および試薬の見直しを行ってきたが、 今後は診療に差し支えない範囲で不採算性の検査項目の廃止または外注への移行、 検査試薬の購入先の見直しを徹底して行う必要があると認識している。

【今後の改善方策、 将来構想、 展望等】
 最初に診療科から要望の強かった外来患者の迅速検査 (結果報告1.5時間以内) を生化学、 血液、 血清、 細菌検査の47項目について平成12年10月より実施する。 これと同時に、 これまで細分化されていた検査部門を7部門から検体検査、 感染症検査、 生理機能検査の3部門に再統合し、 人員の合理的配置を行う。
 現在、 検査の要するコストを低減するために、 検査精度とデータの継続性が保たれるものであればより安価な試薬に切り替える作業を実施している。 また、 不採算性の検査項目の廃止あるいは外注への移行を徹底して行い、 検査部運営の強化を図る予定である。
 以上のように徹底した合理化を推進しながら、 生理機能検査 (心電図、 脳波など) の病棟への出張、 採血から検査報告までの一貫したシステム作り、 感染症対策や異常検査データに関する情報提供・精査等を実施し診療支援を強化する計画である。 また医学の進歩に伴う最新の検査項目 (in-situ hybridization、 新たに臨床検査技師が実施可能となった生理機能検査など) を順次導入し、 大学病院としての高度医療を支援できる体制をさらに発展させたいと考えている。
 今後、 外来診療の拡大が計画されているが、 検査部では患者数の増加に柔軟に対応できる体制をすでに整えており、 検体数増加によるスケールメリットを収支の向上に生かし、 病院経営に寄与したいと考えている。
 教育活動に関しては医学部学生の臨床実習には従来通り技官も積極的に参加し、 臨床に即し、 かつ充実した内容を維持するよう努める。 また、 国内だけでなく海外からの研修生も受け入れるべく体制を整えている (JICAに受け入れ申請中)。 研究面では、 これまで以上に臨床に密着した研究課題を中心に、 患者に還元できる研究成果が得られるよう努力したい。

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